
西大路御池 |
●ブログを更新する哲
哲 2日前になって、急に車椅子駅伝のアンカーを走ることになったアイツ。「全国車いす駅伝競争大会」と書かれたパンフレットを見ると、京都国際会館前から西京極陸上競技場までの21.3kmのうち、最後の第5区は、西大路御池から西京極までの3.9 kmとなっていました。西大路を下って、五条通を西へ右折するわけですが、僕の母さんは、2年前、まさにそのルートをたどってドライブしている途中、西大路五条の交差点で命を落としたんです。運転していたアイツは、今でもそこを通るたびに、体が硬直するらしい。車に乗せてもらって通る時ですらそうなんだから、車椅子で走ろうものなら、いくら上半身ムキムキのアイツでも、心身共に大きなダメージを受けるに違いない。かつてのようなカリスマ予備校講師ではないものの、今では一応、中学生相手に塾の経営もうまくいっているようだし、僕としては、ここでまたアイツに倒れられては困ります。だから、アンカーで走ることには、絶対に反対しました。
●回想
哲 あかん、あかん、あかん、あかん、あかん!!!!!!
冴 何であかんのんよ。
哲 だって、この交差点は…
陽介 心配いらんよ。父さんやったら、大丈夫やから。
哲 いやっ…、別に…、心配してるわけや…ない。そこは母さんが眠ってる交差点なんや。母さん踏んで走るようなこと、やめてくれ。
冴 そんな言い方ないやろ。
陽介 (遮るように)冴ちゃん、もうええから。
●現在、ブログ更新
哲 そう言い放った僕は、そのまま部屋に戻ったのですが、母さんの写真を見るなり、急に涙が溢れてきてしまいました。何だろう、この涙は。可哀相な母さんに…いや、それだけじゃない。腹が立つ父さんに、それだけでもない・・・ぼうっと考えていると、こんな時間になってしまいました。あと30秒で日が変わって、土曜日になります。初日の日記は、このへんで終わり。では、世間の皆様、お休みなさい。
●あくる朝になって
哲 (あくびしながら)あー、よう寝た割には、目が醒めんなあ。寝過ぎかな。あれっ、もう昼過ぎや。あと6時間後にはサザエさんが始まるやなんて、信じられへん。それにしても、きのうの土曜日のことは、何故かほとんど記憶がないし、何や1日損した感じやな。
西大路三条 |
●以下、きのうの回想
陽介 じゃあ、行ってくるよ。ゼッケン、ユニフォームに縫い付けてくれて、ありがとう。
冴 あした、頑張ってね。
陽介 おう。哲、行ってくるわ。
哲 どこへ?レースはあしたやろ。
陽介 関係者は、開会式をするホテルで、全員が前泊するんや。今晩は、家のこと、頼むで」。
哲 ホテルに泊まって、人に留守番させて、ええ身分やな。
冴 また、そんな小憎たらしいこと言う。あしたは応援に行くんやで。
哲 行かへん言うてるやろ。
陽介 ほな、迎えの車来てるし、行くわ。
冴 うん。
●現在に戻って
哲 はーあ、かったるいけど、朝飯食うたら、顔だけ出しとくかな。ん?メモや。「正午、西大路御池、出走予定」。えっ、やばい、もう出発してるわ。 |