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   巨大な輪の正体 

 


SPring-8
(写真提供:SPring-8)

 今度は、播磨科学公園都市の中心施設である「SPring−8」に来ました。一つの山を取り囲む巨大な輪があり、その外側に研究棟や管理棟、実験施設が建ち並んでいます。(財)高輝度光科学研究センターの原雅弘さんに伺いました。
「ここは、世界最大で最高性能を誇る放射光施設です。非常に性質のいい光を取り出すためには、その発生源となる電子ビームを細く安定させなければならず、巨大な施設が必要になります。直径約500m、1周1436mの装置をぐるりと回っている電子ビームが、磁石で軌道を曲げられる時に強い光を出しますが、それが放射光です」

巨大な輪の一部(地上から)
 では、大変高精度なX線写真が撮れるということでしょうか。
「非常に簡単に言うとそういうことです。普通のレントゲン写真で写らないようなものも見ることができます」

 和歌山のカレー毒物混入事件のヒ素分析について伺いました。
「ヒ素に含まれる不純物を調べました。ヒ素も産地や精製方法で不純物の種類や量が異なります。その不純物元素一個一個の原子の有無を、蛍光X線分析によって高い精度で調べることができました。物質にX線を当てると別のエネルギーのX線である蛍光X線が出ますが、それが元素ごとにみんな違います。ここはX線のエネルギーが大きいため、普通ではできない大きな原子番号のものを含めた、すべての元素を見ることができます」


「見学棟」は体験型の展示
 意外なことにも使われているようです。
「ごく最近では、『卑弥呼の鏡』とも呼ばれる三角縁神獣鏡を調べました。青銅は鉛、銅、すずが主成分で、銅には金や銀が、すずにはアンチモンなどの不純物が混じっています。時代が判明している中国鏡を調べると、不純物の比率が時代ごとに異なっていました。日本の鏡のうち中国から来たとされているものを調べると、中国の同時代のものとピタリと合致しました。一方、日本で作られたといわれているものは不純物の比率が異なっているという結果が出て、考古学にも使えると注目されました」

 利用者はどんな人でしょう。
「6〜7割が大学の先生で、国内外の研究所や企業の研究者も利用します。国の施設のため、実験の計画が課題選定委員会で価値を認められれば、成果を公表する場合は無料で使えます。特許取得などで非公開の場合は利用料がかかります」



  SPring-8放射光普及棟見学
  ■時間/平日9:30〜17:00、
       土日祝10:00〜16:00
  ■休日/年末年始
  ■見学料/無料
  ■TEL /0791-58-2785


播磨科学公園都市は、まさに公園都市、アート感覚にあふれたビルが建ち並ぶ快適な都市です。ここから世界に誇る技術が生まれていくわけです。