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雅彦「もしもし、お母さん?」
母 「ああ、雅彦、どこからかけてるの?」
雅彦「八幡。今、おじいちゃん家(ち)、着いたんだよ」
母 「えー、もう着いたの?早かったわね」
雅彦「だってさ、お父さん、東京から八幡東インターまで、トイレで1回止まっただけで、ずっと走りづめだったんだもん」
母 「八幡東インター?」
雅彦「そうそう。できたんだよ、こっちに。第二京阪道路ってのが開通したの。それで、八幡東で下りたの。おじいちゃんとこも、すごく近くになったんだ」
母 「相変わらず詳しいわね、高速道路のことは。テーマパークと高速道路については、博士なんだから(笑)」
雅彦「サービスエリアでご飯食べたかったのに、もうすぐ着くから我慢しろ、おじいちゃんとこでお腹いっぱい食べたらええやろて、ご飯たべさせてくれなかったから、もう僕、お腹ぺこぺこだよ。お父さんさ、サービスエリアだと自分がお酒飲めないから、そんなこと言って急いだんだ。こっちに着くなり、早速ビール飲み始めてさ。いい気なもんだよ、まったく」
母 「まあまあ、いいじゃない。お父さんだって、久しぶりの夏休みなんだから。それに、新しい高速道路走れて、よかったじゃないの」
雅彦「まあね。あとは、テーマパークに行けるかどうかが問題だね。連れてってくれるかな、お父さん」
母 「さあ。ねえ、おじちゃんいる?」
雅彦「出掛けてるみたい。僕の竹細工の材料の準備をしてくれてるみたい」
母 「あっ、そう。じゃあ、また後からかけることにするわ」
雅彦「ねえ、お父さんさ、あそこ、連れていってくれるかな」
母 「お父さんに聞いてみたら。じゃあ、あんまり長話すると、おじいちゃんとこの電話代、高くつくからもう切るわよ」
雅彦「分かった。バイバイ」
●電話をおく
母・語り「雅彦は、今年、3年ぶりに京都の八幡にある、おじいちゃんの家に行きました。夏休みは、毎年、家族3人で旅行に行くのが、雅彦にとっては何よりの楽しみだったのですが、今年は、主人がおじいちゃんのところに行くことを提案。旅行費用を安く抑えようとしてるんだろうと怒る雅彦に、おじいちゃん孝行やと思うて我慢し、と必死で説得したのでした」
母・語り「雅彦がしぶしぶ八幡行きを納得したのは、3年前にはなかった、大阪のあのテーマパークに、ひっとしてお父さんか連れていってくれるかも知れない!という、ほのかな期待があったからです。八幡行きが決まってからというもの、私の顔を見るたびに、そのテーマパークのことを解説したのでした」
雅彦「(回想)ねえ、お母さん、あそこはね、座ってるだけで、大ヒットした映画の中に、僕たちを連れていってくれるんだよ。それにね、建物の中でのアトラクションが多いからさ、雨降っても大丈夫なんだよ。ほんと、僕たちは座ってるだけで、夢の世界へと入って行けるんだよ」
母・語り「さてさて、テーマパーク好きの雅彦は、八幡のおじいちゃんのところで、どんな夏休みを過ごすことやら」 |