ホーム パーソナリティ紹介 これまでの放送-放送日から検索 これまでの放送-地図から検索 番組あてメール ラジオ大阪

 

  伝統とトレンドをつくる伏流水。 
 
吉村秀雄商店の酒蔵
写真提供:吉村秀雄商店
 和歌山市の西隣、4月に市になったばかりの岩出市に来ました。JR岩出駅から西へ2〜3km、紀の川へは南に数百mといった辺りにあるのが、造り酒屋の「吉村秀雄商店」です。銘柄名は「日本城」。非常に趣のある蔵は、まるでお城のようです。鳥倉大介さんにお話を伺いました。
「大正4年に創業し、今年で90年を迎えております。吉村家は、元々、生糸の商売をしていて、家族の一人が造り酒屋になりました。日本が世界に物を輸出し始め、第一次世界大戦で世の中が熱い時代に、日本酒を造ることで皆さんのお役に立てるのではというのが、創業のきっかけと聞いています」

 


昔ながらの手作業での仕込み

写真提供:吉村秀雄商店

 どんなお酒を造ろうとしたのでしょう。
「紀の川の伏流水を使っていますが、しっかりとしたうま味のある水ですので、それを生かした『甘辛ピン』のお酒造りを当初から目指しています。口当たりは優しく甘く、その後に甘さを引き締める辛さがあり、さらにピンとした、しゃきっとさわやかな後味がある、それらが調和したお酒です。『日本城』という名前は、創業者が和歌山城好きで、大正の熱い時代に世界を見据えたお酒造りをしたいということで、『日本』と『城』をくっつけてつけられました。私どもは小さい酒屋ですけど、意気込みだけは世界を目指して頑張っています」

 日本酒の決め手は、はやりお水です。
「この辺は本当にいい水が取れます。お酒の一升びんは8割が水なので、まさに水は命。水が悪いと酒屋は成り立ちません。紀の川の伏流水を井戸からくみ上げていますが、それを全くいじらず、成分無調整で使っています」

 

 

 お酒づくりも、時代に合わせることが大切です。
「こだわりは持ちながらも、酒造りの世界では30年サイクル説があります。戦前、戦後ぐらいは甘口が流行っていて、その後は辛口の時代が来ましたが、今は『酸味』が注目されています。以前は、酸味があるとおいしくないと言われていたんですが、ここ数年は、酸味が個性につながるのではと考えながらやっています。とくに、和歌山は酢を利用した料理が非常に多く、県民一人辺りの酢の消費額は日本一です。ラーメン屋さんにもおすしが置いてあるほどです。私どもは、お酢の個性的な味わいに負けないように意識をしていて、例えば淡麗辛口ですとお酢の味をリセットするような役割を果たすため、せっかくのおいしいものがもったいないのではと思っています。個性的な味を辛口で流すんじゃなくて、うま味でしっかり受け止めたいと思って酒造りをしています」

  吉村秀雄商店
 ■TEL /0736−62−2121



和歌山県を流れる紀の川を訪ねました。紀の川についてのいろいろな勉強、そして、紀の川の水で造るおいしいお酒、どち)らもごちそうさまでした。