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復活をなし遂げたのは、人と水と情熱。
奈良県野迫川(のせがわ)村は十津川村の北西に位置し、和歌山県の高野町や花園村と隣接しています。標高が高く、一年を通じて気温が低い自然豊かな避暑地です。村を流れる川原樋(かわらび)川は、水量が多くて流れも激しい新宮川水系の川です。今回は水の恵みにより育つワサビとアマゴの話題です。



  ワサビ沢は段々畑状。     <川原樋川の地図はこちら>
 

川原樋川

 雨で川が増水し、かなりの音がします。沢ワサビを生産している柏谷(かしたに)義美さんに伺いました。ワサビを植えている所は何と呼ぶのでしょう。
「『わさび沢』と言います。『田』ではありません。私がワサビの栽培を始めて30年あまりですが、昭和初期にも少し作られていたようです。戦争で中断し、同じころに集中豪雨で流され、作られなくなりました。それを4〜5人のグループで復活させました。私は林業の仕事をしていましたが、木を育てて切り出すのに40年も50年もかかるので、短期間で出来るものをと思い、ワサビを始めました。最初はうまくいかず、先進地といわれる静岡県伊豆半島に研修にも行きましたが、多くの品種の中から、野迫川の気候にあうものを選択するのが一番の苦労でした。伊豆の『だるま』と和歌山県印南(いなみ)町原産の『真妻(まづま)』、品種は大別すると二つですが、栽培技術が進んで改良され、現在は何百とあります。ここの品種はだるまの系統です」



段々畑状のわさび沢

 ワサビは大きいもので10cm弱。ワサビ沢は湿地帯に石が組まれて、段々畑状になっています。
「畳石式の沢です。一番下に大きな石を置き、上に段々小さな位置を積んでいき、一番上は砂にします。ワサビの成長には根からの酸素吸収が最も大事で、砂地に植えた苗の根が空気の層がある石の層へと伸び、そこで酸素を吸収して成長します」
 沢は暗い。日光と成長は関係あるのでしょうか。
「ワサビには直射日光が良くないため、日よけのための寒冷遮を張ってあるため、雨が降ると余計に暗く見えます。一番大切なのは水と湿気です」
 わさび沢は川のそばにあり、上流から水が流れて来るようになっています。
「苗を植えた当初はそれほど水量はいりませんが、成長に応じて水の量を増やします。水温も大事で、わさび沢を作る時にはまず水温を調べます。あの沢は条件が良くなく、真冬で6℃、真夏で17℃と温度差がかなりあります。温度差は少ない方が成長がいい。条件の良い沢は、真冬で10℃ぐらい、真夏でも14〜15℃にしかなりません」



川原樋川の水で育ったワサビ

 柏谷さんは「野迫川村沢わさびを守る会」の会長をされていたとのこと。
「過疎の村で生産者は高齢者が多く、休耕田もかなりあったため、ボランティアの協力を得ながら、去年、休耕田の復活をしました。その時、『野迫川村沢わさびを守る会』を作りました。奈良県や遠くは堺市からも、多い時で30人ほど参加してくれて、雑草取り、苗の植え付け、無農薬で作るのための害虫駆除、11月にはビニールをかぶせる冬支度の作業もしてもらいました。今後もやりたいと言ってくれました。ワサビは3月終わりから4月の中ごろに白い小さな花をつけます。4月にボランティアの人たちと花を収穫し、料理しました。結構、おいしいんですよ。今年も7月から『守る会』で、また休耕田の復活をするつもりです。そこから後継者が出てくれたら一番いいんですが」

 川原樋川はどんな存在なのでしょう。
「非常に大事です。川と自然。ワサビ作りは自然が相手、自然を大切にせなあかんと思います」