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世代から世代へ、紀の川が伝えること。
紀の川が流れる和歌山県橋本市に来ました。紀の川は日本で最も雨の多いエリアの一つ、大台ケ原を水源に、高見川や大和丹生川などと合流しながら、中央構造線沿いに流れて、紀伊水道に注ぎます。ここ紀州はヘラブナを釣るへらざお作りが盛んで、圧倒的シェアを誇ります。今回はまず、へらざおを作る「さお師」を訪ねます。


    “一生もの”のさお。            <紀の川の地図はこちら>
 


紀の川


 橋本市にはさお師の組合、紀州製竿(せいかん)組合があります。組合長の城英雄さんにお話を伺いました。紀州へらざおの特徴は、天然素材による手作りという点のようです。
「基本的には3種類の竹を使います。最も細い穂先には真竹(まだけ)を細く削ったもの、上から2番目の穂持ちには高野山近辺に生えている高野竹(こうやちく)、そして、手元には弓矢に使った矢竹を使います。ハンドメイドなので、さお師の作風が出ます」

「火入れ」を行う城さん

 工程を伺いました。
「竹を切りに行くところから始まります。10月〜12月に切った竹を、4カ月から半年ぐらい天日乾燥させ、風通しのいい所に1〜2年保管してから、『生地組み』に入ります。三本継ぎにするとか、何mのさおにするとかの設計になります。その後は『火入れ』で、さお師が自分の手で原竹を焼き込んで真っ直ぐにしていく最も難しい工程です。最後は継ぎ手に絹糸を巻いて補強し、漆を塗って仕上げます。竹切りから始めて1年半から2年かかります」

 お値段はいくらぐらいでしょう。
「100万円を超えるものもありますが、3万円程度からあります。竹ざおは繊維が縦に入り、釣った時に魚の動きを感じますが、カーボン繊維は横向きに巻いてあるので、竹ざおより感じません。その価値を分かってもらえれば、決して高いものじゃないですよ。魚と対話する生きた道具だからこそ、今まで残ってきたと自負しています。父親でもある親方は、65年間現役のさお師をしていて、修理で返ってくるさおには50年前のものもあります。メンテナンスをすれば一生使えます。若い人にこそ使ってほしいですね。同じ釣りでも心豊かに釣りができる、それが竹ざおの一番の良さです」


城さん作、へらざお

 紀州へらざおの全国シェアはどれぐらいでしょう。
「へらざおでは、90%以上のシェアです。残り10%は、この地方出身のさお師が全国で作っています。今、ヘラブナ釣りが盛んなのは、埼玉、千葉、東京方面で、製品の5〜6割を出荷しています。2〜3割が関西です。さお師は橋本市で約60名いて、組合のメンバーが43名です。昭和30年代には150人以上いましたが、カーボン製品が出回って高級品市場に行かざるをえず、淘汰(とうた)されていきました。私は2代目ですが、さお師になるため弟子に入る形もあります。もの作りや釣りが好きで飛び込んで来る人もいます。私はこの世界に入って27〜28年ですが、65年の親方にすればまだまだでしょう。ある程度の形のさおが出来るまでに10年前後、そこから技術や創意工夫で作品を練り込んでいきます。親方でも、今までに満足したさおが何本あるかなという世界です」

グリップ部分に特徴が出る
 ヘラブナ釣りはどんな釣りなんでしょう。
「キャッチ&リリースでは日本最古といわれ、池や川以外に、最近は管理池に放流して楽しむことも多いですね。人口は100万人前後、単一魚ではバス釣りより多いといわれています。魚と戯れ、釣った魚は逃がす。自然の中、家族で楽しめます。紀の川はアユで有名ですが、最近はヘラブナも増え、組合の研究池も一般に開放しています。私も自分で作ったさおでヘラブナ釣りを楽しんでいます。紀の川でゆっくり釣り糸を垂れているのは本当に幸せですよ」



  研究池「隠れ谷池」
 
 ■時間/7:00〜17:00 *季節により変更
 ■休日/毎週金曜日
 ■料金/男性1500円(半日1000円)、
   女性500 円、高校生以下無料、さおレンタル500 円
 ■TEL/0736-34-1482