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静かな山あいに見る、川の暮らし、恵み、楽しみ。
和歌山県熊野川町を流れる熊野川に来ました。支流の赤木川が合流する地点です。昨年の取材では、昔、熊野詣の際に本宮と新宮の間は熊野川で移動することが多く、その区間の熊野川は熊野古道の一部で世界遺産であるというお話を伺いました。この辺りも世界遺産の川になりますが、今回は赤木川を上ります。どんな人や風景に会えるのでしょうか。


   熊野の「金比羅さん」。            <赤木川の地図はこちら>
 


赤木川(上長井地区)

 赤木川を10km近く上り、上長井地区に到着。山の上にある「金比羅神社」に来ました。下では3本の川が合流しています。ここは四国の金刀比羅宮の末社、来月例大祭が行われます。地元の歴史に詳しい木村靖さんに伺いました。
「ここは無人の神社です。本尊さんもここにはいませんから、地元の者も登ってきません(笑)。ご神体は近くの『清蔵寺(せいぞうじ)』に預けられ、大祭の時だけお迎えします。この付近は昔から船で物資を運んでいたため、金比羅さんを四国から勧請(かんじょう)したんだと思います。1800年ごろの寛政年間のことだと聞いていますが、資料は残っておりません」

金比羅神社

 お祭りについて伺いました。
「3月10日前後の日曜日にしていて、今年は13日です。午前中に皆さんが寄ってきて、和尚さんに拝んでもらったり、ごちそうをいただいたり。最後に餅投げをして、12時過ぎに終わります」
 

 お祭りはどんなことから始まったのでしょう。
「元は舟や筏(いかだ)に乗る人が中心にお祭りをしていました。向こうの川とこっちの川、さらに赤木川にある急な流れのところも見渡せるこの場所に、川の安全を祈ってお祭りしたと聞いています。運行していた舟は幅約1.5m、長さ約6mの小舟で、主に木炭を運びました。また、酒樽の材料『樽丸』をかつて『伊丹味(いたみ)』といい、それを運んでいたようです。他にも、スギやヒノキの皮など山で取れる物を運び、帰りは米や塩などの生活物資を運びました。酒を運んだこともあり、途中で船乗りさんが樽から酒を失敬して、代わりに熊野川の水を入れたという冗談があるぐらい、水が奇麗だったようです。うちも昭和25年ごろまでは、川の水で炊事をしておりました」


金比羅神社から見下ろす赤木川

 上長井の人にとって、赤木川はどんな存在なんでしょう。
「子供のころから泳いだり、魚を取って楽しんできたりした川ですから、今でも、3月になったらあそこでアメノウオが釣れるぞと思ってます(笑)」