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   地図に無い橋。
 

揖保川に架かる名畑橋
 揖保川を上り兵庫県宍粟郡一宮町に来ました。揖保川の水源は、ここ一宮町北部の藤無(ふじなし)山で、上流域にあたるこの辺りは流れが早く、白い波が立っています。川幅は20m弱ほどです。ここに名畑(なばたけ)橋という、おそらく地図には載っていない橋があります。普通、橋は国や自治体が造りますが、この橋は違います。板が連なって橋になっています。板が石の台座に乗っているだけで、手すりもなく、私は途中で立ちすくんで渡れませんでした。どうしてこんな橋が架かっているのか、流れ橋管理組合の八木智さんに伺いました。
「伊和神社を守る三山の一つである向こう正面の山に、ほこらがあって、そこへ行くためだと推測されます。また、この集落の者が牛の飼料になる草を刈ったり、薪を取ったりするために、山へ行ったという気もします。明治44年生まれの親父が物心ついた時には、橋はもうあったそうです」

架け直しの様子
写真提供:流れ橋管理組合
  
 踏み板のようなものが五つ連なっています。
「一つが9〜10m、幅40〜45cmです」板の両脇に丸太がくくられ、丸太と丸太に板が挟まれて、実際の幅は80cmぐらいになっています。この橋は流れ橋なのでしょうか。「流れるというより、落ちるという状態です。台風で水量が増えて、橋脚から脱落して川岸に横たわります。架け直しは、この集落の45世帯が全員総出で力を合わせます」

  ここは川の流れが急で、しかも板は丸太付きで軽くなさそうです。
「一番手前は水がないので、10〜15人でまず復旧します。残りの橋は、丸太と板をばらし、丸太を前へ前へ押し出しますが、橋脚の台座に乗せるのが難しく、突き当たった状態で止まります。そこで1人がロープを背負ってその丸太を渡り、2人ぐらいが続いて3人ほどでロープを丸太に縛りつけて引き上げ、台座に乗せます。一番重い“3点セット”で約1トンあると思います」

架け直しは集落総出で行われる
写真提供:流れ橋管理組合
 
 台風の多かった昨年は、よく流れたのでしょうか。
「一昨年は一度も流れなかったんですが、昨年、私が役を引き受けたとたんに3回流れてしまいました。嵐を呼ぶ男ですか(笑)」

 地元の方は、古くからあるこの橋を守っていきたいという気持ちが強いようです。
「夏にはアユのシーズンが始まり、神戸や大阪からの釣り人の方が、地元の者より渡る回数が多いかも知れません。でも、ここは8月15日には精霊流しの場所になる所でもあり、守ろうという気持ちは強いと思います。私にも、タイヤチューブに乗って川を下ったり、川原でチャンバラごっこをしたり、そんな思い出があります。昔、交通手段としても使われた揖保川を、これからも大切にしていきたいですね」

 


揖保川をたどり、揖保川町、一宮町の美しい風景に出会い、人々の営みに触れました。それにしても、名畑橋は怖かった!