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一本の川と、そこに生きる人々の営み。
兵庫県南西部の揖保川町、揖保川が流れています。河口はもう少し下った御津(みつ)町にありますが、この辺りは川幅が広くなっていて、対岸の家の屋根がはるか向こうに見えます。さて、今回は食通には有名な「揖保川トマト」の話題です。このトマト、意外にも1年で一番寒い今が、いわば旬なのだそうです。一体、どんな秘密があるのでしょうか。


   揖保川改修で生まれたトマト。            <揖保川の地図はこちら>
 


揖保川(揖保川町)

 揖保川町市場(いちば)地区、竹田農園のハウスの中でトマトが実っています。「揖保川トマト」、有名なブランドです。揖保川町南東部、龍野市や御津町との境界に近く、かつて「河内(こうち)」と呼ばれた揖保川町一のトマトの産地です。この地区を代表するトマト生産農家、竹田農園の竹田有利さんに伺いました。トマトはほとんどまだ緑色ですが、下の方に成っている実だけ赤く熟しています。
「リンゴのように木全体の実が熟れるんやなく、下から順に熟れていきます。下から葉がつき、3枚目の葉に花芽がつきます。葉が3枚伸びて花がつき、また3枚伸びて花がつき、下から順に花が咲いていくわけです。だから、一番下が一番早く赤くなります」


竹田農園

 さて、揖保川はこの下流で龍野市に入り、林田川と合流し、御津町と姫路市の境界を流れて播磨灘へ注いでいます。
「ひとつ向こうの山は『碇岩(いかりいわ)』といい、昔はそこまで海やったようで、ここは本当の下流やったと思いますが、今はデルタ地帯に土が堆積して海が遠のいています」

 かつてこの辺りが、河内(こうち)と呼ばれていた理由を伺いました。
「河内地区全体が川に囲まれ出口が川にふさがれ、『河の内』と呼ばれたようです。市場も川の中でした。今は川の流れが変わっていますが、付け替えではなく自然に変わったようです」




収穫されたトマト

 
 洪水も多かったようです。
「林田川との合流地点で水かさが急に増えるため、この辺りに水がたまり、川幅が広いんです。昭和40年代前半に堤防ができました。昔は河川敷のようなところでも野菜を作っていたんですが、工事で川になったため作れなくなりました。トマトを作り始めたのは改修以降です。改修で減少した土地で収益を上げるため、単位面積あたりの収入が一番高いトマトなどの果菜類を栽培したわけです。この辺りは、昔は揖保川の底だったと思いますが、地下が砂利、上に肥沃(ひよく)な土がある感じです。そのため排水がよく、野菜に向いています」

 夏野菜のメイージが強いトマトですが、ハウスものの食べごろはいつでしょう。
「11月ごろから夜間温度が下がってくるので、トマトやイチゴなどは味が乗るようになります。夜間温度が下がって昼と夜との温度差が15℃ぐらいになると、かなり糖度が乗るんです。6月いっぱいぐらい、味はいいと思います」

おいし〜い!
 
  販売ルートが気になります。
「市場出荷は今はしていません。昭和の後半から全部直売に変えました。価格は市場と多少スライドしますが、自分の採算があう価格にしていて、安い時は一箱2400〜3500円です。また、2級品や3級品を袋に詰めて、お徳用として近くの人が販売しています」

  揖保川についての思い出を伺いました。
「子供のころは揖保川で遊んで、揖保川の水を飲みよったんですけど、今はちょっとね。高度経済成長期に砂を採って砂場が少なくなり、遊ぶには不向きな感じですが、以前はかなり悪かった水質も、下水が完備されてきて段々ようなってくるんじゃないかと。最近はアユも上が
ってきますし」