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   ヨシが湖を守る。
 

ヨシ博物館近くのヨシ原
 近江八幡市に戻り、西の湖のほとりにある「ヨシ博物館」に来ました。さまざまな資料が展示されています。館長でヨシ研究家の西川嘉廣さんに伺いました。目の前には西の湖が広がり、広い範囲にヨシが生えています。
「この辺りのヨシは、個人の所有地に生えています。全体で50ヘクタールほどでしょうか。全部が私個人の所有ではありません。ここでは、昔の田舟を強化プラスチック加工した舟で迷路のようなヨシ原を観光する、『水郷めぐり』が人気です」

ヨシ博物館の展示
 博物館は西川さんのご自宅の蔵を改装したもの。家業は「西川嘉右衛門商店」で、西川さんはその会長です。
「日本でも珍しいヨシの卸業です。自分の土地のヨシを刈り集めて、ヨシを加工する人に卸すのが家業で、創業は400年ほど前の江戸時代です。ヨシの刈り取りは12月から3月まで、『刈り子さん』がします。古事記や日本書記に日本を表わす『豊葦原瑞穂(とよあしはらみずほ)の国』という言葉があるように、昔は日本中にヨシの群落がありました。しかし、今残っているところは少なく、北海道釧路湿原、東北の北上川河口付近、関東の渡良瀬遊水地や霞ヶ浦、そして関西の琵琶湖と周辺の内湖、とくに西の湖です。有明海のような汽水域にもあります。この辺りは江州(ごうしゅう)と呼ばれ、江州ヨシの品質は日本一といわれてきました」

 

西川家は400年の歴史があるヨシ卸業
 環境面でのヨシ原の役割を伺いました。
「第一は水の浄化機能で、科学的に証明されています。二番目は、オオヨシキリや琵琶湖の古い名『鳰の湖(におのうみ)』の『鳰』、つまりカイツブリが巣を作り、ニゴロブナやホンモロコなど琵琶湖の固有種の魚が産卵し、水生昆虫も生活するなど、ヨシ原は生態系の保全に役立つ空間になっている点です。三番目は、ヨシ帯(たい)が波風による湖岸の侵食を自然な形で防いでくれること。最後は、多くの日本人が日本の原風景的なノスタルジーを感じる景観をつくり出すことです。最近、ヨシの重要性がとみに認識されるようになりました」

 守っていくために何が重要でしょう。
「すだれや屋根など、ヨシの伝統的な需要がなくなってきました。大量需要がある活用法、付加価値の高い商品としての活用法を見つけることです。ヨシ笛やヨシペンを既に商品化し、ヨシうどん、ヨシ茶、ヨシせんべい、ヨシアイスクリーム、ヨシ団子など、食品としての利用も進めていて、商品化目前です。ヨシはビタミンCが多く、健康食品としても有望です。また、いろんな糖分が入っていて少し甘味があり、独特の香りもあります」


   ヨシ博物館
 ■入館料/無料 *要予約
 ■TEL/0748-32-2177
 


東近江を訪ねました。夕日に映えるヨシの群生は写真に撮りたくなる光景です。自然を守ること、生活に利用すること、それが本当の意味で自然との共生につながるのではないでしょうか。