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名水がつくり出す、音、そば、伝説。
福井県特集、第2弾は武生市です。市東部の味真野(あじまの)地区に来ました。鞍谷川が流れています。この水は、日野川から九頭竜川、そして日本海へと注ぎます。ここ味真野の大平山には、珍しい間欠冷泉があります。名水の多い福井県の例にもれず素晴らしい水で、音もとてもいいようです。



   “時を告げる”間欠冷泉。     <蓑脇の時水の位置を示す地図はこちら>
 

蓑脇の時水

 ふもとから少しだけ車で登り、山道を30分ほど歩いて、大平山の「蓑脇(みのわき)の時水(ときみず)」に来ました。大平山は標高611m、時水のある所は約320mで、見晴らしが最高です。ほぼ毎日、蓑脇の時水を見続けている川上一馬さんに伺いました。
 流れていた水が急に止まりました。これが間欠泉のようです。
「間欠泉には熱泉と冷泉があり、ここは冷泉です。一般的には間欠泉=熱泉としてよく知られていますが、間欠冷泉は名称も現象自体もあまり知られていません」



時水の100mほど下にある滝
時水から来た水がはじける

 水が地面から噴水のように吹き出ているのかと思ったら、大人がかがんで入れる程度の洞穴の奥からわき出ています。
「洞穴を1.8mほど入った左手の奥に岩壁があり、その割れ目から吹き出すようにわき出して流れています。間欠冷泉は珍しく、日本で確認されているのは広島、岡山、福岡、熊本とここの5カ所で、鳥取県以北では時水が唯一のものです」
 水量や時間の間隔はどの程度でしょう。
「平均的には毎分15〜30リットルの水が流れていますが、それが突然増え始め、5〜6倍から20〜30倍、多い時には60倍になります。1回だけ720リットルという記録もあります。600リットルには年に何回かなるみたいですが、1分間にバケツ1杯分ほどの水しか流れていなかったのが、突然、大きなドラム缶3本分になるわけです。水が増え出す間隔は不定期ですが、言い伝えでは2時間に1回で、山仕事の人たちが時計代わりにしていたため、『時水』と語り継がれてきたわけです。実際に2時間に1回だったかもしれません。ここは昭和32年に雑木や草を刈って杉を植林しています。最近、雑木林やブナ林の保水力が注目されていますが、以前のままの雑木の山なら、2時間に1回だった可能性はあります。もう一つの見方として、昔は時間感覚が希薄で、また権力者の言葉に庶民は逆らえなかったため、庄屋などが『あそこの水は2時間に1回だ』と言えば、それが言い伝えになっていったのかもしれません。事実は分かりません」



鞍谷川

 なぜこの現象が起こるのでしょう。
「諸説あります。潮の干満との連動説、地球の自転・引力説、気圧との連動説などですが、一番近いのはサイフォン原理説だと思います。単純なサイフォンの原理なら定期的に出るはずですが、これは違います。機構自体が複雑なんでしょう。多くの偶然が重なって、サイフォンの原理が働く機構が出来たんだと思います」
 飲んでもおいしいし、暑くて思わず足をつけましたが、冷たくて気持ちがいい水です。
「水温は年間を通じて11〜12℃です。夏は顔を洗ったりすると気持ちよく、冬は手が冷たければここにつけると温かいと思います」
 
 ジャージャー、ポコポコと音がよく、環境省の「残したい日本の音風景100 選」にも選ばれています。この時水は山を下り、ふもとの鞍谷川へと注いでいるそうです。