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命の源に全身で触れる、ひととき。
早々と避暑に来た。京都市左京区鞍馬貴船(きふね)町。地元では、地名も川の名も「きぶね」と濁るのが一般的だそうだ。目の前を流れる貴船川は、水が豊かで澄んでいる。周囲の緑は、したたり落ちるほどたくさん茂っている。貴船川は貴船口駅近くで鞍馬川に注ぎ、鞍馬川は鴨川に、鴨川は桂川に合流し、淀川へと水の恵みを運ぶ。今回は涼しい貴船が舞台だ。



 「気」と「水」の社。    <貴船川の地図はこちら>
 


貴船神社
 貴布禰(きふね)総本宮・貴船(きふね)神社に来た。古くから水の神として信仰を集めながら、縁結びや心願成就、航海安全、消防や防火などの御利益もある。本殿の檜皮葺(ひわだぶき)の屋根や能舞台のような空間に、厳かな雰囲気が漂う。本宮、中宮(なかみや)である結社(ゆいのやしろ)、奥宮(おくみや)の三社がある。権禰宜(ごんねぎ)の山田晃義さんに伺った。
「創建時期は分かりませんが、1600年ほど前の建て替え記録があり、それ以前からあったようです。元々は奥宮が本社でしたが、950年ほど前にここ本宮に移されました。本社は高おかみ神(たかおかみのかみ)、奥宮は闇おかみ神(くらおかみのかみ)を祭ります。『おかみ』の字は雨冠の下に口が横に三つ並び、その下に龍と書きます。雨と龍がつきますが、水神が龍神様ということになります。奥宮本殿の下に、龍神さんのお住まいの『龍穴』があり、我々は絶対見てはいけないといわれています。大工さんが誤ってノミを落とすと、にわかに空が曇って雷で彼が亡くなったという伝説があるほどです」

 

 


水につけると文字が浮かぶ「水占みくじ」

 水の神様には、誰がお参りに来るのだろう。
「航海に出る方、水道や酒造、豆腐など水を扱う方。京都らしく和菓子関係。これもいい水でないとおいしくできませんので。井戸を掘る方や埋める方も来られます」

 なぜ心願成就の御利益があるのだろう。
「貴船には『気』があります。気力を蓄えると運気が上がり、願いがかなう。水はすべての根源で、きれいな水と自然のあるここに貴船神社が祭られているのは、理にかなったことです。気力が生じる根っこ、山の嶺(みね)ということで、『気生根』『気生嶺』が『きぶね』の名前の由来の一つです。また、もう一つ、水の神を祭るために、玉依姫命(たまよりひめみこと)が淀川から黄色い船に乗って来られたから『黄船』という説もあります。汚れたら水で洗い、疲れは風呂で落とす。水が汚れを払うんですね」


 

御神水
縁結びの御利益もある。
「昔、天照大御神(あまてらすおおみかみ)のお孫さんの瓊々杵尊(ににぎのみこと)が、木花開耶姫(このはなさくやひめ)と磐長姫(いわながひめ)の姉妹のうちの1人との結婚で、妹の木花開耶姫を選びます。磐長姫命は、『私はふられたけど、ここで恋を祈った人には私の力でかなえてあげよう』と、貴船でお鎮まりになったんです。平安の歌人・和泉式部は、夫の浮気に悩んでここへ何日もお参りすると、夫が戻って来ました。それで、縁結びや復縁の御利益があるとされました」

 御神水が湧き出ている。飲んでみるとおいしい。
「何千年なのかは知りませんけど、枯れたことがありません。弱アルカリの硬水です。持参の容器で、無料でくんで帰っていただけます。神社でも500円で容器を用意しています」



    貴船神社
   ■参拝時間/6:00-20:00
   ■TEL /075-741-2016

  
 川の音が聞こえる 
 

船形石
 本宮から貴船川沿いを上流に15分、奥宮に来た。朱色の門をくぐると、静かな空気が流れる。大木に囲まれた中、川の音だけが絶え間なく聞こえる。女神が乗って来たという黄色い船を祭る船形石(ふながたいわ)がある。石で覆って隠してあるが、大きさは推測できる。全長は10mほど、想像より大きい。石はこけむし、石の間から草が生えていて、時代の流れを感じる。
 本宮から奥宮、その帰りに縁結びの結社に参るのが習わしだ。今度は結社に来た。ここでも川の音が聞こえる。小さな社の横に納められた天磐船(あまのいわふね)は、船の形の自然石で、やはり船に関わる社だ。