橋本市東端の真土山(まつちやま)、奈良県との県境に来た。落合川が南北に流れ、少し南で紀の川に注ぐ。ほぼ県境と一致する。川幅は3mほどあるが、流れるのは中央の1mぐらい。水量が減っているのだろうか。 裸足で岩の上に立つと、ひんやりした感触が伝わってくる。国道24号のすぐ近くなのに、静かで幻想的な雰囲気だ。岩は畳1枚ほどの大きさで、両岸から川に張り出している感じになっていて、岩と岩との間は60cm足らず。ひとまたぎで渡ることができる。「飛び越え」と呼ばれる観光名所だ。今、西側の和歌山県だが、またぐと和歌山県橋本市から奈良県五條市になる。渡ってみよう。あっという間に奈良県五條市だ。
真土山は、万葉人が紀の国へ帰る際に故郷へ思いをはせた場所で、万葉歌碑が多い。 「いで吾(あ)が駒、早く行きこそ真土山、待つらむ妹(いも)を行きて早見む」 私が乗っている馬よ、早く行ってくれ。真土山の向こうで待ちこがれているはずの、いとしい人に早く会いたい。真土山は「待つ」にかかる。飛び越えれば、愛しい人のいる故郷・紀の国に帰れる。万葉人はロマンチックだ。もう1回、飛び越えてみよう。