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南紀の海を、タワーから見る、世界遺産から見る!
夏の1泊ドライブ旅行、初日は南紀の古座川町のダイナミックな自然を楽しみ、串本町で投宿しました。本州最南端の強烈な日差しで目覚めた2日目、まずはブルーの海を見に出かけたのですか、その途中、住宅街に不思議な構造物を見つけました。一番上に三角形の展望台のようなものがある鉄塔です。しかし、レジャー用の施設という感じではありません。



    串本にある謎のタワー     
 


串本地区津波避難タワー

 謎の構造物には広めの階段があり、海が見えるかと期待して上っていったものの、家々の屋根の隙間から少しのぞく程度でした。決して眺めがいいとは言えません。一体、ここは何なのか、謎解きは串本町役場防災対策課の橋本新蔵さんにお願いしました。
「これは津波避難タワーです。津波が発生した場合に、この上に上がれば津波から避難することができるという人工的に造った高台です。全体の高さが7m95cm、このステージ部分は5m60cmです」

 どうしてここに造られたのでしょう。
「和歌山県の津波浸水予測結果によりますと、東海・東南海・南海地震が同時発生した場合、この串本町には、早い場所だと約6分で津波が到達します。津波来襲までに安全な高台に避難できない場所が生じているため、それを解消すべく一時避難場所としての津波避難タワーを建設しています。この付近では1mから2mの浸水予測になっていて、2mになると家が何らかの被害を受けるため、安全な高台へ避難していただくことになります。この場所では、串本高校などの高い場所に避難することになっていますけど、そこまで遠いということで、これを造りました。現在、串本町には2基あり、近畿では他に造っているという情報は聞いていません」
 


タワー上からの眺め
海は建物の隙間から覗く程度

 屋上部分には小さな倉庫もあります。ここに何人ぐらい避難できるのでしょう。
「1u当たり2人で計算し、35uありますので約70人が避難できます。また、津波発生の場合には、少なくとも6時間以上留まらなければならないので、簡易トイレや雨風をしのげるシート、暖を取る毛布などを、この倉庫に備蓄しております。なお、串本町では、地域住民、県、国等の関係者と一体になり、昨年度、検討委員会を立ち上げ、津波避難計画などの逃げる対策と、避難を助ける対策について、基本方針と整備目標、整備スケジュール等を盛り込んだ『串本町津波防災対策基本計画書』を作成しました。このタワーの建設は、避難を助ける対策として行っております」

  国道42号に謎の青い線     <国道42号の地図はこちら>
 

国道42号(串本町)

 国道42号を北に、すさみ町へと走っています。白い砂浜にエメラルド色の海から打ち寄せる、南紀らしい眺めを楽しみながらドライブしていると、いろいろなものが目につきます。その道路が海抜何mかという表示や、津波時の予想水位より低い区域を表すガードレールに引かれた青いライン。この辺の人たちの、地震に対する備えが分かります。

 津波被害が心配される南紀ではさまざまな対策が取られていて、例えば、国土交通省は、主な国道沿いの道の駅を防災の拠点にする対策を進めていて、白浜町の国道42号沿いにある海辺の道の駅「志原海岸」でも、今年度からそのような事業が始まり、建物の屋上を避難場所として使えるように屋外の階段を造る、地震の発生を知らせるサイレンを設置する、大型画面などの情報発信機能も充実させる、津波が一段落した後も情報収集の場として道の駅の休憩所が使えるように設備を整える、といったことが予定されています。
 


洪水時はここまで波が来るという表示

 もう一つ心配なのは道です。海岸沿いが多い国道42号1本に多くを頼っている南紀は、津波でこの道がやられると、逃げることも、緊急物資を運ぶこともできません。国道42号は車が増え、あちこちで渋滞が発生しているため、紀州と伊勢を結ぶ「近畿自動車道紀勢線」を整備中ですが、この道は少し山側の高台を走っていたり、高架になっていたりするため、津波の影響を受けません。防災の面でも、早く開通してほしいものです。