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「松上げ」とかやぶき屋根の道をドライブ
夏祭りが一段落し、お盆行事の時期となった今回は、8月24日の地蔵盆の日に行われる、火は使うものの、お盆とはちょっと違う祭礼「松上げ」の道をたどります。今では京都を中心とする山深い一部地域でしか残っていない松上げは、空高く掲げた松に火を着けるという、夏の夜の幻想的な光景が楽しめる行事です。



    松上げを伝えた「鯖(さば)街道」     <国道477号の地図はこちら>
 

国道477号 花脊別所
 京都市街を北上、国道477号に入ると細い山道となり、だんだん山深くなって北山杉が両側に見えて来ました。そして、花脊峠を越え、かやぶき屋根が見える花脊別所の集落を過ぎ、さらに行くと桂川に出会いました。地元では「上桂川」とも呼ばれ、今度はその桂川沿いへと進路を変えて府道38号を北上。川は飛び越えられそうな幅で、底が透き通って見えるほど水が奇麗です。
 木と水のいいにおいが漂ってきたので思わず車を止めると、そこが京都市左京区の広河原地区でした。山深いところで、鳴いているウグイスが「ようお越し」と言ってくれているようです。

 

松上げ当日の会場(06.8.24撮影)

 松上げは、京都市右京区の愛宕神社を中心とする『火伏せ』の愛宕信仰がベースになっているお祭りですが、地域によっては別要素も入っているようです。その会場となる桂川と早稲谷(わさだに)川の合流点横広場で、「広河原自治振興会」と「広河原松上げ保存会」の会長、米田正次(よねだまさつぐ)さんにお話を伺いました。やぐらのような物が組まれ、太い木が横たえてあります。
「これが松上げに使う『灯籠木(とろぎ)』で、長さが20mぐらいあります。この先に青竹を3本くくり、それを広げて、笠というものを付けるんですわ。笠は、夏の間に刈り取って乾燥させたカヤの小さな束をいくつも青竹にくくり付け、中に燃えやすいように乾燥した杉の葉っぱなどを入れて作ります」

 

放り上げるがなかなか命中しない(今年)
 それを立てるわけですが、20mも上の笠にはどう点火するのでしょう。
「『放り上げ松』と言いまして、ヒノキの燃えやすい乾燥した材をたいまつにし、それに30cmぐらいのひもを付け、振り回してよく燃やし、下から笠を目掛けて放り上げるんですわ。当日は保存会の会員が50〜60名出てやるんですが、1年や2年ぐらい経験してもなかなか上へ灯りませんな。やっぱりベテランやないと。しかしね、自分が放り上げて落ちてきたたいまつを拾ってまた投げる時、人さんのたいまつとは絶対に間違いませんわ。落ちてきた火が人に当たってけがしたりすることも、滅多にあらしませんね」


 

ついに点火して大きく燃え上がる (今年)
 松上げが残っているのは、左京区では広河原だけでしょうか。「いえ、違います。お隣の花脊八桝(はなせやます)地区は、8月15日にやっておられます。久多(くた)の一部の集落や、この4月に京都市に合併しました(右京区京北町の)小塩でもやっておられます」

 他にも、旧美山町、福井県の旧名田庄村、小浜市などに残っているようです。
「やっぱりね、福井県の小浜から、この辺通って京都市内へ出るというのが『鯖街道』のコースでしたんで、いろいろな人や伝統行事の交流なんかがあったんちがいますかな。この火祭りは、京都の愛宕山が元ですので、福井からやなしに、京都から鯖街道を通じて福井の方に移っていったというふうに僕らは聞いとりますしね」

笠は引き倒されて枯れ木が追加され
そこに棒を抱えて突っ込んで
炎を大きく燃え上がらせる
(今年)

 京都市の民族無形文化財に登録されている、この松上げ。気になるのは担い手の問題です。
「まあなんとか、今現在では会員が50名か60名おります。日ごろはこういうような環境ですので、働くとこもなく、みな若い者は町におりますけど、8月24日の行事をするについては、みんな京都から帰ってきて、みな協力してくれますので、なんとか維持でけるということです。京都(の町)におっても保存会員ですのでね」


  当日は何時ごろまでに来ればいいのでしょう。
「だいたいまあ、7時ごろまでに来ていただいたら、駐車場も確保してありますので、駐車できると思います」