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こんな楽しみ方もある、綾部の道
今回は番組取材を通じて、前々から気になっているところを訪ねます。ひとつは、舞鶴若狭自動車道で綾部市に入ってすぐにあるトンネル上の古墳です。あれは本物の古墳なのでしょうか。そしてもうひとつは、京都縦貫自動車道の綾部安国寺(あんこくじ)インターの名前になっている「安国寺」です。一体、どんなお寺なのでしょうか。近畿の高速道路ネットワークを使ってドライブを楽しみます。


   京都府で最大規模の円墳          <舞鶴若狭自動車道の地図はこちら>
 

舞鶴若狭自動車道

 
  舞鶴若狭自動車道を北上、福知山市から綾部市にさしかかるところにトンネルがあり、その上に古墳が見えてきました。「私市(きさいち)円山古墳」と書かれています。「私市円山古墳公園」とも書かれていて、公園として整備されているようです。石が敷きつめはれ、はにわが取り囲んでいるようにも見えます。その下のトンネルに入り、“お墓の下”を走ることを考えると妙な気分になりますが、次で降りて古墳まで戻ることにします。



私市円山古墳
 綾部インターで降りて10分ほど福知山方面に戻り、私市円山古墳公園に到着。古墳形のトイレがある駐車場から遊歩道を通って、上まで登ってきました。お付き合いいただいたのは、綾部市資料館館長の近澤豊明(とよあき)さんです。
「ここは海抜96m、由良川に沿って広がる平野部を見下ろす丘の上にあります。古墳の主は不明ですが、当時の人口や社会を考えると、由良川の中流域、現在の綾部市や福知山市ぐらいを牛耳ってないと、この規模の古墳を造るのは無理でしょう」

 埋葬されていたのは2人だったとのこと。
「長さ4mぐらいの木棺が二つありました。人間以外は副葬品で空間を埋めました。ここの場合は甲冑や刀などの勇ましい鉄の武具がたくさん出ています。5世紀中ごろの鉄は最先端素材であり、当時の権力者は鉄を押さえました。鏡や勾玉(まがたま)も入れていますが、重要視されていないようです」


古墳の上から見る舞鶴若狭自動車道
 こんな山の上まで石やはにわを担ぐだけでも大変です。
「たった2人のために推定6万個の石を運び上げました。この石は復元したものですが、50cm下には本物の古墳が保存してあって、由良川の河原石が6万個あります。エジプトのピラミッドや中国の始皇帝陵などと同じで、1人の王様のために何万人もが動く時代でした」

 ここはどのように発見されたのでしょう。
「京都府では最大規模の円墳であり、普通はここに大きな古墳があると分かっています。ところが、データが整備されているなかで、未発見の巨大古墳があるはずないという思い込みがあったのか、中世の山城跡だと誤認されていました。高速道路が通る時に山城跡として調査をしたら、はにわや石が出てきて、しかも珍しく全く未盗掘の古墳だと分かり、大騒ぎになりました。結局、(山を削らずトンネル式に変えて)残してもらい、公園として整備しました」

 それにしても道路からよく目立ちます。
「遺跡は現代になってもランドマーク的効果を失わないんですね。ナイル川のふもとにピラミッドがあって遠くから見える、堺の沖合を行く船からは日本一大きな仁徳陵が見える。本来、大きな遺跡はそういう交通の要衝にあります。現代でも下にこういうハイウェイが通ってるのは、歴史のいたずらなのでしょうか」