国土交通省近畿地方整備局・谷口博昭局長 新春インタビュー




近畿が再生する道づくり


稲野 近畿に元気がありません。道づくりの視点では何が問題ですか。

谷口 近畿の再生なくして、日本の再生はありません。ただ、ハード面だけでは限界がありますので、ハード・ソフト一体化した道づくりで少しでも貢献出来ればと思います。近畿の再生には、高速道路ネットワークの完成や、大都市大阪にふさわしい環状道路の整備が重要です。そうすれば、必要のない交通が大阪の中心部に入ってこず、道路をうまく使えます。毎年、渋滞によるロスは、大阪市だけで数千億円、近畿2府5県管内では1兆7千億円に上ります。

稲野 大阪の中心部に必要のない車が入らなくていい環状道路を造らなければいけないんですね。

谷口 大阪都市再生環状道路は、東が門真から松原ジャンクションまでの近畿自動車道、西が堺から大阪北港までの阪神高速湾岸線。南は阪神高速松原線と事業中の大和川線。北は事業中の淀川左岸線とその先から門真までの淀川左岸線延伸部で構成されていますが、延伸部は計画も出来ていませんので、早期計画決定が必要です。効果は四つあって、昨年の試算では、都心通過交通の約4割排除、所要時間の短縮と多様な経路の選択、大阪都心部のNOx や浮遊粒子状物質が大幅に減少する環境改善、約3兆3千億円の経済効果です。

稲野 都市の環状道路を整備したことで、都市が元気を取り戻したという例はあるんですか。

谷口 
あるんです。大阪府がイタリアのロンバルディア州と友好交流提携をしていますが、その中心都市で大阪市と姉妹都市提携をしているミラノです。ハードとソフトを両立し、今ではヨーロッパの中でも、世界の中でも、大きく光っている都市です。

稲野 番組で須磨を訪れた際、阪神高速湾岸線が延びてほしいと地元の皆さんからたくさん声をいただきましたが、こちらはどのように進んでいますか。

谷口 六甲アイランドから西の須磨までは、計画決定すら出来ていません。六甲アイランドからポートアイランドを経て名谷ジャンクションまでの21キロを、1日も早く計画決定し完成する必要があると思っています。神戸といえば、阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けてリダンダンシーが強調されましたが、8年が経過して風化が懸念されます。複数ルートが選択出来る道づくりが、大災害時に備える防災面でも必要なプロジェクトです。


利用者が道を変える

稲野 ではここで、番組に寄せられた道路についての意見や質問を局長にぶつけます。まずは、大阪府河南町の津田捷治さんです。「目的地までは高速道路を使いますが、片側1車線・合計2車線の道路は快適な気分を味わえません」とのことです。

谷口 経済性や国土の有効利用、土地を提供する方々のこと考えると、2車線にとどまらざるを得ない高速道路があります。また、4車線で計画し、早期に投資効果を上げるため暫定2車線で使う道路もあります。その場合、追い越し可能区間を設ける3車線的な道路の検討も進めています。

稲野 次は、羽曳野市の小島信二さんです。「道の問題が議論されていますが、100年先を見据える答えを引き出して欲しい」ということです。

谷口 公共事業という概念は、単年度の予算としての「フロー」とともに、100年スパンで考える公共施設の整備量としての「ストック」の概念が重要です。100年先の道の利用のされ方を考えた計画と、時代に応じた適切な維持管理が重要です。

稲野 柏原市の堀さとえさんです。「道路も公園も空き缶などのごみが散乱しています。拾いますが、ちっとも減りません」。

谷口 道には住む人の心が反映されます。それこそ「未知普請」の精神で、共に良くしていく知恵を出していきたいですね。


国土交通省近畿地方整備局ホームページ

大阪都市再生環状道路に関する情報




開通する道のこと、近畿の道づくりについての取り組み、問題点などを伺い、
造るのも、使うのも、道を良くしていくのは私たちだと実感しました。
 

 

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