昨年4月から番組で近畿の道を走り、各地の街や道についてさまざまなことを知りました。
そのなかで疑問に思ったり、こうだったらいいのにと感じたこともありました。
そこで今回は、近畿の暮らしと道づくりについて、国土交通省近畿地方整備局長の谷口博昭さんにお伺いしました。


国土交通省近畿地方整備局・谷口博昭局長 新春インタビュー

 

昔は道が“庭”だった

稲野 私たちは普段、国道事務所などに入ったりする機会がありません。近畿地方整備局は、私たちとの接点をどのように設けていますか。

谷口 道は生活に密着しています。ヨーロッパの広場の文化に対して、日本は街道の文化。昭和30年代半ばまでは未舗装の道が多く、夏の日照りの時は水をまかないと家にほこりが入り、雨で水たまりが出来ると掃除をするのが当たり前でした。道は生活空間の一部として、庭のように手入れをしていたと思います。しかし、舗装されて交通量が増え、道から人々が離れていきました。国土交通省では、昨年から「未知普請(みちぶしん)」いう取り組みを展開し、道はみんなのもの、みんなで支えるものということを訴えています。「公」を支える「個」、すなわち国民の参加と責任を促すのが「未知普請」です。

稲野 具体的には、どんなことをしているのですか。

谷口 「明日の御堂筋」という作文コンクールで、御堂筋の思い出や御堂筋をよくするアイデアを募集。また昨年、実験的に、御堂筋の心斎橋で側道をオープンテラスにし、さらに自転車放置防止の呼びかけをボランティアと一緒に行いました。それらを集約し、2月には「御堂筋シンポジウム」を開催する予定です。

稲野 平成15年の「暮らしと道づくり」についてお聞かせください。

谷口 ハード面では、まだ不十分な高規格道路のネットワークを、採算性の確保をしつつ、整備することが重要です。小泉内閣の重点的施策のひとつである都市再生のため、環状道路の整備を重点的に行うとともに、街中の立体交差や駅前整備、電線の地中化を実施します。さらに、少子高齢化に対応した、バス停や道の駅のバリアフリー化、低騒音舗装や遮音壁による環境改善も進めます。ソフト施策では、「TDM」での交通量削減による交通渋滞の解消や、ETCの普及などIT技術を活用した交通マネジメントを実施します。

稲野 今年は、待ちに待った道があちこちで開通しますね。

谷口 「新道路整備五ヵ年計画」の最終年度で、近畿でも供用開始予定のプロジェクトがあり、春には、第二京阪道路・全延長28キロのうち、京都の巨椋池北インターから枚方北インター(国道307号)までの10.5キロが供用開始されます。また、京都縦貫自動車道が舞鶴大江インターから宮津天の橋立インターまでの11キロ、舞鶴自動車道が小浜西インターまで25キロ延びます。さらに、京滋バイパスは巨椋インターから名神高速大山崎ジャンクションまで8キロ延び、名神の渋滞緩和を目的としたバイパスが誕生します。



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