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清流で楽しむ、ダイナミックなアユ釣りと渓谷美。
秋本番の10月最初の放送は、兵庫県を流れる揖保川から。昨年4月に4町が合併して誕生した宍粟(しそう)市の旧山崎町エリアでは、自然の山々に囲まれた揖保川が心地いい音を立てながら奇麗な水を流し、釣り人を迎えています。この揖保川、以前はとても汚れていましたが、1994年以降、劇的に水質がよくなって近畿有数の清流となりました。97年には、40年ぶりに天然アユの遡上(そじょう)も確認されています。



  天然アユに、あくまでこだわる。     <揖保川の地図はこちら>
 


揖保川

 天然アユを増やすためにさまざまな取り組みを行っている、揖保川漁業協同組合にお邪魔しました。揖保川鮎種苗センターが行っている事業についてお話しいただいたのは、吉田忠弘さんです。
「種苗とは稚アユのことです。親アユから卵を採り、受精、ふ化させ、稚アユへと育てて放流するまでの事業を行っています。親アユには、種苗センターで人工ふ化したアユの中で一番よく成長したものを使いますが、それに、秋に下流で産卵された卵からふ化した稚アユが、海で育って遡上してきたところを捕獲し、親魚(しんぎょ)として交配させます」

 


地元幼稚園児たちのアユ放流体験
写真提供:揖保川漁協

 どんな手順でするのでしょう。
「9月下旬から10月の初めにかけて、雌のアユから卵を搾って、その上に雄の精子をかけて受精させます。かき混ぜる際には、卵を傷つけないように鳥の羽根を使い、それをシュロの皮で作ったブラシに付け、水槽に入れて、ふ化させていきます。アユの卵は、積算温度200℃でふ化しますから、17〜18℃ぐらいの水に12〜13日入れておくとふ化します。10月下旬ぐらいからふ化するように調整しています。それを、7cm、10gぐらいになるまで育て、4月中旬から放流を始めます。約24トン、180万〜200万匹ぐらいの稚アユを4回に分けて放流しますが、この量は単協では全国一だと思います」


天然アユの遡上
写真提供:揖保川漁協

 天然アユの再生のためには、どのようなことをしているのでしょう。
「琵琶湖で生まれたアユが下流で産卵し、ふ化した稚アユは、海では絶対育たないことが、近年、分かってきました。天然アユを増やすには、海産系の親魚から生まれた魚が必要です。4月に遡上してくるアユを捕まえ、池で大きくなるまで育て、10月の産卵期になったら放流し、それが自然産卵するような事業を行っています。放流量は約2トン。それに加え、海産アユが川で産卵しても、泥の影響や他の魚に食べられることで減るため、私とこで人工産卵した発眼卵を川に放流する事業も行なっております。発眼卵というのはふ化する2〜3日前の卵のことで、川に放流しても生き残れる率がぐっと高くなります」


揖保川のアユ釣りは
ダイナミックな引きが魅力

 成果はいかがでしょうか。
「かなり上がっていると思います。近畿圏のどの河川も天然遡上のアユが少ない今年、揖保川では平年並みの遡上が見られました。放流だけでは数に限りがありますが、自然遡上ならアユは限りなくやってきます。釣り人を喜ばせるためにも、自然産卵で生まれ、河口まで下り、大きくなって再び遡上、産卵する天然アユを復活させたいと思っております」

 他にも、いろいろ努力をされているようです。
「揖保川にはかなりの井堰(いせき)がありますが、その魚道がうまく機能するよう、国土交通省さんと一緒に事業をやっております。例えば、魚道に堆積(たいせき)している土砂などを取り除いたり、魚道までうまくアユがたどりつけるように土のうを積んだりしています」


過去最大のアユとおとりアユは
はく製のようにして保存されている

 揖保川の水質が劇的によくなり、アユの味も変わったようです。
「今は大変おいしくて、アユ独特のスイカのにおいがし、身は甘く、内蔵まで全部食べられるようになりました。揖保川は友釣り発祥地と言われ、昔から盛んです。30cm以上の大物が釣れますから、急流・激流のある男性的な地形の中で、掛けたアユとおとりが一緒に引くダイナミックな釣りが楽しめます。揖保川漁協では、過去最大、35.3cmの記録を破った方に、賞金10万円と入川料10年分を用意しています。今年9月3日に行った『大鮎バトル』では、29.3cmという大物が釣れました」