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出石川、オオサンショウウオ大量発見の謎。
兵庫県豊岡市出石町、城下町の面影残る市街地から南東方面に来ました。豊岡市但東町から流れて来た出石川の水は、中流域のここを通り、城下町を北へ抜けて円山川に注ぎます。この川は一昨年の台風で破堤するほどの水害に見舞われましたが、災害復旧改良事業での調査の際、大変な発見がありました。国の特別天然記念物であるオオサンショウウオが大量に見つかったのです。


  試される、自然に優しい川づくり。  <出石川の地図はこちら>
 

出石川 中川井堰
 出石川下流域にある「中川井堰(いせき)」は、今回のオオサンショウウオ大量発見に関係があるようです。「オオサンショウウオ保護対策検討委員会」委員長の栃本武良さんにお話を伺いました。栃本さんは姫路市立水族館の前館長で、日本ハンザキ研究所を開設した、オオサンショウウオ研究の第一人者です。
「オオサンショウウオは西日本にしかいません。いわば地球上のほんの一点にしかいないという生き物でありながら、世界最大の両生類であり、3千万年前から姿をほとんど変えていない“生きている化石”でもあります。学術上貴重であることから、天然記念物より1ランク上の特別天然記念物に指定され、保護されています」
 


オオサンショウウオの観察会
写真提供:豊岡土木事務所災害復興事業室

 ここで見つかったのでしょうか。
「兵庫県豊岡土木事務所が事前調査をしたら、一番下流の堰である中川井堰の下だけで100匹以上が見つかったので、保護のための対策を検討する委員会が作られました。現在、340匹ほど保護し、豊岡市日高町にあるニジマスの養殖場に避難してもらっています。まだまだ救出できていないオオサンショウウオがたくさんいるため、工事を担当している会社の人たちに、見つけたら確保して収容して池に運ぶようお願いしています」

 最初はどういう状況だったのでしょうか。
「調査員が昼間に20数匹見つけたと言うので、夜行性のものが昼間にそんな簡単に20何匹も見つかるのはおかしいと思い、現場を見せていただきました。オオサンショウウオは太陽光を嫌いますから、石の下や川岸の横穴、竹やぶの根の下などに隠れているんですが、ほとんど隠れ家のないコンクリートの堰の下にたくさんのオオサンショウウオが集まっていたため、石の下などにぎゅうぎゅう詰め状態で、しっぽやお腹が見えていました。


出石川リバーズプロジェクトでの活動
写真提供:豊岡土木事務所災害復興事業室
 
 どうしてそのようなことになったのでしょう。
原因については、台風の大水で川岸が崩れた際、穴に入っていたオオサンショウウオも一緒に流されてきたことが考えられます。いったん流されると、なかなか止ることができないので本流の円山川まで行った。そこで流れが緩くなったので、元の所に帰りたいと思って上がってきたら、コンクリートの堰があって止められた。仕方なくお互いの体の下などに潜りあって、非常にたくさんの個体が集まっていたのでしょう」


災害復旧改良工事が続く出石川

 保護したオオサンショウウオは、今後どうなるのでしょう。
「工事が2〜3年で終わると思いますが、基本的には捕まえた場所である井堰の辺りに戻そうと考えています。上流の生き物だからそちらに放すべきだという意見もありますが、上流のどこに放すのかという問題や、一挙に大量のオオサンショウウオを放すことによるそこでの環境の大混乱という問題があります。土木事務所が川の生き物に配慮した河川工事をし、井堰も上がれるようにするとしていますので、オオサンショウウオに埋め込んだマイクロチップを使って追跡調査をし、下流に放したものが上流で見つかれば、工事の評価もできるし、オオサンショウウオの本来の生息地を知ることも可能になります。これまでのこうした工事は、工事をして終わりでしたが、今回は長い期間にわたる追跡調査をして、対策工が役に立っているかどうか調べることに意義があります。対策工がすべてうまくいかなくても、次につなげるという意味で非常に大きな成果を上げられます」