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潮を招くカニ、人を招く緑の回廊。
南海和歌山市駅から歩いてくると、紀の川で視界が広がって開放的な気分になります。紀の川というと、アユ釣りが盛んな川というイメージがありますが、今、アユに限らず、魚全般が少なくなっているそうです。それだけ汚れてきているらしいのですが、まだ一部に残っている干潟には、貴重な生き物が生息しているようです。今回は、愛らしいカニのシオマネキなど、紀の川の生き物のお話からスタートします。


  干潟に踊る、シオマネキ。    <紀の川の地図はこちら>
 

紀の川

  和歌山市駅の近くにある「和歌山市立こども科学館」に来ました。プラネタリウムと展示室、実習教室があります。教育主事の土井浩さんにお話を伺いました。
「24年前にオープンし、和歌山市の科学教育の拠点として活動しようと、天体観察会や野外の自然観察会、実験教室、身近にある物を使って実験や工作教室を行う『ミニサイエンス』などを開催しています」


紀の川の干潟
写真提供:和歌山市立こども科学館
 土井さんは生物調査もされています。
「紀の川の魚やカニの仲間などを20年前から調べていますが、変わってきた点は、まず外来魚が増えてきたことです。カムルチーやタイワンドジョウ、ブラックバスやブルーギルなどが、ダムや堰(せき)の上の水たまりみたいな所にいるため、同じ場所に住む小魚類のタナゴやモロコの仲間が食べられ、非常に少なくなりました。二つ目は、川がかなり汚れてきていることです。上中下流で下水を紀の川に流してますんで。天然アユは今も上ってきますが、外来魚と汚れの影響で、多分、少なくなってきていると思われます」

  ポジティブな面も聞かせていただきました。
「紀の川は和歌山市という都市の真ん中を流れていますが、割といろんな所に自然が残っています。河口から紀の川大堰までの約8km区間は、海の水が入ってくる『汽水域』で潮の満ち引きがあり、干潮時には大きな干潟が現れます。これがまだたくさん残っていて、カニや貝、ゴカイの仲間などが非常に多くいます」

 


紀の川のシオマネキ
写真提供:和歌山市立こども科学館

 あるカニの近畿最大の生息地にもなっているそうです。
「シオマネキとハクセンシオマネキというカニで、私が10年ほど前に紀の川に生息していることを発見しました。左右どちらかのハサミが大きく、これを振り上げるような動作が潮を招いているように見えるため、昔の人がシオマネキと名付けたそうです。赤いのがシオマネキ、真っ白くて4分の1ぐらいの大きさのがハクセンシオマネキです。これらは環境省が定める絶滅危惧II類の希少なカニですが、紀の川河口には非常にたくさんいます。たくさんと言っても、近畿ではここ紀の川にシオマネキが雄雌合わせて40個体ぐらい、ハクセンシオマネキが5千〜1万個体ぐらいいるだけ。干潟に住むカニとか貝の仲間は全部で95種類で、危険種や絶滅危惧種に指定されているのは全部で16種類です」


紀の川のハクセンシオマネキ
写真提供:和歌山市立こども科学館

 科学館のすぐ前のお堀が気になります。
「人間が掘った昔の堀で、和歌山市では内川と呼ばれています。岩出町の方から水を取り、農業用水に使われ、和歌山市内に入ると内川となる。そして、一方は紀の川と合流して海へ流れていき、もう一方は和歌川という名で和歌浦へと流れています。和歌山一の繁華街を流れるものすごく汚いイメージがありますが、最近は泥を取ったり、海水を強制的に流すようにしたりして、割と奇麗になり、魚がたくさん泳いでいるのを見ます。カニの仲間もいて、雨が降るとここまで訪ねてくることがあります」


  和歌山市立こども科学館
 
 ■開館時間/9:30〜16:30
 ■休館日/月曜日(祝日の場合は翌日)、
   子供の日と文化の日を除く祝日、年末年始
 ■入館料/大人300 円、小中学生150 円
   *プラネタリウムは別に
    大人300 円、小中学生150 円
   *土曜日午前中は小中学生のみどちらも無料
 ■TEL /073-432-0002