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一緒に進める、「川ガキ」が似合う石川の川づくり。
金剛葛城山系を水源とする石川は、大和川水系では水質がいい方で、見た目にも透き通っています。石川には石川河川公園が整備されていますが、そのうち富田林市の河南橋から南阪奈道路までの1・6kmの中流域区間は「自然ゾーン」と呼ばれていて、今、行政と住民、市民運動団体などが一緒になり、整備や管理運営のあり方を検討しています。今回はこの「自然ゾーン」を通して、石川のことを知っていきます。


  対立から話し合いの場に。    <石川の地図はこちら>
 


河南橋から見る「自然ゾーン」

 最初に、大阪府立大学大学院教授の上甫木(かみほぎ)昭春さんを訪ねました。生命環境科学・緑地計画がご専門で、「石川河川公園『自然ゾーン』計画・運営協議会」会長もお務めです。
「この協議会は、石川河川公園『自然ゾーン』の整備と使い方を考える大阪府の協議会で、学識者や植物の専門家、市民運動団体や自治会、地元小中学校の校長先生など、多様なメンバーが加わっています。地域ぐるみで整備と使い方を話し合って合意形成を図るプラットホームと言えます」

 


自然ゾーン

 どうして、行政と府民が話し合うことになったのでしょう。
「10年ほど前、市民団体と行政が激しく対立していました。行政側は主にレクリエーション型の整備を考えていたのに対して、市民団体側は昔ながらの自然環境を残した川づくりを訴えていました。90年代に環境が世界的な問題として認識され始めたことを背景に、大阪府側が対応を始め、話し合うようになりました。これまでの議論として、例えば、公園に必要な管理用道路の問題がありました。道路を河川敷に造って車両が通ると自然環境や生き物に影響を与えるため、市民団体側は管理用道路を造るにしても自然に負荷がかからないようにと主張したのに対し、管理者側はスムーズな管理のために一筆書きで通れるように設置したいと考え、葛藤が起きました。結果的には、一筆書きはやめて、部分的に行き止まりや自転車、徒歩で管理する計画となりました」



流れを緩やかにする「隠し護岸」
(自然ゾーン)

 完成した自然ゾーンは、やはり自然のままの川の姿になるのでしょうか。
「自然ゾーンは川幅が広くて、自然的な環境特性をたくさん保有していますから、『川に川をつくらせる』という基本理念で、昔ながらの川を保全することが最良かと思います。自然の状態で保全することで、子供たちも多様な遊びができ、環境教育の場にもなることを目指すのが大切かなという気がします。子供たちの川での遊びが、昔と今でどう変わったのかという調査をしたところ、奈良県平群町を流れる竜田川で調べた事例では、70代の人は投網やV字のわなで魚を取るなど高度な遊びをし、取った魚を食用にしていました。少し若い50代や60代になると、戦争があったためか縦社会で遊ぶ機会がたぶん少なくなって、高度な遊びが継承されなくなった。取った魚も食生活が良くなったせいか食べない。それが40代や50代になると、プールが出来て安全に遊べるようになった上、『川辺は危険だから遊ばないように』と社会的規範が変わってきたため、あまり水の中に入らず、釣りなどの形で遊びが単純化した。さらに、今の10代や20代は、造られた遊び場にすらなかなか行かなくなってきています。人が近づきにくい三面張りの川の構造を改善することも大事ですが、水辺は子供たちに野性の感覚を養ってもらう格好の場所だという、我々の意識改革も必要です」