ホーム パーソナリティ紹介 これまでの放送-放送日から検索 これまでの放送-地図から検索 番組あてメール ラジオ大阪

熊野川に流れる水を、大切にする人々。
大阪から遠出をし、和歌山県新宮市に来ました。夏休みスペシャルとして、2週連続で熊野川に焦点を当てます。熊野川は、奈良県天川村の山上ケ岳(さんじょうがたけ)と大普賢岳(だいふげんだけ)の間に源があり、大小の支流と合流しながら熊野灘に注いでいます。流域の基幹産業である林業や紙パルプ業を支えてきましたが、日本の古来からの信仰とも深くかかわっています。


   本当に水に浮いている不思議な島。         <浮島の森の地図はこちら>
 


浮島の森
写真提供:新宮高校・瀧野秀二さん

 JR新宮駅から西へ徒歩約5分、「浮島(うきしま)の森」に来ました。沼の真ん中に草木が生い茂った島が浮いています。桟橋がかかり、遊歩道がありますが、驚くのは足元を揺らすと島全体が揺れることです。和歌山県立新宮高等学校の瀧野秀二(たきのしゅうじ)先生にお伺いしました。
「正式には『新宮藺沢(いのさわ)浮島植物群落』と言い、東西約80m、南北約50m、面積5000uという比較的大きな浮島です。ボーリング調査で、下に水の層があり実際に浮いていることが分かりました。泥炭といって、上の方は落ち葉が積もり重なったもの、下の方は過去に積もった植物遺体が腐らずに残った数メートルの層です。放射性炭素を使った調査で、1700年ごろに出来たことが実証されています」


テツホシダ
 瀧野先生は生物(植物)の先生で、新宮藺沢浮島植物群落調査委員会委員もされています。この浮島の森は国の天然記念物。どういう面で貴重なのでしょう。
「一つは、市街地に15mを超えるような樹木の生えた島、それも浮いた島がある点です。日本では他に例を見ません。植生の面では、ほとんど南方系植物が占めるなか、高野山やそれ以北に分布するシダ植物のヤマドリゼンマイシダや、高い山の湿原を中心に分布するオオミズゴケなどが生息し、北方と南方の植物が混在しています。珍しいのは、亜熱帯性でこの新宮市がほぼ北限とされているテツホシダが、冷温帯性のヤマドリゼンマイと同じ場所に生えていることです。泥炭はこの付近のような高い気温では分解されてしまいますから、非常に低温の地下水が十分に供給されていたのでしょう。今は周りの宅地開発で、ほとんどわき水はない状態ですが」



井戸水が注がれる様子
 島の南側から細い浮島川が出ていますが、奇麗な水とは言えません。
「浮島川は市田川に合流し、最終的には熊野川とつながっています。生活雑排水が流れ込み、かなり汚れた状態です。1990年ごろ、このままでは陸地化が進んで本来の浮島でなくなると、新宮市が調査委員会を設置しました。大事なのは水の供給であり、地下水がなくなった分、どこからか水をということになり、近所の井戸水を毎秒約0.5リットル、午前と午後の2時間ずついただいて、なんとか水環境を保っている状態です。2000年になると、国土交通省が熊野川本流から毎秒1トンの水を市田川に入れて浄化することになりましたが、そのうちの0.7トンをここのすぐ下の浮島川に流すことになったので、お願いして浮島にも0.03トンを入れていただきました。熊野川の水は非常に綺麗で、現在の井戸水の60倍の水をいただければ、もっと環境がよくなります」



    浮島の森
 ■入場料/12歳以上100 円、
         6歳以上50円
 ■開場時間/9:00〜17:00
         *12月〜2月は16:00 まで
 ■TEL /0735-21-0474