
<猪名川の地図はこちら>
嫌われても、 声を掛ける勇気。
神津大橋はモダンな斜張橋だ。ワイヤーが空をバックに美しく映える。
今日の猪名川の水量は少ないようだが、
澄んだ流れの中に銀色の光が見える。
魚のようだ。ここで、1年間の河川愛護モニターを
終えたばかりの井上博文さんに伺った。
河川愛護モニターは、河川を見て回り、川の様子や河川敷の使い方などの
情報を管理者に伝える仕事だ。去年7月に始めた動機はなんだろう。
「この川は、昔、漁業組合があったんですが、
水が悪くなって魚が住まなくなり解散してしまいました。
ところが、下水道や浄化施設が普及し、
家庭排水などを流さなくなって水がきれいになり、
魚も戻ってくると、私たち魚の愛好家が集まって、
20年前に『猪名川同好会』を作ったんです。そして、春には、
ヘラブナやコイの稚魚を放流するようになりました。
河川愛護モニターは、この川を少しでもきれいに
できればという思いがきっかけです」
現在の猪名川はどうなんだろう。
「流れが変わりました。猪名川と藻川の分岐点はもっと深かったんです。
今は水量も少なく浅くなってしまったので、魚が釣れる場所が、
もう何カ所もないんです」
魚が戻って来ても、釣れる場所は限られる。
ヘラブナはどの辺で釣るのだろう。
「駄六川と猪名川が合流する地点です。今は中洲になっていますが、
20年前はなかったんです。水深も竿2本分以上あったけど、
今は1mないと思います。ちょうどその合流地点で、
春にはコイやフナの稚魚を放流しよったんです。非常に残念ですが、
放流は今年でなくなりました。でも、長い間放流してきた魚が、
どこかの深みで棲息していると思います。まだまだ釣りができる川です」
河川愛護モニターとして関わって、川の見方が変わったのだろうか。
「橋けたの落書きやごみ捨て、
犬の糞をそのままにする人が気になりますね。
魚を見るというより、河川敷全体を
見るようになりました。景色ばかり見ています」
次世代に伝えていきたい思いは。
「自然や環境を少しでも美しくしていこうという気持ちです。
落書きやごみを捨てる行為に、今までは『マナーが悪いな』
で済ませていましたが、このごろは腹が立ちますね。
目の前で捨てたら、嫌われても、絶対、声を掛けます」
勇気あるひとことが必要だ。
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