6月。アユが解禁になった。今回は一足早く、5月26日に解禁となった紀の川で、
アユ釣りを楽しむ人たちの姿を追った。訪れたのは和歌山県桃山町とその周辺。
解禁日の日曜日、広い紀の川には、さっそく長いさおが立ったり倒れたりしている。


        紀の川(桃山町)の地図はこちら

紀の川は、紀伊半島の屋根、大台ヶ原から北に流れ、
奈良県上市で西に流れを変えて、紀伊水道に注ぐ。
長さ136キロ、流域面積1750平方メートル。
日本で一番雨の多い大台ヶ原を源流とし、
洪水が人々を苦しめたこともある。
そのため、古くから治水や土木技術が発達。
紀州流土木技術は、江戸時代に吉宗が江戸にも持ち込んだという。


“天然遡上”のアユ、紀の川の自然の恵み。


紀ノ川漁業協同組合監視員・和田学さんのお話

河原に下りた。このあたりは桃源郷として知られるアウトドアのメッカ。
今日からは釣り人でいっぱいだ。
紀ノ川漁業協同組合の監視員、和田学さんに伺った。
監視員の仕事は、お金を払わずに入ってくる人の監視とか。
 「それが第一ですが、各地の釣果を集めて、
 どこでどのくらいの大きさのアユが何匹か掛かってるかなどの情報を 、
 毎日、テレホンサービスで提供するのも仕事です」
今年は梅も早い。アユも多いんだろうか。
 「紀の川には“天然遡上”の稚アユがいるんですが、
 今年は、ここ何年来ないぐらい上りました。
 おまけに春先に高温が続き、早期の3月10日前後から
 遡上が始まっています。順調な滑り出しです。
 嬉しい悲鳴をあげる年になってほしいですね」

釣り場マップに「友」、そして「段」と書かれたところがある。
「友」は友釣り、「段」はなんだろう。
 「『段引き』という釣り方で、引っかけ釣りのこと。
 『コロガシ』とも言います。地方によって呼び方が違います。
 おもりの下に5本から10本くらい針を付けて、
 流れに乗せて流して引っ掛けて釣る方法です。
 数を釣るなら段引きが上ですが、友釣りは大きな魚が掛かり、
 引きがダイナミック。魚との勝負です。
 段引きは、流れを読む。流れにも深いところ、浅いところがあります。
 少し流してはおもりを変える熱心な方もいます」

紀の川の稚アユは、どこから持って来るのだろう。
 「天然遡上もありますが、増殖研究センターで、 海産稚アユ、
 人工産稚アユを放流サイズまで育てて放流しまています。
 アユには人工産、海産、湖産があって、
 人工産は卵から孵化させて一生涯養殖場で育てるアユです。
 アユもサケと同様、秋に河口に近い下流部で産卵し、
 孵化した稚魚が海へ出て春先に上ってくるという
 ライフサイクルを繰り返します。
 その稚魚が海に出で群れている場所があり、
 特別採捕という形で指定された量だけ取り、
 放流しますが、これが海産アユ。
 湖産アユは、琵琶湖で取れる稚アユのこと。
 紀の川は、海産と人工産です」
アユと海の関係はあまり知られていない。アユは川魚と思い込みがちだ。
 「紀の川はじめ和歌山県南部の川には、すべて天然遡上がいます。
 それだけ自然が残っているんです」
天然遡上のアユはお宝。紀の川の豊かさを象徴している。

海産と人工産は顔で見分けがつくのだろうか。
 「見分けるのは難しいと思いますが、かなり大きな人工産を放流したので、
 今年に限って、極端に大きいのは人工産だと思っていただけたら。
 現在までの放流量は、海産と人工産あわせて7500キログラム。
 梅雨の水の出方を見て、12トンまで追加放流する予定で確保しています。
 味は、やはり天然物がおいしいと思います。その川の香りがします。
 コケを食んでいますので風味があります」
アユ釣りと他の釣りとの決定的な違いはなんだろう。
「鮎は1年限りの魚で、釣れる時期が限定されています。
集中しなければいけない。熱心というか、
熱心を通り越している方もいますね」

アユは音に敏感。ゆっくりと川に入り、少しずつ動くアユの釣り人は、
川の美しさとも相まって、一幅の絵のように映る。

 

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紀の川のアユ解禁


紀ノ川漁業協同組合監視員・和田学さん


アユ釣りには友釣りと段釣りがある


一幅の絵のような釣り人


ラジオ大阪