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「野洲川水防警報第3号出動。 台風第0号のため野洲川の野洲地点の水位は
本日11日午前9時現在、2メートル50センチで、 今までの上流域の平均雨量はおよそ300ミリ…」
5月は水防月間。 水防演習が行われている滋賀県野洲町の野洲川に来た。
「五月晴れ」という言葉があるが、「五月雨」もある。 5月は意外に雨の多い季節。
そして、6月は梅雨前線による集中豪雨、 夏の後半になれば台風だ。そんな水害の季節に備えて、
毎年各地で水防演習が行われる。 野洲町で演習に参加している方に、いろいろと伺ってみた。

野洲川の水防演習会場の地図はこちら

第一章

水防団が走り、ヘリコプターが旋回。
炊き出しも手ぎわよく。


野洲川は、かつて「近江太郎」と呼ばれた暴れ川。
昭和54年の改修以後、大きな被害はないそうだが、
水害の季節に備え、いま水防演習が始まった。
近江富士大橋下流の河川敷。
テントが並び、土嚢(どのう)づくり用の土砂の小山が
いくつも造られている。水防団が走る。パワーショベル、
クレーン、 撮影用の気球も浮かんでいる。
この水防演習は、近畿で毎年持ち回りで行われる。
近畿では最大規模で、今回の参加者は44団体約900人、
水防団員を加えると1500人にのぼる。
野洲川では12年ぶりだ。
「市民水防活動とITによる被害軽減を目指して」を
テーマに、水防工法の訓練のほか、企業やボランティアの
水防活動体験、地元自治会の避難訓練、
さらにインターネットやiモードを使った防災情報の
入手方法の紹介なども行われる。

水防団が忙しそうに働く。
丸太をナタで鉛筆のように削る「杭ごしらえ」。
水防工法で使う杭だ。「竹とげ」という札が立てられ、
青竹が何本も積み重ねられている。これも杭の役目を果たす。
土手の下、川側では土砂の小山が平たくなっていく。
水防団が土砂をスコップで袋に詰め込み土嚢にし、
手押し車で各町村の札のところへ持っていき積み上げている。
パトカー、そしてヘリコプターが旋回し、
訓練も緊迫の度を高めてきた。発煙筒から煙が一斉に立ち昇り、
危険地域を指定する。水防団が水防工法を展開する。
そばで「シート張り工」が行われている。
丸太の杭を打ち込んだあと、シートを広げて川側の
土手の法面(のりめん)を覆い、堤防が崩れるのを防ぐ。
向こうでは別の水防団が「木流し工」をする。
枝葉がよく茂った生木に土嚢を結び付け、水流が速いところに
投げ込んで流れを弱めて堤防を守るのだ。
各地の水防団が、まるで競うかのように作業が進められていく。

けたたましい音を立てて、ヘリコプターが降りてきた。
遭難者を救助するために隊員が降りてくるようだ。
ホバリングした機体から人が吊り下げられ降りてきた。
2人が抱きかかえ合い、川面へとゆっくり降りてくる。
いま川面に到着した。隊員が遭難者を担架に乗せた状態で抱え、
ヘリから吊るされた紐で上げられていく。
そして、遭難者を中へ入れる。参加者全員がヘリコプターをじっと見守る。

炊き出しをしている女性たちのテントに来た。
守山市赤十字奉仕団、野洲町赤十字奉仕団だ。
あねさんかぶりに白いエプロン。おにぎりを握っているが、
手慣れたもので、ほとんど握り終わってケースに詰めている。
 「みなさんスムーズ。慣れていらっしゃるもので、
 きちっとなさいました」
 「おにぎりを握りながら見てましけど、
 (今日の訓練は)大変だったと思います」
 「顔見知りが寄っていますので、準備万端、上手に運びました」
作ったのは500個250人分だ。
 「朝からお米を浸けておいて、炊きあがるのに半時間ほど。
 15分ほどうまかしといて、それからおにぎりにしました。
 非常事の炊き出しで一番大事なことはチームワークです。
 それと、水がなくては何もできません」

避難所のテントに来た。
「市三宅」と書かれた法被を着た若い女性がたくさんいる。
 「市三宅の女性消防団として参加しています」
女性消防団とは珍しい。
 「野洲町では各町単位で設置されていると思います。
 (今日の訓練については)日頃からかなり訓練されて
 いるんだなということも分かりましたし、女性消防団
 として少しでもお手伝いさせていただきたいなとも思いました」

農作業の途中で来たというお母さん。
 「昔はもうひどい水が流れてきてね。
 堤防から手が洗えるぐらい水がきましてね」
50年ほど前に体験した水害の様子を聞かせてくれた。
 「天井川ですからね。昔は雨が降ったら、もう水がようけいきてね。
 ガンガンと早い鐘を突かはんのです。ノコギリやらカマやら持って、
 堤防の盛りに来ましたんよ。水が唸ってましたわ。
 飼畜場がありまして、水がようけい来たときは、
 牛が浮いておりましたわ。床(とこ)まで上げたことあるわな。
 堰の口が切れて、稲穂が沈みましたで。水がいっぱいきて、
 穂がみな浮いてしまった」

みんな水害の恐ろしさを体験し、今日、訓練に来ている。

 

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「近江太郎」の異名を持つ野洲川

テント張り工


ヘリコプターも登場


市三宅の女性消防団

昔の水害の様子を語る女性


ラジオ大阪