川、そして増水とも共存する。

次に、大阪で行われた分科会「水の自由化・商品化」
に出席した、バングラデシュのNGO「UST」の
ハミドル・ハクさんに伺った。
まずは、インド半島の東の付け根、ガンジス川の
デルタ地帯にあるバングラデシュの気候から。
 「六つの季節がありますが、中心はモンスーンと乾季、
 冬です。モンスーンの時期は、最も多く雨が降るので
 水が豊かになり、田んぼを耕したりするとても楽しい
 時期です。冬は野菜を作りますが、大体は自家消費
 します。乾季は水がなくて困ります。
 政府のプロジェクトで造った灌漑施設で水が手に入る
 地域は一部です。伐採によって深い森が減っていますが、
 全体的には緑にあふれた、きれいで素晴らしい国です」

この緑豊かな国の水に、今、ヒ素の問題があるようだ。
 「人口1億3千万人の80%が、村に暮らしています。
 村では、パイプを伝って地中から汲み出す井戸で
 飲み水を得ていますが、一部が地質的な理由で
 ヒ素に汚染されています。ただ、すべて汚染され
 ているわけでなく、全体的にはみんなが飲めるだけの
 水はあります。問題のある地域の人たちは、自分たちで、
 日本に昔からあるような幅の広い深い井戸を造った
 りして、安全な水を手に入れようとしています。
 水道は都市だけで、村にはほとんど通っていません」

「水の自由化・商品化」については、
どんな問題が起きているのだろう。
 「バングラデシュでは、安全な水が村に住むほぼ
 100%の人に与えられるような仕組みが、政府、
 NGO、ユニセフの力で1998年までに出来ました。
 都市の一部で水質が確保できない、村によってヒ素の
 問題がある、三角州だとなかなか井戸ができない、
 丘陵地帯での水の確保が難しいなどの問題はある
 ものの、全体的には水問題は解決済。だからこそ、
 なぜ今、民営化を導入するのかという疑問があります」

ハクさんが最も訴えたいことを伺った。
 「世界水フォーラムに登場して意志決定や政策決定
 をする人は、全部、先進国の政府や世界銀行など
 の人たちです。世界の水関係の企業がついていて、
 利益を狙った世界水ビジョンが出されている。
 また、第三世界の政府が、外国の援助機関の圧力を
 受けて非常にきつい立場にあり、なかなか自分たちの
 意志を発揮できない。さらに、NGOがある程度
 参加できるようになったものの、政府や先進国の
 企業に対する批判が世界水フォーラムの決定文書に
 反映されていない。私たちは、もっと強く意見を
 言わなければならないと思っています」

最後に、バングラデシュに多い洪水と人々との
共存ぶりにいて伺った。
 「私たちにとって川は命、川で魚を捕まえて暮らし
 ています。栄養の40%は川の魚から取っています。
 モンスーンの時期の増水は当たり前で、
 そういう時には、川を伝って他の村に行ったり、
 小さなボートやバナナの木で造った筏(いかだ)
 で移動したりします。また、このときに水をためて、
 乾季に使うこともします。ただ、災害になると、
 みんなで力をあわせて助け合います。政府やNGO、
 場合によっては外国の援助機関もやってきて、
 被災者を救援します」


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バングラデシュのハミドル・ハクさん



会場へのゲート



会場でのパフォーマンス


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