21世紀最大の課題である水問題に取り組む「第3回世界水フォーラム」は、
3月16日から8日間にわたって行われた。180の国から約1万人が参加し、
38のテーマで約350の分科会が開催され、水問題が討議された。
今回は、このフォーラム参加のために来日した2人に伺った。

 

 

ビクトリア湖で、起きている問題

まずは、アフリカ東海岸・タンザニアのベネディクト・
チャチャ・ピーターさん。ムソマ地区の
NGO「ヘルプ財団」の代表だ。
きれいなマサイ族の服を着ている。

タンザニアは、面積が西ヨーロッパの半分ぐらい、
カリフォルニアの2倍もある。
 「タンザニアで有名なものに、標高5800mの
 キリマンジャロがあります。また、世界で2番目に
 大きい淡水湖のビクトリア湖や、セレンゲティ国立
 公園など、非常に美しいところがあります」

そのビクトリア湖で、今、いろいろな問題が起きているそうだ。
 「ひとつは、富栄養化問題です。人間のいろいろな
 活動により、種々の養分が水の中に流れ込み、
 富栄養化が進んで汚染が広がっています。
 それに関連して、水草が非常に繁殖し、いろんな
 問題を巻き起こしています。しかも、湖周辺の人口
 がどんどん増え、鉱業、漁業、農業などの活動が、
 さらなる汚染をもたらしています」

チャチャさんの活動について伺った。
 「汚染問題は、この地域のさまざまな問題と絡み
 あって生じています。例えば、ホテイアオイ(水草)
 問題は、水の汚染と関係していますが、背景には貧困や
 難民が持ってくる武器の問題があります。
 こういう問題の全体的解決を目指し、私たちはマナという
 地域で総合開発計画を作って活動しています。
 村人たちの意識改善や発展に貢献するような活動を、
 少しずつやっている段階です。村人たちには、
 パンフレットや横断幕などで意識啓発活動をしています。
 マスコミも使いたいのですが、資金面が問題です。
 検討中のコミュニティラジオ開局も、
 資金のめどが立っていません」

国は、何か手段を講じているのだろうか。
 「残念ながら、こういう地域社会の問題は、
 政府の優先順位がそれほど高くありません。
 政府が考えるのはやはり経済成長なので、
 私たちNGOなどが、地域の人たちのニーズを
 政府に伝えていかなければいけない。また、
 ビクトリア湖の問題に取り組む地域の団体の
 連絡組織『ビクトリア湖のための東アフリカ
 地域団体協議会』を作って、三つの国に事務所を
 置いています。私はそのタンザニア事務所の事務局長です」

最後に、第3回世界水フォーラムへの期待を伺った。
 「まず、関係しているすべての人が一緒に取り組ん
 でいくべきだと主張します。政府と市民団体が、
 手を取って活動すべきです。もう一つとても重要な
 ことは、『水は人権である』ということです。
 例えば、今、水の民営化が進められようとしていますが、
 西側の大企業が利益を得ようと活動する一方、
 貧しい人たちは水を手に入れられず、下手をすると
 死んでしまうこともあり得ます。この問題は、
 とても重要で深刻な影響がありますから、
 慎重にやっていかなくてはと考えております」


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タンザニアのベネディクト・チャチャ・ピーターさん


第3回世界水フォーラム主会場


途上国の人々にとって水はまさに人権
議論にも熱が入る


ラジオ大阪