ダムの是非。
ダムの是非の問題に移り、
ダムに関する提言内容の説明が今本委員からあった。
「『ダムは自然環境に及ぼす影響が大きいことなどのため、
原則として建設しないものとし、考えうるすべての実行可能な
代替案の検討のもとで、ダム以外に実行可能で有効な方法が
ないということが客観的に認められ、かつ住民団体・地域組織
などを含む住民の社会的合意が得られた場合に限り建設する
ものとする』。これを原則として提案しています」
「原則的」と「住民の社会的合意」に関して、多くの質問が寄せられた。
「猪名川では余野川ダムが工事中ですが、それでも建設を中止できると
判断できるのか。原則という言葉をどう捕らえたらいいのか」
これに対して今本委員。
「ダムには自然環境への影響など負の面もありますが、
必要な場合もある。しかし現在、新しい理念で対応出来る方法を
提案していて、それにより造らないで済むものは造らないという
ことです。ただ原則は原則なので、造る余地は残されます。
逆に工事中でも、別の方法があれば中止すべきです」
建設の中止で地元は混乱するという、こんな意見も寄せられた。
「社会的合意が得られた場合に限りということですが、
合意なんてあり得ません。奈良の南部に住み、毎年取水制限が
あります。紀の川〜奈良県の吉野川は、下流の和歌山県が
優先的に水を取ります。何か起こると、下流は100%取れて、
奈良県の取水量が減らされます。そういう“慣行水利権”です。
しかし、大滝ダムが完成すると、“法定水利権”になって、
対等に取水出来ます。流域全体ではやめるという話になっても、
地域には苦労が残ります」
三田村委員が答えた。
「完全合意はあり得ません。比較的考え方を共有出来る
この委員会でも、100%合意は得られません。
しかし、総意はなくても信頼関係の中での合意はあります。
相手の立場になって許す心。まさに信頼と安心から
培っていかないと、日本の将来はもたない」
川のダイナミズム。
提言では、川や湖のダイナミズムを許容する河川整備を目指す
という項目もある。川の流れを人の手でがんじがらめにせず、
自然に任せ、ある程度の増水は放っておくというものだ。
河川敷のグラウンドやゴルフ場が浸水してもやむを得ない
ということになり、当然これには疑問が出たが、
それに対して生物の専門家から説明があった。
紀平肇委員と有馬忠雄委員だ。
「高水敷を造る前の河川は、増水時、通常水位よりも
水がかなり増えました。水辺移行帯と言い、緩傾斜の部分で
1年間に3日しか 水が来ないような場所があって、
その一つである樟葉のゴルフ場のそばに、
ビワコオオナマズが産卵に来た事実が 分かりました。
そんな魚類の重要な産卵場所になるような 所を、
もう一度取り戻したい(紀平)」
「洪水注意報が出ても、水が高水敷の肩あたり以上は、
絶対に上がらなくなっている。水位・水量っていうような
川の大事な機能が失われ、淀川の自然環境が変わってしまった。
我々が子供のころにあった草むらに戻すには、
水を上げないといけないと思う(有馬)」
最後に、どう具体化していくのかの質問があり、
芦田和男委員長が答えた。
「国土交通省は、真摯(しんし)に受け止め、
提言に基づいた整備計画を作っています。
原案を委員会で審議して、さらに精度を高めるよう努力し、
フォローするシステムも考えています」
予定時刻を30分も超える、熱のこもったミーティングとなった。
●淀川水系流域委員会ホームページ

提言は、河川整備への参加など住民にも多くを求めている。
持続可能な社会の河川のあり方について、将来を見据えた格調高い提言だ。
提言を受けた国土交通省近畿地方整備局は、具体的な河川整備計画の
原案を作成する。河川に大きな関心を払って、見ていきたい。
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