新しい川づくりの方向を示す、淀川水系流域委員会。
河川整備にあたって学識経験者や住民の意見を反映するため、
近畿では五つの水系で流域委員会、一つの水系で準備委員会が設置されたが、
そのうち淀川水系流域委員会は、一昨年2月、53人の委員による三つの部会で発足した。
行政が極力タッチせずに、原則公開で行われ、資料もインターネットで公開された。
提言を委員自らが書き上げた点も、従来とは大きく違う。今回、市民に対して直接説明を行った。

 

 

まず環境ありき。    
 

1月18日、京都・四条烏丸北のカラスマプラザ21で
開催された淀川水系流域委員会の提言説明会は、
淀川部会部会長の寺田武彦委員の司会で始まった。

まずは、環境をメインに新しい河川整備の理念を説く、
京都大学名誉教授の今本博健委員の発言。
 「河川の機能は、環境、治水、利水、利用の四つです。
 川から水を引く『利水』と、川の水や川自体を利用する
 『利用』とに分けています。治水は、洪水対策のこと。
 環境は、30〜40年ほど前、それまでほとんどが清流だった
 日本の川の環境汚染が問題になり、重視されるようになってきました。
 従来は四つを統合的に扱う考え方でしたが、当委員会では、
 まず環境をベースに、治水、利水、利用を考えています」

この後、滋賀県立大学教授の三田村緒佐武委員から住民参加の
説明があり、質疑応答へ。54件の質問のうち、
10件が環境についてだった。 提言では、現在もてはやされて
いる多自然型川づくりからの 脱却を上げたが、この点と
河川環境再自然化計画との違いについての質問があった。
 「河川環境再自然化計画とどう違うのか、何を脱却して、
 何を追加するのか」
市民活動「川の会・名張」の川上聰委員が答えた。
 「日本の多自然型川づくりは特定区間の自然回復を図るもので、
 川や地域の個性、工事事務所の考え方や技術、担当者の
 認識により、さまざまな川づくりが展開されています。
 優れたものもありますが、不多自然型川づくりとでも
 呼べるものも多い。流域全体を見渡した川の自然回復を
 考えるべきで、それが自然再生化です」
これまでの多自然型川づくりよりも、一段上を目指そうとうことだ。

琵琶湖博物館館長の川那部浩哉委員から補足があった。
 「以前、『どじょうか人間か』という質問がありました。
 しかし、人間が何世代も生き続けることは、自然環境の
 保全なくしては不可能です。生態系とは、人間を含めた
 生物生存のための自然環境そのものです」




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提言説明会会場


左から今本、三田村、川那部の各委員


活発な議論が行われた


ラジオ大阪