鴨川、丸太町橋近く。うっすら雪をかぶった大文字山と比叡山が見える。
比叡山はまるで水墨画だ。ゆりかもめが、上流の堰の上に一列に並んで羽を休めている。
今年最初の近畿川ものがたりは、京都からお送りする。

 

 

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12億人が安全な水に飢える。

今年3月、「第3回世界水フォーラム」が、
京都・大阪・滋賀の琵琶湖・淀川流域で開催される。
登録すれば誰でも参加できる上、参加者が作りだし、
具体的な行動に結びつく、日本ではあまりなかった
新しい形の集会となる。世界から募った分科会は、
33テーマで249会。大きな国際会議だ。

今回は、前回第2回世界水フォーラムで
「将来の水指導者14人」のうちの1人に選ばれた、
総合地球環境学研究所助教授の沖大幹(たいかん)さんに、
水の問題をお伺いした。

まずは、研究所の設立目的から。
 「日本でも、10年ほど前から地球環境問題への認識が高まり、
 当時の文部省に『地球環境学』の研究機関を作ろうと、
 2001年春に設立されました。専任の研究者30人以上と、
 全国の大学や研究機関の研究者とが緊密に連携し、
 地球環境学とはどういものか、どうやって課題を
 解決していくかを研究しています。
 僕の専門は水で、地球上のどこにどれだけの水があり、
 どれだけ使えるのか。逆に水がどれだけ必要で、
 どうすれば確保出来るのかを研究しています」

日本には水があり、汚染もそれほどでもないが、
世界ではかなりいろいろな水問題があるようだ。
 「日本は経済的発展で、明治以来、ダムや堤防、堰を造り、
 農業用水や生活用水の取水施設を整備してきたので、
 水資源にはあまり困りません。しかし、水を有効に使える
 施設を造れていない貧しい国々では、現在、12億人ぐらい、
 世界の5人に1人が安全な水にアクセス出来ないといわれています。
 水たまりの水や、あまりきれいでない沼や池の水を飲んだり
 使ったりするため、毎年、水に関連する病気で
 300万から400万人が亡くなっているといわれています。
 彼らが安全な水を確保出来る状態が、今、求められています。
 国連でも、昨年のヨハネスブルグの環境サミットでも、
 安全な水にアクセス出来ない人口を半分にすることが宣言されています。
 それに、水というと飲み水が思い浮かびますが、
 実は大部分が農業用水に使われています。
 現在、全世界の灌漑農地で食糧生産量の40%が作られていると
 推計されています。飢えている人々も多いけれど、
 トータルでなんとか間に合っていますが、今後人口が増えて
 1人あたりの水が減ると、灌漑用水が不足し、『のど乾いた』ではなく、
 『お腹すいた』になることが懸念されます」

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