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熊川宿でくず料理ざんまい。

熊川宿の真ん中あたりにある月屋さんというお店で、
くず料理を食べさせていただいた。
古い家並みが続いている所だが、月屋さんも、
白壁の200年前の土蔵を改造したお店だ。
並んだ料理は、まず珍しい熊川のくずのお刺し身。
まるで、てっさのようにきれいに薄づくりされ、
下のお皿の九谷焼の柄が浮き上がって、見ているだけでもきれい。
味も、なんともおつだった。
一方、熱々のくずきりのお鍋には、お野菜や卵などが入っていて、
くずは細長くて透明な麺状。
こしがあって、お刺し身とは全然違う食感だった。



水、でんぷん、人、の三拍子。


次に、くずと並んで有名なこんにゃくについて、
国道303号沿いに店と工場がある岩本義雄さんに伺った。
 「子供のころから先代を手伝ってきて、
 昭和60年に仲間でやるようになり、現在に至っています」

こんにゃくが並ぶ店、ドアの奥が工場。
山積みになっているこんにゃく芋は、小型のカボチャほどある。
 「大きいのは1キロありますね。これはみんな3年もんです。
 契約栽培で作っていただき、私自身も作っております。
 土があればどこでも育つんです」

これを、どういうふうにこんにゃくにしていくのだろう。
 「まず、芋をきれいに洗います。あそこにある、
 たわしがたくさんついておるような機械で洗います。
 以前は、1個1個たわしで手洗いしてました。
 それから、お釜で蒸すか炊くかするわけです。40分ぐらい」

煉瓦のかまど、五右衛門風呂を小さくしたような釜。
 「『はがま』といいますが、今はあんまりありませんね。
 炊けたら桶に上げて、残っておる皮をきれいにはぎます。
 これも以前は手でしました。
 小学校のころ、はぎやすいように親指の爪だけ長くしてたら、
 学校の先生にしかられた。
 でも、おやじには手伝わなあかんと言われて、困りました。
 きれいに皮をはいだら、昔は杵でついたんですよ。
 水車でついてもええわけです。
 北川の水を家の前に流れる『前川』という用水路に引き、
 水車のある家はその水を使ってまた北川に返す格好になります」

水の恵みと水の力の恵みだ。
 「今は機械ですりつぶすんですね。
 水を加えながら固さを調整するのがコツです。
 その水も、以前は北川や谷から取ってましたが、
 冬に温かい井戸水を使うようになり、今は水道水を使うてます。
 ここは井戸と水道水の両方を使うてますけど。
 水を注ぎながらかき混ぜて、のり状にするんです。
 それをしばらく置き、凝固剤を入れて型に詰めます。
 さらに、型ごともう一度炊く。
 そして、1枚1枚のこんにゃくに切っていきます」

加える水、ゆでる水。水がたくさんいる。
 「水、でんぷん、加工する人、これが三拍子。
 昔、なんでおやじと同じのが出来んのかなと思いましたが、
 独立して17年してもどっか微妙に違う。
 畑によって、芋のでんぷん質が違うんです。
 芋の性質でおいしいのが出来ると嬉しいですね」

手間ひまと、北川の恵み。
地元の人にとって、北川は切っても切れない。
 「北川に育てられました。夏は、毎日川遊びでしたわ。
 大きい岩あり、背丈以上の深みあり。全国でも有名な清流です。
 5番目やと思います。北川は誇りです」
 


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熊川宿にある「月屋」


くずの刺し身


熊川農産加工所代表 岩本義雄さん


こんにゃく芋を炊く釜


熊川宿を流れる用水の「前川」


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