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有意義な議論の場になった。
シンポジウム終了後、お話しを伺った。まずは大熊さん。
「『国破れて山河あり、国栄えて山河なし』が、今の私の実感です。
戦争直後に物がなかったが、今は川や山で食べ物が得られません。
河川整備は、我々プロが選択肢を提供して、市民が選ぶのがいい。
今までは国土交通省に全部預けてしまっていた。
もうかなりの程度まで治水工事は進んでいますが、
溢れない川など出来ないんですよ。破堤なしでオーバーフローする
ぐらいはしょうがないと、皆さんが言えばいい。
あと、土地でもうけようと思うなと言いたい。
公共事業で一番悪いのは、土地の買い上げで値上がりを待つ、
さもしい我々の根性。それが日本を悪くしている」
次は、住民代表の姫野さん。活動暦は10年になる。
「日本に手つかずの川は、ほぼありません。だから問題は、
どう手を入れるかなのですが、高度成長のこの50年間、
私たちが忘れていたものがありました。第十堰のような川との
関わりです。そういう点から、『250年間利用してきたものを
どう大事に思えるの』ということから考えるべきです。
第十堰の機能が必要なら、これを残し、どう大切に伝えくかという
形で入るべきだと思う。高度成長期にコンクリートに変えられてし
まった部分を、少しずつ昔のような吉野川特産の青石や、
松の木の杭、蛇籠などの伝統的な河川技術に戻して、
日本最大の洪水の川と付き合って来た歴史を復元できたらと
考えています。10年前に感じたのは、子供のころに体験した
吉野川で、子供に同じことを教えたくても、その場がなく
なった悔しさ。原点としてそれを忘れたくないな」
続いて、宮村さんに今日の印象について伺った。
「こういう議論は膠着して、それぞれの側のトークショーに
なっちゃう。今日はそうじゃなかったし、ある面で体制派の
立場として来られた今本先生が、反対派の人を心から尊敬して
招かれたという意味で、大変にユニークでした。
こういう機会がもっとあればと思います。川の問題は、
100年、200年の宿願としてすることが多い。
姫野さんにも『あなたの性格からしてマラソンランナーで
しょう。川は長距離型で考えたほうが良いと思いますから、
頑張ってください』と話をしたことがあります。
最近はすぐ、「次の世代に」といいますが、
次の世代などと過大な責任をかぶるより、
自分の世代を楽しんだらと思う」
最後に、今本さんに伺った。
「これまで、反対派と推進派との対話の場を持てなかった
のは非常に不幸でした。吉野川第十堰をテーマに、これほど
議論したのは、おそらく初めて。嬉しく思っています。
姫野さんが提起した二つの問題点、住民運動に対する行政側の
偏見と情報公開における作為的な隠蔽に、行政側は
答えるべきです。住民側も、可動堰を除いて検討をという
注文は外してほしい。洪水を安全に流下させるという面では、
可動堰が優れています。治水については、淀川水系流域
委員会
で新たな理念を検討中で、治水面のみで判断できない
ことは理解できますが、可動堰もひとつの選択肢として議論
をしたうえで、固定堰を採用するということはあり得ます。
最初から可動堰は除外とするのではなく、これからの吉野川
全体の整備をどうするかという広い視野で検討してもらえ
たらと思います」

今日のシンポジウムで、もっと発言し、行動しないといけない
ことを学んだ。私たちの伝統的な暮らしや風土を、
新しい川づくりにどんどん取り入れられるよう、考えなければいけない。
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大熊孝さん

姫野雅義さん

宮村忠さん

今本博健さん
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