<九頭竜川の地図はこちら>

手作りの灯ろうが少しずつ増えていった。

永平寺から車で15分。大灯ろう流しの会場に来た。
その舞台は、九頭竜川そのものだ。
「えいへいじ納涼まつり実行委員会」委員長・山口富士雄さんに、
お話を伺った。大灯ろう流しは、今年で15回目だそうだ。
 「灯ろうも増え、1万灯ろうぐらい流せるようになりました。
 北海道から九州まで、引きも切らず申し込みがあります。
 大灯ろう流しでは、まず永平寺で法要をしたあと、
 永平寺から100人以上のお坊さん方と監院様の南澤老師が来られ、
 ここで川施食法要が行われます。それから、監院様が川面に出られて、
 最初に流しになります」
ここに来るまで、こんなに大規模とは思わなかった。
灯ろうの数に圧倒される。
 「我々が募っているわけじゃないのに、
 皆さんの願いでどんどん増えていったんです」
随分流れが速い。灯ろうが一気に流れてしまいそうだ。
 「この流れでもそんなに速くは流れません。川面が広いので、
 これくらいでないと岸へ寄ってしまうんです」
灯ろうは1万灯。年々増えている。
 「10万灯ぐらいを目指しています。駐車場などいろんな問題も絡みますが、
 このお店だって商売でなく地元のボランティアが出し、
 会場設営も建設業界がしてくれています。
 皆さんの協力あっての灯ろう流しです。
 最初の頃は3000灯でしたが、1万灯以上になったのも、 皆様のおかげです


一人一人の思いが光の帯となる。


私も供養灯ろうに申し込んだ。両親の戒名を書き、流していただく。
去年よりも増えそうだと、係の方。

テントが並んでいるが、紫色のテントに引かれた。
九頭龍といえばアユ。大きく、太った、焼きたてのをいただく。
おいしい。たったの500円だ。隣はフランクフルトとたこ焼き。
精進の街らしく、油揚げを七味や煮汁をかけて売っている女性もいる。
100円で、これまたとってもおいしい。

そろそろ暮れそうだ。人でいっぱいになってきた。
団体がバスで次々と来る。 遠方からの参加者が多くて驚く。
川面は灯りを映し始め、昼間とは違う表情を見せる。
誰もが、今や遅しと待ちかねている。
東京からのツアーで来た女性に聞いた。
「心願成就」と書いた供養灯ろうを持っている。
 「灯ろう流しは、見たこともしたこともないから行って
 みようかと思って。主人を亡くしておりますから」
ご主人もきっと喜んでいるだろう。
父親を亡くし、初盆で東京から来たご家族。
亡夫に何もして あげられないから灯ろうでも流そうかと、
福井市から来ている年配女性。いろんな方々が来ている。

僧侶の読経。そして高僧が第一灯を流した後、待ちかねたように、
一般参加者がおびただしい数の願い灯ろう、供養灯ろうを流す。
本当にきれいだ。川の斜面伝いに、光が高い所から一斉に下りて来る。
小さなどよめき、川音。すべての灯りがゆっくりと流れ、光の帯が出来る。
幻想、幽玄…言葉を超えた美しさだ。一般参加者が両岸から灯ろうを流す。
読経を済ませた雲水たちが、リレー方式で灯ろうを運んで川の
真ん中から流す。墨染めの衣、丸めた頭と白い肌、ぼうっときれいな灯ろう。
物語の中に居るかのようだ。真っ暗な川面に長い光の帯。
この光景は一生忘れない。


九頭竜川から離れた。下流域に行くほど川面全体が灯りで染まっている。
本当に幻想的だ。8月18日、福井県永平寺町の大灯ろう流し。
九頭竜川と永平寺がひとつになった、素晴らしい灯ろう流しだ。

<前のページに戻る>


えいへいじ納涼まつり実行委員会委員長・山口富士雄さん


灯ろうの多さにびっくり


遠方からも大勢が灯ろうを流しに来た


雲水がリレー式に灯ろうを運ぶ


言葉を超越した美しさ


 2002 April All right reserved.