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毎回、大阪を拠点に活動しているNPO法人やNGO、ボランティア団体、そして大阪のいろいろな地域で活躍している方やその地域の活動内容を通して、大阪の「ひと」や「まち」の魅力を発見していきます。
たくさんの人に知ってほしい大阪を魅力いっぱい、情報満載でご紹介していきますので、みなさんご期待ください。

2007年2月10(土)放送
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“移動するライブハウス”で
さまざまな音のコラボレーション!
〜『ヴューマスターズ・大阪/メルボルン』〜

今回は、NPO法人『大阪アーツアポリア』主催で行われたイベント『ヴューマスターズ・大阪/メルボルン』の中から『ヴューマスターズ・トラムコンサート』(2月4日開催)と、『ヴューマスターズ・リミックス展覧会』(2月3日〜18日開催)の模様をお送りします。これは、この番組でしばしばご紹介している『大阪 ひと・まち魅力発見事業推進会議』の、大阪を盛り上げるためのラウンドテーブル事業企画コンペで、優秀企画賞を取った企画です。
NPO法人『大阪アーツアポリア』は、いろいろな現代芸術を育てたり、振興したりする活動を行っている団体です。詳しいお話を、NPO法人『大阪アーツアポリア』の小島剛(こじま たかし)さんに伺います。

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●恵美須町駅のホームにて

藤原:大阪の路面電車、“チンチン電車”と言えば阪堺電車です。その阪堺電車の恵美須町駅にやって来ました。今からスタートということで、たくさんのお客さんが、2台の電車に分かれて乗り込んでいるところです。
それでは、NPO法人『大阪アーツアポリア』の小島さんにお話を伺います。

小島:よろしくお願いします。

藤原:今回のテーマである“ヴューマスターズ”というのは、一体、どういうものなのですか?
小島:音楽ではなくて、日常の音です。身近に聞こえている“環境音”を音楽的に楽しんでみようというプロジェクトです。

藤原:こういった試みは、今までもされていたのですか?
小島:大阪築港の赤レンガ倉庫で、2002年から毎年行ってきました。

藤原:今年から始めた試みというのはあるのですか?
小島:今年は、オーストラリアのNPOと共同で企画をしました。オーストラリアから2組のアーティストを呼んで、滞在制作をしてもらい、展覧会と一緒に行うということで、今回は、“リミックス”という形で実現することができました。

藤原:まずは、『ヴューマスターズ・トラムコンサート』ですが、どういうものなのですか?
小島:トラム(路面電車)コンサートです。そのままですね(笑)。チンチン電車の中でコンサートをするということです。

藤原:何組の方が演奏されるのですか?
小島:合計4組のアーティストが演奏します。


小島剛さん


恵美須町駅のホーム
参加者が続々と集まってきます



藤原:面白いことを考えられましたね。
小島:路面電車を気軽に使えることが分かりましたし、普段、“環境音”を録る時にも、電車の音を録る人が多く、電車は身近で面白い音がたくさん“落ちています”のでちょうどいいかな、と思いました。

藤原:今日の『トラムコンサート』の最大のポイントは、何ですか?
小島:チンチン電車は動きますよね。動くということは、景色が動くということです。景色が動くということは、音も動いていくことになります。僕らが普段コンサートをする時には、一つの会場でしますので、音は一つの場所にあります。その場所が動いていくわけですから、“移動するライブハウス”という感じになるので、それが非常に楽しみで、興味深いところだと思います。



●スタジオ

松本:お話を伺っている後ろで、電車の音が聞こえていましたね。

藤原:恵美須町駅のホームでお話を伺いました。隣に、出発前のトラムが2台停車し、お客さんが続々と乗り込まれるところだったのです。この後、アーティストもお客さんも2台に分かれて、恵美須町駅から浜寺公園駅までを往復しました。1アーティストが20分間ずつ、片道2組で、合計4組の方が演奏されました。お客さんは50人程集まっていたのですが、いろいろな所で噂を聞いて来られた方が多かったようです。続いて、コンサート前に、参加したアーティストの方にお話を伺っています。



●我孫子道駅の車庫にて、参加アーティストにインタビュー

藤原:では、セッティングが終わったばかりのアーティストの方々に、お話を伺いたいと思います。アーティスト名を教えてください。
中尾:中尾勘二(なかお かんじ)と言います。

藤原:普段はどんな所で活動されているのですか?
中尾:東京のライブハウスなどです。

藤原:わざわざ東京から、来られたのですか?
中尾:呼ばれたので来ました。

藤原:今までに、動く電車の中で演奏した体験は?
中尾:初めてですね。

藤原:今の気持ちはどうですか?
中尾:非常に楽しみです。

藤原:お客さんも、電車の揺れの中で聞くわけですが、演奏される方も大変だと思います。秘策はありますか?
中尾:特に秘策はないですね。やってみないと分からない、というところもあります。

藤原:今の意気込みをお願いします。
中尾:元々、電車や鉄道は好きなので、非常にうれしいという感じでしょうか。楽しくやらせていただきます。

藤原:外国のアーティストもいらっしゃいますので、お話を伺ってみましょう。アーティスト名を教えてください。
(※通訳あり)
Snawklor:『Snawklor(スノウクロウ)』です。

ミュージシャンの中尾勘二さん

『Snawklor』のお二人



藤原:メンバーはお二人ですね。今日はどんな楽器を使って演奏されるのですか?
Snawklor:今回は、フィールドレコーディングをした音源と、トランペット、おもちゃのキーボードなどを使う予定です。

藤原:どんな音になるのでしょうか?
Snawklor:ちょっとサイケデリックな感じの音になると思うので、ご期待ください。



●スタジオ

藤原:機材を積み込んで行く様子も見せていただいたのですが、見れば見るほど、これからどんな音楽が演奏されるのか想像がつきませんでした。リハーサル後、時間が余った方は写真を撮ったりされていたのですが、やっぱりアーティストの方はアートに通じているのでしょうね、単にトラムを撮るだけではなくて、車輪の下をのぞき込むようにして撮影されたり、ちょっと目線が違うんです。

松本:やはり、その辺りも我々とはちょっと感覚が違いますね。

藤原:今度は走っているトラムの中で、女性二人のグループ『OTTO(オットー)』にお話を聞きました。



●トラムの中で、女性メンバー二人の『OTTO』にインタビュー

藤原:アーティスト名を教えてください。
OTTO:『OTTO』です。

藤原:動く電車の中で演奏されたことはありますか?
OTTO:ないです。初めてです。

藤原:今、期待されていることは、どんなことですか?
OTTO:電車の中はたくさんの音がしていますが、今、鳴っているこの音に自分たちの音をとけ込ますような感じの表現をしたいなと思います。普段私たちは、普通に聞こえている“環境音”など、いろいろな音を録って、それをサンプリングして、コラージュしていくという作品を作っています。今日はすでに、電車の音がしていますので、そこに私たちが全く別の音を持ってくることで、一体どういうふうになるのか、どういうふうなコラボレートができるのかというのが楽しみです。


●『OTTO』の演奏♪♪

(走っている電車の中の音、フライパンで油がはじけるような音。せんべいをかじるような音にも聞こえる。)



●スタジオ

松本:これ、何ですか?何かを噛んでいるような音ですね。

藤原:違うんです。今、お聞きいただいているこの音が、『OTTO』のお二人の演奏です。

松本:ほー!

藤原:「ピーン」という音も聞こえますか?電車の音なのか電子音なのか分かりませんが、その何か噛むような音の後ろには、電子音のようなものが流れているんですよ。音と音と音が、たくさん重なっている状態です。

松本:演奏という形で流している音楽と、電車の車内音、車外音などが、渾然一体になって聞こえているわけですね。

藤原:ですから、演奏と言っても、楽譜のないコンサートですね。

松本:電車の中は、いつもと同じですか?デコレーションがしてあるとか、何かアーティスティックな装飾があるとか?

藤原:それは、特になかったです。シンプルに電車に乗って、みなさんそれぞれに、演奏を楽しんでいました。アーティストの方をじっと見て聞いている方や、お友達同士で話をしている方など、自由な空間で、本当に不思議でした。私は、窓の外をぼんやり眺めたり、目を閉じて、いろいろな想像をしながら聞いたりしていました。松本さんはチンチン電車に乗ったことがありますか?

松本:あります。

藤原:でも、こういう状況は絶対ないですよね。

松本:電車の中で、iPodなどを使って音楽を聞いているということはありますが、こういう状況はないですね。

藤原:電車は貸し切りになっていますが、中の音楽は外にも多少は聞こえているようで、電車が走っていく先々で、外から不思議そうに見ている人もいました。

『OTTO』の演奏風景
窓の向こうには大和川が

熱心に聞き入る参加者たち

中には映像を交えた作品も
リアルタイムの車外風景が映し出されます

演奏中、ビデオカメラを操作する
小島さん(左)
見慣れた風景も、見方によっては新鮮!

トラムの中に鳴り響く拍手も新鮮!



松本:外から見ていても、やっぱり普段とは違う雰囲気でしょうね。

藤原:いつもと違った空間を体験できて、非常に楽しかったです。

松本:普段だったら、ガタガタ、ゴトゴト揺れているだけですが、それが音楽になっているわけですからね。

藤原:面白いですよね。続いて、お客さんに感想を伺いました。



●参加者(観客)にインタビュー

藤原:では、参加者にお話を伺いたいと思います。いかがでしたか?
女性:すごく気持ち良かったです。西日が当たって、ガタンガタンと揺れる中で、「ピーッ」と音が聞こえたりして…。

藤原:暖かくて、眠くなりませんでした?
女性:私は大丈夫ですけど、隣の人は眠そうでした(笑)。

藤原:これまでに、動く電車の中でコンサートを聞いたことがありますか?
女性:ないですね。

藤原:乗る前のイメージと、実際に乗った印象と、違いはありましたか?
女性:もっとおしゃれな感じかと思っていたのですが、意外と下町をガタンゴトンと走るという感じでした。でも、それがすごく良かったです。

藤原:続いて、男性の方に伺いましょう。動く電車の中で演奏を聞いてみて、いかがでしたか?
男性1:“見る”ということに比べて、“聞く”というのは2倍ぐらい体が反応する感じがして、面白かったですね。

藤原:こういうことは、普段の生活ではできないですよね。
男性1:何だか、おかしい感じですね(笑)。体の動きまで含めて。

藤原:特に印象に残ったところは?
男性1:映像が入った作品があって、良かったですね。自分と違う世界に行っている感じがして、面白かったです。

藤原:また、経験したいと思いますか?
男性1:そうですね。ぜひ、今度はメルボルンで(笑)。

藤原:行きましょうか!
男性1:いいかもしれませんね。どんな風景が見られるのか楽しみです。

藤原:外国人の方もたくさん来られています。ちょっとお話を聞いてみましょう。今日はいかがでしたか?
(※通訳あり)
男性2:非常に面白い体験ができました。トラムが実際に走っている音と、ミュージシャンの音が、ものすごくいい感じでミックスされて、面白い体験になりました。

藤原:もう一方いらっしゃいます。動く電車の中で、演奏を聞いてどうでしたか?
(※日本語で)
男性3:本当に素晴らしい!びっくりしました。こんな気持ちは初めて!電車の中もすごくいい感じです。

我孫子道駅の車庫にて休憩タイム

海外からの参加者(左)にも好評

外から見たらいつもの風景
この中でコンサートが!





●スタジオ

松本:最後の方は、日本語が流暢な方ですね。国際色の豊かな企画ですね。

藤原:そうなんです。インターネットで応募して来られたイギリス人の方など、本当にたくさんの方がいらっしゃいました。

松本:女性の方で、「もっとおしゃれな感じだと思っていた」という声は、言い得て妙な部分がありますね。

藤原:乗る前は、どんなものか全く想像できませんからね。

松本:それぞれに思い浮かべてきたものとのギャップが、また面白いということもあるのでしょうね。

藤原:夕日の話も出ていましたが、窓から見える風景もすべて含めてアートなのです。目の前では音楽をやっている。そして、その周囲の風景がどんどん目に飛び込んで来て、流れていく。映像を使ったパフォーマンスもありますので、自分が何を聞いたらいいのか、見たらいいのか、一言でいうとすごく“忙しい”。

松本:その日の天候や条件などによって、聞いている音楽のイメージも変わるのでしょうね。

藤原:そうですね。本当に盛りだくさんのイベントでした。続いては、イベント終了後のアーティストの方々に感想を伺いました。



●インタビュー

藤原:『ヴューマスターズ・トラムコンサート』が終わりました。まずは中尾勘二さんに伺います。今日はいかがでしたか?
中尾:非常に楽しくて、面白くて、終わったのに気が付かないぐらいでしたね。電車は着いたのにまだ演奏していたという…(笑)、それぐらい面白かったです。

藤原:事前に想像していた感じと比べて、いかがでしたか?
中尾:演奏が電車の音に紛れ込んだり、そういう楽しみがありました。聞いていた人によると、どっちが楽器の音か分からない時もあったらしいですよ。

藤原:ハプニングはありました?
中尾:ハプニングは、特になかったですね。

藤原:今日一番印象に残ったところは、何ですか?
中尾:やっぱり、終点に着いたのに全然気付かずに、しばらく演奏していたことですね(笑)。

藤原:本当に集中していたんですね。
中尾:そうですね。没頭してしまいました。

藤原:ありがとうございました。


藤原:『OTTO』のお二人です。今日の感想を教えてください。
OTTO:純粋に楽しかったです。ポカポカしていて、ちょっと遠足気分で。

藤原:特に、どの点が良かったですか?
OTTO:個人的には2回目の演奏のほうが、電車の音を聞きながら、落ち着いて演奏できたかなと思います。

藤原:1回目は本当に初めての体験でしたからね。
OTTO:かなりの揺れにもびっくりしました。今度は、電車に乗っているということを楽しんで、もう1回演奏したいです。

藤原:お客さんには、楽しんでいただけたと思いますか?
OTTO:いろいろな人が「楽しかったよ」と言ってくれて、うれしかったです。

藤原:良かったですね。どうもありがとうございました。



●スタジオ

松本:参加されたアーティストも手探りの状態で、終わった後は、ホッとした部分と、手応えを感じたといった部分がありますね。いかに実験的な試みだったか、よく分かりました。

藤原:そうですね。小島さんも、景色と音を融合させて楽しんでいるお客さんを、実際にご覧になっていましたから、新しい発見だったとおっしゃっていました。続いては、その小島さんと、こんなところに行きました。



●南海電鉄・浜寺公園ステーションギャラリーにて

藤原:今度は、浜寺公園駅の中にある浜寺公園ステーションギャラリーにやってきました。こちらでは、『ヴューマスターズ・リミックス展覧会』が行われています。こういう空間が、駅舎の中にあるのですね。
小島:そうですね。今も、列車が通る音が入ってきたと思いますが、非常に面白い場所かなと思います。

藤原:中には、いろいろな作品があります。椅子があって、みなさん、何かを聞いているような様子ですね。また、動いているものもあります。
小島:“ヴューマスターズ”は、“環境音”を音楽として耳で聞いて楽しむというものですが、ここでは、それを視覚化させて、展覧会という形にしています。“リミックス”というのは、再構成するという意味です。音(聴覚)を視覚に“リミックス”しています。

藤原:面白そうなので、いくつか紹介していただけませんか?
小島:はい。これは梅田哲也(うめだ てつや)さんの作品です。オープンリールというテープレコーダーが対角線上に二つありまして、その周りをテープが回っています。このテープで、録音と再生を常にループして(くり返して)行っているわけです。こちらの席に付けた小さなマイクともう一つ、窓ガラスのところにも、振動を拾うマイクがあり、その二つのマイクで拾う音を一台で録音します。そして、それが回って20秒ぐらい後にもう一台で再生されます。動き回っている風船がテープに当たることで、回転スピードが遅くなり、再生する音も変わったりします。

藤原:ほー。



●スタジオ

藤原:他にもいろいろと見せていただきました。例えば、壁一面の大きな立体に音楽が流れていて、同じような音でも、メルボルンで録ってきた音と、日本で録ってきた音を一緒に流したりしていました。

松本:深いですね、哲学的な感じがします。

藤原:例えば、お風呂でお湯を湧かす時に「コポコポ、コポコポ」という感じの音が出ますよね。それだけを集中して録っている音もあります。

松本:題材は本当に身近なものなんですね。

藤原:みなさんが知っているような音ばかりですが、また違った発見が、きっとできると思います。

南海電鉄・浜寺公園
ステーションギャラリーにて

オープンリールを使った
梅田哲也さんの作品

『Snawklor』による作品
『Station To Station(駅から駅へ)』

さまざまな“音”に聞き入る藤原
中には映像を交えた作品も




<お問い合わせ>
NPO法人『大阪アーツアポリア』
TEL 06-6599-0170


● 取材を終えて、感じたこと

トラム内での体験は、まるでテーマパークの乗り物に乗っているかのようでした。
すべて当たり前に、見たり聞いたりしているはずの“環境音”なのに、「これから何が起こるんだろう?この音は?この映像は?…」と、ワクワクしました。
また、展覧会も同様に、目に見えない音を形で表現されていることが、面白いなぁと思いました。
どの作品も斬新だったので、さらに子ども目線のヴューマスターズも見てみたい気がします。


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