●インタビュー前半
藤原:ずばり、何をめざしておられますか?
柳内:2016年のオリンピックで日本がバスケットボールで金メダルを取る、というのをめざして活動しております。
藤原:大きな目標ですね。ところで柳内さんがされていたストリートバスケというのは、何人でするのですか?
柳内:本来のバスケットボールは5対5ですが、ストリートバスケは3対3で、コートも半分のハーフコートでやります。“勝つ”ことを目的とした、競技としてのバスケットボールという考えを頭から外します。バスケットボールというものは、元々は“遊び”なのです。「こうしなさい、ああしなさい」と、ゲームに勝つためだけのバスケットボールを教えるのとは、少し違うのではないかと思うのです。子どもたちがボールを持って公園に行ったら、人数や性別、学年も問わず「今、ここにいるメンバーでこういう遊びができるよね」となる。例えば、「ドリブルで誰が早く帰ってこれるか」というのも一つの遊びです。そうした子どもたちのローカルルールが勝手に生まれてくるようなものを、定着させていきたいなと思っています。ですので、体育館でバスケットボールというゲームをすることは、その次の段階で、今教えようとしているのは“ボール遊び”なのです。
藤原:週何回位、体育館で練習されているのですか?
柳内:今のところ週1回、毎週月曜日にさせていただいています。
藤原:何人ぐらいで、どれぐらいの年齢の方を教えておられるのですか?
柳内:現在は10数人で、1番下の子が5年生、上は中学校2年生です。
藤原:子どもたちにバスケットボール文化を根付かせるために、練習以外でもいろいろとされているそうですね。
柳内:“ボール遊び”から、いわゆる“フリースタイル”というものに取り組んでいます。例えば、サッカーでは、足でポンポンポンと何回もボールを落とさずに蹴る “リフティング”といったものがあるように、バスケットボールでは、ドリブルを巧みに組んだり、足の間を通したり、指先でボールを回転させたりといった、いろいろな技があります。それを音楽に合わせてリズミカルにやる、“フリースタイル”です。まずは今、それを指導要項として子どもたちに教えております。
●スタジオ
藤原:お話を伺いました柳内さんは、身長190cmと、すごく背が高い方です。
松本:バスケットボールの世界なら普通の身長でも、一般人からするとびっくりしますよね。
藤原:身長だけでなく手も大きくて、バスケットボールを、がっちり持てるのだろうな、と思いました。柳内さんは30歳くらいの時にストリートバスケで、日本チャンピオンを四つも取った方です。『TEKSAB』の練習場所は『HOOP7(フープセブン)』という、近鉄東大阪線の荒本駅が最寄り駅のスポーツ施設です。
柳内さんが現在の活動を始めたきっかけは、5年程前に息子さんが小学校でバスケットボールを始めたことで、親心ながらに「こいつすごいんちゃうか」と思うほど上手だったので、アメリカ留学も考えたそうです。でも、バスケットボールの世界では、アメリカと日本の差は、すごくあるのが現実。自分の息子のことだけを考えたら、アメリカに行かせてやってもいいけれども、そうではなく、「日本の子どもたちみんなを強くしていきたい」という夢をお持ちになったのです。また、体が大きいから勝てるというわけでもなく、小柄な日本人ならではの技術面で勝つ要素はいくらでもあるのではないか、と考えておられます。
松本:バレーボールでも、強かった頃に“サインプレー”という組織的なプレーで、体格のいいチームにどんどん勝っていきましたからね。
藤原:バスケットボールでも、女子はそうした形で功績を残していますので、きっと男子でもできると、そういった夢をもって、頑張っておられます。後半は、練習中のお子さんにもお話を聞いてきました。
●インタビュー後半
藤原:ところで『TEKSAB』という名前は、どういう意味なのですか?
柳内:『TEKSAB』というのは、後ろから読むと「BASKET(バスケット)」ですね。下から上がっていくぞ、という意味です。子どもたちが日々練習、トレーニングして、うまくなっていくことが『TEKSAB』だと思っています。
藤原:その名前の通り、みなさん2016年のオリンピックに向けて頑張っておられると思いますが、金メダルを取る自信はありますか?
柳内:そうですね。バスケットボールをよくご存じの方ほど、笑う話ですね。
藤原:ということは、難しいですか?
柳内:バスケットボールは世界で211ヵ国、4億5千万人のプレーヤーがいます。サッカーは205ヵ国です。
藤原:サッカーより多い?
柳内:はい。それほどバスケットボールは世界的に盛んな競技です。その中で金メダルを取るというのは非常に難しい。ご存じの通り、アメリカがものすごく強いですね。その中で日本がどうやって戦っていくかと考えた時に、今までやってきたことで大丈夫かな?という疑問を持ちます。10年後の代表選手は、今10〜15歳ぐらいがメインになってきます。その年齢で比較すると、今の段階では、決してアメリカや他の強い国々の子どもたちに、日本の子どもたちは負けていないのです。うまく育てれば、日本からも世界で通用するプレーヤーが出てくるのではないか。そういう選手たちがたくさん揃えば、オリンピックで金メダルを取ることも、決して無理なことではないと思っています。
藤原:柳内さんも、今の子どもたちに夢を託して、これからも頑張ってください。
柳内:はい、ありがとうございます。
藤原:ありがとうございました。
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●子どもたちにインタビュー
藤原:何年生ですか?
男子1:中学2年生です。
藤原:身長大きいね。何cmあるんですか?
男子1:171cmです。
藤原:バスケットボールはいつからやっているのですか?
男子1:小学校4年の頃からです。
藤原:最初にやろうと思ったのはなぜ?
男子1:楽しそうだったから。
藤原:『TEKSAB』に入ってうまくなりましたか?
男子1:うまくなりました。
藤原:どのあたりがうまくなった?
男子1:ドリブルやパスがうまくなりました。
藤原:何年生ですか?
男子2:小学6年生です。
藤原:バスケットボールはいつからやっているの?
男子2:5年生からです。
藤原:笑顔がとっても素敵ですね。すごく楽しそう。
男子2:はい、楽しいです。
藤原:ライバルも多いと思いますが、競争心はある?
男子2:はい。
藤原:誰か目標にしている人がいますか?
男子2:違う学校だけど、うまい友達を目標にしています。
●スタジオ
藤原:取材に行く前は、試合ばかりしてるのかな、と思っていたのですが、そうではないのですね。行った日は11人の子どもさんが“フリースタイル”の練習をしていました。ボールを自由に操って、右手から胸を通って左に渡したり、両手を使ってドリブルしたり、すごく上手でした。
松本:両手で投げて、股の間を抜く、というのをみんなやっていますね。
藤原:手品みたいでしたよ。ボールはどこ行ったの?と思いながら見ていました。そんな感じで、本当に楽しく学ぶことができているようでした。
松本:野球でいうと、キャッチボールや三角ベースですね。そういったローカルルールが、バスケットボールでもどんどん取り入れられていけば、それによって下地ができていくのかなと思います。
藤原:ところで、『TEKSAB』は、フリーペーパー『瓦版武者修行(かわらばんむしゃしゅぎょう)』を出しています。写真もたっぷり載っているのですが、有名なバスケットボール選手ではなくて、今それぞれの学校で頑張っている子どもたちを紹介しています。それを見て、身近な子も頑張っているのを意識して、「じゃあ、僕も頑張ろう。ここに載ろう」という感じで頑張るのではないかと思います。
2月17日には、『2007国際親善女子車椅子バスケットボール大阪大会』があります。車椅子でバスケットボールをする障害者の大会ですが、アメリカ、オーストラリア、カナダ、日本の4ヵ国で行われる大きな大会です。『TEKSAB』のみなさんは、そこで10分間パフォーマンスをします。他にもいろいろな場所で披露する機会がありますので、参加したいと思う方は、是非お問い合わせください。
またNPO法人『TEKSAB』では、こうした活動を支援してくれるスポンサーを募集しています。同時に、個人会員も募集しています。詳しくはホームページをご覧ください。
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<お問い合わせ>
www.teksab.jp
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● 取材を終えて、感じたこと |
何事でも、上達への近道は楽しく運ぶこと!
嫌になったら、何もかも投げ出したくなりますものね。
バスケットボールを練習する子どもたちのレベルはさまざまでしたが、みんな熱心に、そして何よりも楽しそうにボールを扱っていたあたりが、『TEKSAB』の最大の特長なのでは?
スポーツは、練習すればするだけ必ず成果が出るもの。その手応えを感じながら、目標に向かって頑張っている様子でした。
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