トップページピピッと大発見!大阪の元気!過去の放送分番組へのご意見・ご感想
出演者プロフィール大阪市コミュニティ協会リンク
ピピッと大発見!
ロゴ トップページへ

毎回、大阪を拠点に活動しているNPO法人やNGO、ボランティア団体、そして大阪のいろいろな地域で活躍している方やその地域の活動内容を通して、大阪の「ひと」や「まち」の魅力を発見していきます。
たくさんの人に知ってほしい大阪を魅力いっぱい、情報満載でご紹介していきますので、みなさんご期待ください。

2006年11月18(土)放送

“しゃべくり漫才”の継承、発展を願って
NPO法人
〜『上方演芸研進社mydo(まいど)』〜

今回はNPO法人『上方演芸研進社mydo(まいど)』の活動をご紹介します。今年の3月に設立され、10月にお披露目の記者会見をして、活動を始めたばかりですが、非常に注目されている団体です。名前からも分かるように、大阪のお笑いや芸能の大御所が、たくさん参加しているからです。詳しいお話を理事長の林千代(はやし ちよ)さんに伺います。林さんは、『必殺シリーズ』の脚本家として有名です。また、“上方漫才の父”とも言われる漫才作家の故秋田實(あきた みのる)氏の娘でもあり、ラジオ大阪主催の上方漫才大賞の審査員もしていただいている方です。



●インタビュー前半

藤原:NPO法人『上方演芸研進社mydo』は、どんなことをされている団体ですか?
林:大阪の笑いをより広く人々に体験してもらい、漫才の良さを広めていきたいと思っております。古くから“しゃべくり漫才”に親しんできた人たちは、最近、漫才離れしてきています。つまり「若い人の漫才分からへんわ」と感じている方が多くて、実際に私も「もっと私らに分かるような漫才をしてくれへんかな」と言われたことがあります。そこで、“しゃべくり漫才”が衰退してきている今、もう一度“しゃべくり漫才”を復活させて、演者や書き手を養成していきたいと思ったのが、このNPO法人を立ち上げたきっかけです。

藤原:漫才ブームというのは何度も来ていますよね。
林:戦後、3回ありました。


理事長
林千代さん




藤原:そのブームの時と比べて、今のお笑いのパワーはどうですか?
林:昭和30年代に1回、昭和40年代に1回、それから昭和55年に、ザ・ぼんちさんやB&Bの洋七・洋八さん、紳助・竜介さんたちの爆発的なブームがありました。戦後、大体10年ごとに漫才ブームが起こっているのですが、それ以後は漫才ブームというようなものはありません。今、人気があるのは、“漫才ブーム”と言うより“お笑いタレントブーム”なんです。

藤原:ちょっとニュアンスが違うわけですね。
林:違うんです。お笑いタレントをめざす人は出てきていますが、“漫才ブーム”ではない。漫才をやり、それをきっかけにバラエティ番組に出るという漫才タレントのブームです。非常にパワーはあるのですが、漫才よりバラエティが本命だから漫才ブームにはならないんです。

藤原:まずは、しっかりした漫才の台本を書ける作家さんを育てるということですが、具体的にはどんな活動をされているのですか?
林:これから来年に向かって、作家養成の募集をします。生徒さんが漫才台本を書けるようになった時、その個性に合った演者に演じてもらいます。漫才作家と演者が漫才を作っていく、という形で進めていきたいと思っています。もちろん、発表の場も考えています。

藤原:『上方演芸研進社mydo』のメンバーには、どんな方がいらっしゃるのですか?
林:プロの漫才・落語作家がいます。その中には20年、30年、3000本、4000本書いてきた作家もいます。また、漫才や笑いについての著書を多く出されている関西大学の名誉教授で『笑い学会』会長の井上宏(いのうえ ひろし)先生や、もう70年近く“しゃべくり漫才”をやってきた喜味(きみ)こいしさんもいらっしゃいます。そういう人たちの力を借りてやっていきたいと思っています。また、“笑いと健康”を研究されている大阪大学の先生にも参加していただいています。笑いが体に良いことを実践的にやっておられる先生です。全員の力を集結して、イベントにしていきたいと思っています。『マイド寄席』などを定期的に開催していきます。



●スタジオ

松本:確かに、笑った後は気分的に清々しい気持ちになって、体にも何だかいいような感じがしますね。

藤原:以前から、笑うと免疫物質が増えることは分かっていたのですが、大阪大学の臨床医師の先生が、落語を見る前と見た後に血液を調べて、その物質の変化を研究したところ、実際に笑いが健康に良いということが、証明されたのだそうです。

松本:血液に出るわけですね。

藤原:最近の若い人は漫才“タレント”で、漫才の“演者”とはちょっと違うんじゃないかというお話もありました。もちろん今でも、漫才をされている方で、面白い芸人さんはたくさんいます。

松本:インパクトはあるんですよね。

藤原:テレビで見ていても、リズム感がすごくあって、どんどん引き込まれていくのですが、“テレビの芸”としては、漫才と違って一つのネタが5分も持たない、と林さんはお話をされていました。

松本:テレビの弊害ですね。テレビだと出る枠が5分以内と決まっている場合があります。 15分、30分とじっくりやらないと漫才や落語の良さって出ないですからね。

藤原:最近、若手の漫才師がイベントで、「30分ステージやって」と言われた時に、できないことが多いそうです。仕方がないので、5分のネタを三つやって15分、残りの15分は普通のトークでつなげるなど、そういうことが多いそうです。

松本:昔の漫才師と逆ですね。昔は、「テレビ用に5分でやってくれ」って言われても、「どこで切るねん」ということがよくありました。

藤原:そうそう!昔の漫才は、筋書きがあってこそでした。だから林さんは、漫才作家を育てていきたいという思いが強いわけなんです。ところで、林さんのお父様の秋田實さんが書かれた台本は未発表を含めて、8000本余りあるそうですよ。

松本:そんなにあるんですか!

藤原:その中には名作と言われる漫才もたくさんあります。ぜひこれを、脚色して今の漫才師さんにやってもらいたい。できれば現代の文化に合ったものに直してやってもらいたい、という夢もお持ちです。後半は、今後の予定について、お話を伺っています。



●インタビュー後半

藤原:
これからの活動内容を教えてください。
林:昔、大阪には『新芸座』や京唄子・鳳啓助の『唄啓劇団』、『ミヤコ蝶々劇団』、『笑いの王国』などがあったのですが、今ではありません。そこで、喜味こいしさんを座長に迎え立ち上げた『こいし一座』の公演を11月18、19日に行います。そして年に3回から4回、舞台をしていきたいと思っております。他には『ワッハ上方』と協力して『落語ウォーク』というイベントをやります。落語に出てくる場所を歩いて、最後にその落語を聞いていただきます。例えば今回は、まず『ワッハ上方』で落語作家の小佐田定雄さんのお話を聞いて、その後、実際に高津神社や生國魂神社など上町界隈を歩き、最後に四天王寺で桂坊枝さんの『天王寺まいり』の落語を聞くというような形の『落語ウォーク』です。これから、いろいろな落語のネタをもとに『落語ウォーク』をやっていきたいと思っております。

藤原:楽しそうですね。聞くだけじゃなくて見て、体感してっていうのもいいですね。ところで、大阪のお笑いだからこその魅力や、今、お笑いパワーが求められているということに関して、林さんはどのように思われますか?
林:大阪言葉というのは、非常にあいまいな言い方が多くて、“まろみ”や“うまみ”がある言葉なんですね。だからこそ、対話に向いていると言われています。例えば、喧嘩をするにしても、「ちくしょう、てめぇなんか死んでしまえ!」と言うようなところを、大阪では「あほんだら、長生きさらせ!」と言います。「え?何言うてるの?」と思いますね。そう言うことで、怒らないで笑ってしまえると思うんです。そういう大阪言葉の持つ“まろみ”や“うまみ”を、漫才を通して大切に伝えていきたいと思っています。



●スタジオ

松本:何だかものすごく深い話ですね。

藤原:漫才だけではなく、私たちの実生活にも直接関わってくることだったんだなと、改めて感じました。今後の予定は、『トーク&漫才』というものを定期的にやっていきたい、というお話をされていました。NPO法人『上方演芸研進社mydo』では、会員を募集されています。会費は、正会員の場合、個人が入会金1万円、年会費1万円です。会員になると、行事やイベントの案内が届いたり、会が主催する行事に割引料金で参加できるなどの特典があります。詳しくは、ホームページをご覧ください。


<お問い合わせ>
NPO法人『上方演芸研進社mydo』事務局
TEL 06-6776-7172
http://www.kamigata-mydo.com/


● 取材を終えて、感じたこと

私の祖母が「昔の漫才がいいねぇ」と言っていたのは、若手芸人さんの口調が早すぎて聞き取れないからかと思っていました。
もちろんそれもあるのでしょうが、違うんですね。テンポ、間の取り方、演じる人の素のままの個性…。やはり漫才作家さんによるしっかりした台本があってこそ、それらの芸の面白さがパワーアップするんですね。
秋田實さんの世に出ていない名作漫才を、果たしてどなたが表現していくのか。今後に注目です。


ページトップへ

copyright(c)2005 OSAKA BROADCASTING CORPORATION