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毎回、大阪を拠点に活動しているNPO法人やNGO、ボランティア団体、そして大阪のいろいろな地域で活躍している方やその地域の活動内容を通して、大阪の「ひと」や「まち」の魅力を発見していきます。
たくさんの人に知って欲しい大阪を魅力いっぱい、情報満載でご紹介していきますので、みなさんご期待ください。

2006年6月10日(土)放送
日本の昔ながらの遊びの輪を広げる。〜NPO法人『遊塾』〜

今回は、NPO法人『遊塾(ゆうじゅく)』の活動をご紹介します。昔ながらの遊びを中心に、遊びを伝え、広めていく活動をしています。オフィスは大阪市港区にありますが、活動範囲は実に広く、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、そしてアジアと、海外にも何度も出かけて、日本の昔ながらの遊びの輪を広げているそうです。理事長の田仲猪佐美(たなか いさみ)さんにお話を伺います。




●インタビュー前半

藤原:『遊塾』の活動概要からお教えください。
田仲さん(以下、田仲・敬称略):様々なイベントに招かれて出かけ、捨てるような物、あるいは身近にある物を材料にして、昔のおもちゃを作ります。

藤原:代表的なおもちゃには、どんなものがありますか?
田仲:私が今持っているのが、竹トンボ。それから、割り箸鉄砲、ガリガリトンボ、ぶんぶんゴマ、こういうものですね。これらは昔のおもちゃの代表的なものでないかと思います。それを教えるのではなく、作るための手引きをしようと考えています。時には、おしゃべりをしながら、子どもと同じように作っていく。これが、子どものイベント活動に参加する時の一番のポイントです。

藤原:ガリガリトンボって何ですか?
田仲:昔からいろいろあるものです。割り箸一膳に、針金を巻きます。20番手の針金、80cmぐらい必要ですが、それを割り箸にグルグルと巻いていきます。この間隔がちょっとミソでして、大体5mmぐらいの空きにしないと、3mm以下だったら回ってくれません。

藤原:規則正しく、割り箸に巻き付けていった先の方に、プロペラみたいなものがありますね。
田仲:ちょっと厚手の紙をプロペラになるように切って、割り箸の先にピンなどを使って取り付けます。そして、割り箸のこの角をこすります。

藤原:ペンでこするのですね。あ、プロペラが回りました!
田仲:かたい物で、このようにこすります。

藤原:あっ、ガリガリ言う!
田仲:ガリガリ言うでしょ。

藤原:えっ?でもこれ割り箸にペンをこすりつけているだけですよね。どうして回るのですか?
田仲:分からないんですよ。真っ直ぐにしてこすると、その振動で回ってくれるというのが、ミソなんですけど。なぜかね、こちらをこすると反対に回ってくれます。

藤原:こする場所を変えたら反対に回るんですね。不思議!どうしてでしょう?
田仲:それが、分からないんです。



●スタジオ

藤原:お話にあった、どうして回るか分からないガリガリトンボ。

松本:これがガリガリトンンボですか?

藤原:スタジオに持ってきました。

松本:ガリガリトンボって、蚊トンボみたいな痩せ細ったトンボかなと思っていました。ほんとに割り箸に、針金が巻き付けてある。先に、プロペラみたいなのがありますね。これをどうするのですか?

藤原:ペンで四つの角を。

松本:四つの角ってどこですか?どこでもいいんですか?

藤原:どこでもいいです。

松本:ガリガリ?あ、ほんま、ほんまに回りま・・・あれ?

藤原:回った・・・と思ったら回ってないです。

松本:あれ?なんでや。ああ、今、回った回った、回りました。あれ?時計回りに回ったと思ったら、急に逆回転するんですね。どうしてですか?

藤原:どうも、こする角によって、回り具合が違うらしいです。

松本:すごいすごいすごい!クルクル、クルクル回って。

藤原:連続で回りましたね。

松本:確かに振動で回っているのでしょうが、急に逆回転もする。どうしてですか?

藤原:それは、ほんとに分からないそうです。後半は、懐かしの遊びなどについて、まだまだ詳しくお聞きしています。



●インタビュー後半

藤原:ところで、田仲さんは、どうしてここまで遊びにこだわっていらっしゃるのですか?
田仲:今の子どもの状態を見ていると、どうも昔と違っていて、何かまずいんじゃないかというのが理由です。第一、今おもちゃにしても、高いお金を出して買って、それで遊んでいる。それでは、おもちゃに遊ばされているわけです。こういうふうな昔からの身近なおもちゃで遊ぶべきじゃないかと。身近にある材料で、いろんなものができるから、そういうものを作ってほしい。人間形成の基本は遊びにあるのではないかと思っています。

藤原:『遊塾』、遊びの塾っていう名前もユニークですね。
田仲:遊びっていうのは、おもちゃだけではありません。女の人でしたら、お手玉がありますね。大阪ではおじゃみって言います。あれで遊んでもらったり、いろんなものがあるわけです。

藤原:そう考えると、いっぱいありますね。
田仲:『遊塾』のネーミングは、遊びというもの全部、なんでもいいじゃないか、子どもと一緒に遊ばしてもらうためにいろんなものをやろうということで付けました。いわゆる語り部なんかもありますね。メンバーには北陸の方も東北の方もいるので、方言でもってお話をする語り部も、今やろうと取り組んでいます。それから昔の女の人は手まりをつきながら、歌を歌います。わらべ歌もそうでしょ。そういうように考えると、いくらでも遊べる。

藤原:田仲さんみたいなおじいちゃんが近所にいてくれたらいいなと思います。
田仲:そうですね。



●スタジオ

藤原:田仲さんは、いろんな場所で昔の遊びを教えていらっしゃいます。子どもの中には、『おじいちゃ〜ん、私、宝箱持ってるの。でね〜、この作ったやつ、宝物の箱に入れといて、お嫁に行く時に持っていくわ。大切にするわ』って言ってくれるんですって。

松本:へえー。

藤原:そんなことを言われると、大したこと教えてるつもりじゃないけれども、「子どもさんにとって、何かいい思い出になってくれたんやったらうれしいわ」っておっしゃっていました。伺ったオフィスには、子どもたちからたくさん“おじいちゃんありがとう”って田仲さんの似顔絵を描いたものが届いていて、壁いっぱいに貼ってありました。

松本:今、いろんなものが溢れていて、遊びというと、例えばテレビゲームとかが主流ですが、うちの子なんかでも、庭に出て落ち葉とか枝とかで、一日遊んでいます。

藤原:そうですか、いい環境ですね。

松本:そういう、ちょっとした石ころでも昔は遊べましたよね。地べたがあっただけで、線引いて、いろんな遊びをしました。そういう基本的な遊びっていうのは、子どもはいつの時代でも本当は好きですよ。

藤原:そうですね。

松本:その機会がなく大人になってしまったら、“今さら”みたいなことになってしまうんですよね。

藤原:田仲さんもおっしゃっていました。テレビゲームも別にかまわないけれども、なんとなく“遊んでいる”というよりは、“遊ばされている”感じを受けると。でも、昔の遊びと言ったら、外に出て木などに触るし、葉っぱも触る。そうすると、「この植物って何だろう?」っていう考えも生まれてくるから、やっぱり違いますよね。

松本:ええ。

藤原:海外にも何度も行かれています。例えば平成8年には、アメリカのワシントンで開催された桜まつりに行かれ、その時には、子どもはもちろんのこと、大人の方まで喜んでくれたそうです。現地で旦那さんが亡くなられて、奥さんだけ残っている方がいらっしゃったんですが、そのおばあちゃんがとても懐かしがって、田仲さんを独り占め状態にして、「わー、これどうなってんの?いやー懐かしいわー」って離れられなかったらしいです。その他にも、平成12年には、オーストラリアのシドニーへ行かれました。この時も、ものすごくたくさんの方が集まったそうです。服部克久(はっとりかつひさ)さんと一緒に行って、知的障害者のコンサートと共に開催したので、本当にたくさんの方がいらっしゃったそうなんですね。その他にもモンゴルの砂漠の中で開いている写真も拝見しました。「日本と環境が違うので、語学はどうですか?」ってお聞きしたら、「いや、言葉はいらないんだ」と。「物を見せて一緒にやっているから、日本語でも通じるし、向こうが不思議がってる表情もすごく分かる」っていうふうにね。ああ、心って、そういうふうに伝わるのだなと思いました。私もつい最後には“田仲さん”ではなく、“おじいちゃん”みたいな人が近くにいてくれたら・・・と言ってしまったのですが、子ども達からも“先生”ではなく“おじいちゃん!”と呼んでもらいたいとおっしゃってました。

松本:これは、世界に対して最高の日本の大使ですね。先進的なゲームを海外に企業が出しています。そういう面と、このおじいちゃんが子どもと触れ合う、ほんとに素朴な遊び、この両極があるから日本の文化って豊かだと思ってもらえると思います。

藤原:そうですよね。

松本:どっちかだけでもだめ。両方があるから、日本ってすごい国だと思ってもらえるのではないでしょうか。

藤原:日本の新聞紙をたくさん持って行って、それで頭に被れる大きさのかぶとを作り、ベトナムの子に被せてあげたりとかされたそうです。笑顔いっぱいの写真を拝見いたしました。

藤原:NPO法人『遊塾』へのお問い合わせは、月曜、水曜、金曜の午前10時から午後3時までにお願いします。時々留守の場合もありますが、気長に電話をかけてくださいとのことです。



出演者写真 理事長 
田仲 猪佐美さん

部屋には楽しいおもちゃがズラリ!

ガリガリトンボは
割り箸をペンでこすると
勢いよくプロペラが回り出す

反対の角をこすると、
なぜか逆回転を始めるプロペラ

ガリガリ〜

あー!回った回った! 

登る紙人形も見せてくれました。
壁には子どもたちから贈られた
田仲さんの似顔絵がいっぱい

スタジオでも松本さんと一緒に
ガリガリトンボに
チャレンジしてみました

海外での活動の様子。
アメリカのワシントンにて

シドニーのオペラハウスにて

フランスのコルマールにて

ベトナムのハノイにて

モンゴルでの記念写真

カンボジアの子どもたちと

日本の子どもたちと




お問い合わせ/
TEL&FAX:06-4395-1345(月・水・金曜日の10:00〜15:00)


● 取材を終えて、感じたこと
オフィスには昔懐かしのおもちゃがいっぱいでした。田仲さんの手にかかると、どんな素材でもおもちゃに早変わり!私にとっても想い出深いものがあったので、つい興奮して手に取り、童心にかえって遊ばせてもらいました。不思議な動きをするガリガリトンボでしたが、結局のところ、詳しいことは分からずじまい(笑)。なんと、皇太子殿下の前でもガリガリトンボを披露する機会があったそうで、やはり「なぜ回るのですか?」と聞かれたそうです。

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