●インタビュー前半
藤原:『エルダーホステル協会』の活動についてご紹介ください。
大原さん(以下、大原・敬称略):知的好奇心旺盛な熟年のためにつくられた、宿泊型の生涯学習講座です。創立者は、アメリカの社会教育運動家。世界中を旅した時に、ヨーロッパのユースホステルや、フォークハイスクールという北欧の成人学校を利用したそうです。旅行後、アメリカに帰ってから、大学の寮の責任者をしている友人に、そのヨーロッパのユースホステルやフォークハイスクールに感銘を受けたことを語りました。すると、大学の寮の責任者である友人は、「大学をもっと活用するためにも、若者だけでなく高齢者のために、学習プログラムを作ろう」と言い、二人は意気投合。高齢者ということで、“ユースホステル”の代りに“エルダーホステル”という名前で、寮に宿泊をして授業を受けたり、見学したり、夜は交流をしたりという、1週間のセットのプログラムを1975年の夏に試みたのです。
藤原:その結果はどうでしたか?
大原:ニューハンプシャー州の5つの大学に、60歳以上の方が220人参加し、初めての体験にとても興奮したそうです。教える方も、若い学生ではなく、経験豊かな人たちに教えるため、反応もとても良く、非常に好評でした。1年後には参加者が200人から2000人、さらには20000人と、10倍10倍で増えていきました。80年代からは、海外にも勉強に出かけようということで、学習と旅を組み合わせたプログラムをエルダーホステルと呼び、日本にも1986年にアメリカ人グループが来るようになりました。
●スタジオ
藤原:『エルダーホステル協会』が大阪にあるのは、アメリカンセンターが大阪にあるためだそうです。アメリカンセンターの図書館の主任司書をしていたのが、豊後(ぶんご)レイコさん。今の『エルダーホステル協会』の名誉会長です。ある日、豊後さんのもとに、アメリカ人の元上司からハガキが届き、その中に「エルダーホステルが楽しみだ」という内容が書かれてありました。「エルダーホステルって、何?」と思われ、自らアメリカへ行って参加されたそうです。いろんなことを体験した結果、すごくいいことで、日本プログラムも期待されていたのですが、誰もする人がいなかったので、豊後さんご自身が日本プログラムを起こされました。後半は、具体的な内容についてお聞きしています。
●インタビュー後半
藤原:日本の『エルダーホステル協会』の活動についてお教えください。
大原:アメリカの方を受け入れたのが、最初の活動です。その後、日本人版エルダーホステルの活動を始めました。原則として50歳以上の日本の中高齢者が、国内で宿泊して学ぶ、また海外へも学びの旅に出ていくという活動です。それを私どもは“講座”という堅い言葉で呼んでいます。また、関西の会員の方たちは非常に積極的かつ行動的で、例えば“私の町にいらっしゃい”という自分の住んでいる街を紹介する1日プログラムを考えられたり、講師を招いてのセミナーなどを企画されたりしています。豊後名誉会長がコーディネーターを務めるエルダーサロン、会員の意見交換などの活動もやっています。
藤原:具体的な講座やテーマをご紹介ください。
大原:アメリカ人対象の講座は、日本の社会や文化に関するものが多いですね。日本人対象の場合は、文化的なものや歴史、健康や経済、社会情勢、政治情勢など様々です。
藤原:海外から来られる方を、どこで、どれくらいの期間受け入れられるのですか?
大原:宿泊先は、大阪、京都、奈良、東京、金沢、松江、高山などです。これらの3ヵ所か4ヵ所を結びつけた約2週間のプログラムを組みます。あまり年齢制限にこだわらず、一方が55歳以上ならお連れの方は何歳でもいいとしています。受け入れは、年6〜7回、春と秋、季節のいい時に受け入れています。
藤原:実際、来られる方は、どのような方が多いのですか?
大原:平均年齢70歳ぐらいですが、退職された方がほとんどで、元エンジニアとか、学校の先生、医師、弁護士、自営業の方などです。みなさん非常に活動的で、女性の場合も図書館司書など教育関係の方も多く、未亡人、独身の方もいらっしゃいますが、夫婦で参加というパターンが特徴として言えますね。それから、日本に本当に興味があるタイプの方と、昔アメリカでホームステイファミリーとして日本人を受け入れた方や、日本に子どもや孫が住んでいるので会いたいという方たちですね。本当に歌舞伎が大好きで、同じプログラムに3回、4回繰り返して参加される方もいます。日本は宿泊費・交通費が高いので、他の国よりも滞在費が高くつくため、参加される方は裕福な方が多いですね。
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専務理事
大原美和子さん |
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エルダーホステル協会の交流講習会。
海外のお客様を松山空港にて
お見送りです。
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「ニューヨーク講座」で、
懇親会を行ったときの様子
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「日本学講座」開催で、
大阪府立老人総合センターへ訪問
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四万十川の河原で拾った材料で、
楽しくモノづくりをしています
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大原さん「これが私たちの
活動で・・・」
藤原「ふんふん・・・」
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藤原「国際的で、楽しそう」
大原さん「多くの方に
参加していただきたいですね」
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●スタジオ
松本:日本に興味がある、またアメリカでホームステイの世話をしたから逆に日本を訪ねてみたいとか、理由はいろいろあると思います。個々の理由は別として、市民レベルの交流の窓口としては非常にいいと思います。ただ、日本は滞在費が高いので、どうしても裕福な一定層に限られているというのは、少し残念なところですね。
藤原:そうです。
松本:こればかりはお金のからむ問題ですから、その辺が改善されていけば、もっと素晴らしい交流ができるのではないかと思います。
藤原:また、近々のイベントや入会案内などについては、HPをご覧ください。
お問い合わせ/
TEL:06-4395-1222
http://www.jpelder.org
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● 取材を終えて、感じたこと |
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様々な経験をされ、知識もある熟年層の宿泊型生涯学習講座。好奇心旺盛な人達の集まりだけに活動内容も幅広く、国際的でとても楽しそうでした。中でも「私の町にいらっしゃい」という日帰りツアーに、とても興味深いものを感じました。このツアーは、「ワッハ上方」や「朝日新聞社」、「中央公会堂」のバックヤード等、普段は見ることのできない場所を案内してもらえるそうで、貴重な体験ができるとのこと。「大阪の住民が、大阪の町(私の町)の良いところを紹介したい!」と頑張っておられることが感じ取れました。
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