●インタビュー前半
藤原:まずは、理事長の尾崎幸一さんに伺います。NPO法人『アメリカ村ヒューマンパワー養成協会』の活動内容を教えてください。
尾崎さん(以下尾崎・敬称略):アメリカ村にはいろんな職種の起業家がいます。その起業家たちの仕事に対する志を、若い人たちに伝えていきたいというのが設立の目的です。技術を教えるということはできませんが、実際社会に出て生きていくためのトータルな力、“人間力”をつけて欲しいというのが願いです。一番大切なのは自分自身でものを考えること。まずは自分でものを考えなさい。それが第一で、それから、人に伝える、人の話を聞くといった基本的な力をつけていっていただきたい。そのためには、たくさんの人からものごとを吸収して、実際自分たちが体験したことから力をつけていって欲しいと考えています。
藤原:このような活動を始められたきっかけをお聞かせください。
尾崎:4年ぐらい前になりますが、アメリカ村や心斎橋周辺を調査した結果、たくさんのIT企業が集まっていることがわかりました。それをもとに、“ファッションの町、アメリカ村”という形に終始するのではなく、関西経済連合会や関西経済同友会のみなさんと一緒に、大阪から何か新しい事業を生み出していこうと、「関西IT戦略会議」ができました。そこで私たちは「ブロードバンド・ギャラリープロジェクト」を提案。これはIT の光回線を使って、いろんなクリエイターの方や新しいものを作っている方の情報や作品を発信していこうというものです。そうした活動では、コンテンツが大切となります。コンテンツとは、つまり「人」。おもしろい人がいるから、おもしろいことをして、それがコンテンツになる。それなら、もっと根源的に「人」を育てなければいけない、もっと若い人やおもしろい人を育てていきたいということになり、それが、現在活動している「エッグプロジェクト」に続いています。
藤原:「エッグプロジェクト」とは、なんですか?
尾崎:「エッグプロジェクト」は、毎週水曜日と土曜日に定期的に続けているプロジェクトです。水曜日は、各界の現役で活躍されているいろんなジャンルの方に体験談を話していただき、塾生が聞きたいことを尋ねながら進めるコミュニケーションのための教室です。
藤原:講座というよりも、質問を通してコミュニケーションをしていくという感じですか?
尾崎:そうです。人の話を一方的に聞くのでは、あまり勉強にならないと思います。会話を通して学んでいく形を想定しています。
藤原:土曜日はどのようなことをされているのですか?
尾崎:土曜日は少し時間を使って、「町が教室」であるということを想定して実践しています。町に出て行ったり、町にある企業にお邪魔して、そこで勉強させていただいたり、色々なテーマを社会の中で実践して、やり遂げることを教えています。
●スタジオ
松本:一律にはかることができないのですが、現在、無気力な若者が多くなってきていることは確かです。しかし、逆に高い志を持っている優秀な人もたくさんいて、ポーンと起業家になる人もいれば、志はあるけれどもどうすればいいかわからない、具体的にどうアクションを起こしたらいいのかわからないという若い人たちも多いと思います。
藤原:実際に現在活躍されている起業家の方、著名人を呼んで学生とのコミュニケーションをとる。具体的な何かを教えてもらうのではなく、聞いた学生さんが話からヒントを得て自分なりに吸収し、会話力や人間力を高めていくという活動をされているわけです。「ブロードバンドギャラリープロジェクト」では、今活動しているアメリカ村のお店同士がパソコンを通じて交流をしています。パソコンが一台あればどこからでも情報を取り入れることができる。新しく作られたものやアート作品なども見ることができる。すると、アメリカ村の中の連帯感を保つことができます。後半はこのプロジェクトに参加されている方にもっと詳しくお聞きしています。
●インタビュー後半
藤原:「ブロードバンドギャラリープロジェクト」に参加されている清風情報工科学院の越智郁也さんとバンタンデザイン研究所の野尻孝政さんにお話を伺います。まず越智さん、このプロジェクトに参加されてみてどうでしょうか?
越智さん(以下、越智・敬称略):私どもの学校は、コンピューターについて教えていますが、先ほど尾崎理事長のお話にもあったように、「コンテンツ=人」という理念を掲げています。もともと、私どもも、「ソフト=人」という考えで学校を運営しており、同じ考えに共感し、今回参加させていただきました。
藤原:続いて野尻さんいかがでしょうか?
野尻さん(以下、野尻・敬称略):私どもバンタンデザイン研究所では、デザインをキーワードにファッション、ヘアメイク、インテリアの専門学校を運営しています。当校のコンセプトは実学ですが、近年の問題として、就職しても三ヶ月から三年で辞めてしまっている卒業生がいるという現状があります。そうした現状の中、当校のカリキュラムの課題でもある人間力、メンタルタフネス、目標を持つ力、持続する力、コミュニケーション能力といった実際に業界に入った時に即戦力となり得るようなスキルを培えるカリキュラムのノウハウを、このプロジェクトの中で見つけていけたら、ということで参加させていただきました。
藤原:運営の手伝いをされている、学生スタッフの磯辺武秀さんにも伺います。磯辺さんは立命館の現役大学生ですが、どうして運営を手伝おうと思ったのですか?
磯部さん(以下、磯部・敬称略):僕は二十歳の時に大学に行きながら会社を立ち上げたのですが、こうした町の経営者の方々と触れあう中で自分自身が成長できました。そこで、同世代の人たちも、もっと早くから町の経営者の方々とコミュニケーションをとれば、自分にとっていい効果が現れるのではないかと考え、お手伝いをさせていただいています。
藤原:学校に行きながら会社も立ち上げるというのは大変だと思いますが、同じ学生として、ここで勉強している若者のことをどのように感じていますか?
磯部:授業を受けるごとに顔や目つきが変わってくるのがわかります。刺激を受ける中でぼんやりしていた自分の目標が、だんだん明確になってきて最後には人前で自分はこういうことがやりたいとしゃべれるようになるという変化は、確実に現れていると思います。
藤原:ここに学びに来ている学生たちは、どういう志で来ている人が多いのでしょうか?
磯部:志というよりはまだ前段階だと思います。自分で何をしたらいいのかわからないけれども、何かモヤモヤしているという人たちがほとんどではないでしょうか。授業から刺激を受けて、だんだん自分の中に眠っていた本当にやりたかったことが芽生えだし、そこから目標が生まれ、志が出て来るのではないかと思います。
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理事長
尾崎 幸一 さん |
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野尻 貴将さん |
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越智 郁也さん |
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磯部 武秀さん |
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私たちの教室は町なのです
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テーマを決めて企画を立てていきます
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どのようなことが始まるかワクワクします
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みんな、思い思いの発表をします
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各チームのテーマは十人十色です
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時には場所を変えて授業を行います
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塾活動中はいつも笑いが絶えません
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面白いと、塾長(写真手前)も
思わず笑顔がこぼれます
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