藤原 まず、お伺いしますが、この天保山は、どういった山なのでしょうか?自然の山なのですか?
橋本さん(以下:橋本・敬称略)
天保山は江戸時代の天保2年、3年にかけて、船の航路を確保するために安治川の土砂をすくい上げて造った人工の山で天然の山ではありません。
藤原 日本でいちばん低い山って、どういう意味ですか?
橋本 江戸時代、当時は決して低い山ではなく標高20mぐらい。周囲を見渡せる格好の高台でした。
藤原 現在4.5m。どうして20mから4.5mに低くなったのですか?
橋本 天保山ができて、10年ぐらい後にロシアの黒船がここに入港してお台場になりました。その時点で標高が半分ぐらいになり、さらに地下水のくみ上げなどで地盤沈下を起こして、天保山の標高はどんどん下がっていったということです。
藤原 歴史とともに変わってきたんですね。
●スタジオにて
藤原 取材当日、私も天保山に登りました。最初に難しいんですよっていう風に言ったのですが、実際本当に難しくて、遭難される方がいらっしゃいます。
と言うのは、山が好きで全国各地のいろんな山を登ってらっしゃる方が地形図を見ながら、「天保山ってどこかな?」っていう方はすんなり来れるんです。でも、観光客の方で「こんな噂を聞いたから天保山ってどこやろ?」っていう風に来られる方が地図を見ながら来た場合は、なかなか地図が読めないんです。
そういう意味でちょっと迷って“遭難”したよっていう話を聞いてきたんです(笑)。山の遭難というより、“山探し”、「山見つかれへんかった」というやつです。でも見つけた時の感動、喜びは大きいですよ。天保山はサクラの名所でもありますし、ツツジもたくさん咲く場所です。本当に季節ごとに楽しめますし、海もみえるので、開放的で本当に天気の良い日はお散歩もすごく気持ちのいいところですよ。後半部分もいろんなこと聞いています。
●インタビューにて
藤原 ところで、この天保山山岳会は、いつごろ、どんなふうに始められたんですか?
橋本 地形図によって、日本一低い山が天保山であると私どもが認識して、せっかく日本一が地元にあるのだから、町おこしのために観光地にして、全国の方に知っていただきたい。そういう目的で山岳会を結成しました。
藤原 登山証明書が発行されてますけれども、これはいつ頃から始められたのですか。
橋本 平成10年の8月22日から発行しています。今までに、通算4万3200人ぐらいに手渡しました。
藤原 またいろんなイベントもされているそうですね。
橋本 標高が4.5mですので、4月5日に「サイテーお花見登山」という登山をしまして、天保山公園が花の名所、サクラの名所ですので、その年のトレンディな場所を巡って、登山をするというような企画をしています。それともうひとつ、恒例の行事として、元旦の午前7時に「元旦ご来光登山」というのをおこなっていて、登山証明書のナンバー1を決めるという行事をしています。
藤原 その登山証明書を発行してもらうには、どうしたらいいんでしょうか。
橋本 港区の天保山公園の中にある天保山の山頂に二等三角点がありますが、そこに来られたらもらえる方法が書いてあります。まず登山して山頂を探していただくことが大切です。
藤原 この辺り、本当に緑も多いですし、風も気持ちいいですから、散歩がてら遊びに来て、せっかくですから登ってもらってということですね。本当に、私も今日いただきましたけれども、なかなか面白いですね。最後にお聞きしますが、橋本さんにとって、これやから大阪はいい!という点をお聞かせください。
橋本 特別自慢できるようなことは私自身あまりない思うんですが、人間が面白いということ。天保山に来ても、ただ日本一低い山の山頂に来たというだけでは面白くないので、登山証明書を受け取って、その“イチビリ精神”をもった人同士の心のふれあいというか、そういう大阪人の考えた面白さというものを感じていただいたらいいかなと思います。
藤原 登山証明書は、ちょっと持っているだけでお洒落ですよね。
橋本 ちょっと可愛いと思いますし、“最低体験”をされた方は、これを携行していると、将来登る一方のお守り代わりとして、携帯できますので、ぜひ所持していただきたいなと思います。
藤原 私もお守りにさせていただきます。今日はどうもありがとうございました。
橋本 ありがとうございました。
●スタジオにて
藤原 お守りには、「登山証明書」と書いてあります。「あなたは海抜4.5mの日本一低い山の頂上を極めました。よってその快挙をたたえ、あなたをイチビリ精神の持ち主であることを証明致します」。ちゃんと橋本さんが「あなたは今年、1596番目の登山者です」という風に渡してくださったんです。
山頂を探していただいて、登っていただいたら、ちゃんと地図が書いてますので、登山証明書を発行してもらう場所っていうのが分かるようにはなっているんです。どこで発行するかといいますと、喫茶「山小屋」へ行って発行してもらいます。ここに橋本さんがいらっしゃいます。「私登りましたよ」という自己申告をしていただいて、10円払ってもらうと、この登山証明書をいただけるということなんです。日本で一番低い山に登ったから、それが今、一番最低ラインということで、これからは上向きにしかないだろうという意味でのお守りですから、私すごく大切にしようと思っています。
是非登ってみてください。この天保山の行き方ですが、地下鉄中央線の大阪港駅から、天保山方面、つまり海側に5分ほど歩いてください。天保山公園がありますので、その中に山があって、そして三角点がありますので目指していってください。登山証明書を発行する天保山山岳会は、橋本さんを含めて3人で運営されています。窓口は、橋本さんが経営する喫茶『山小屋』です。山小屋は、大阪港駅を出て、天保山と反対側にあります。低い山と思ってもあなどってはいけません。遭難することもあるそうですから。そしてその天保山の登山を終えたら、マーケットプレースや海遊館、サントリーミュージアム、観覧車など、楽しいところがいっぱいありますから、ぜひそちらへもお立ち寄りください。 |
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「天保山山岳会」
橋本 誠さん |
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頂上には、登山証明書の発行先を案内するお知らせがある |
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登頂したら“いちびり精神”をたたえて発行される「登山証明書」
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毎年、4月5日におこなわれる「お花見サイテー登山」
みんなで山の頂を制覇!!
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小さな子どもも一生懸命歩きます
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山頂の上空(!?)には、なんと橋を車が通っている!
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みんなで登頂できたことに万歳三唱 |
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山頂のすぐ横には海、対岸にはUSJが見える
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