藤原 国際芸術文化センターの事務所にやってきました。周りには、あっと驚くような人形、それからいろんなオブジェが置かれています。びっくりしたのが、108の煩悩で表現されたマネキン人形のオブジェなんですけど、すごくカラフルなペインティングで人間の「欲」、それから「感情」などを表現されているようです。
このNPO法人国際芸術文化センターは、どんなことをしようと、設立されたのでしょうか?
関本 まず基本的には、美術とか芸術で社会を元気にする、人間を元気にする。これはアーティストとしてやっぱり人をハッピーにさせる、それで自分もハッピーになれる。それがいちばん重要なことですけれども、今いちばん気にしているのは、子どもたちがナイフで人を刺し殺すなど・・・。これは多分政治というか、戦後の文化教育をないがしろにしてしまった僕ら大人の責任でもあると思います。いわゆる感情で自己表現するなどの情操教育みたいなものです。これを戦争に負けて、なんとか経済を復興せなあかんということで、ソフトよりもハードを優先していったという“ツケ“が回ってきてる。そういうことを少し考えて、社会に対して我々はどう関わっていくのか、アーティストは基本的に自分だけの世界なんですけども、そんなことばっかりやっても意味があらへん。やっぱりアートというのは、社会とはじめて関わっての作品が生まれてくるものでだから、いかに社会と関わってくるかっていうことがひとつのネックになっていると思います。
藤原 どのような事をまず始めようと思われたんですか。
関本 社会的な活動として意識し出したのは、95年に起きた阪神大震災で、僕らも被災者で家がぐしゃぐしゃになってしまって、その中で僕自身が救われたのがやっぱり音楽だったんです。自分は美術をやっていながらも、なんで美術が力になれないのか、そこら辺でもうちょっと美術と社会がどう関わっていくのかということをまじめに考える必要があるんじゃないかなということで、アートプロジェクトとして僕は「みんなが幸せになれる自分もそれによって幸せになれる」というプロジェクト「楽園計画」をまず立ち上げました。それが最初におっしゃったように百八煩悩というか、要するに欲望というのは、元々この百八煩悩というのは、宗教的に言えば欲望というのは、否定している部分なんですね。でも、僕は「欲望が生きるためにいちばん大事なことである」と思います。飯食いたいとか、金が欲しいとかいうのも、それは生きる原点になってきている、欲望を大事にしていこうやないかと。もう生きてるだけでいいじゃないかと。要するに生きる力を美術というかこのプロジェクトで与えていこうということから始まりました。
藤原 活動として、どんなことをしてきてるんですか。
関本 今うちのNPO法人でメインでやっているのは、近代産業遺産のアート再生計画っていうのをしています。先ほど言ったように、戦後ハード優先できて、結局経済が衰退してくると、工場とか乗船場とか、どこでも全部潰れていってしまって、建物だけが残ってしまっている。我々の豊かな生活を支えてくれた現場が今、なんの価値も見出せずに廃墟化しているという。こういうのを我々は無視し続けていいのだろうか、やっぱりここに新たなアートっていうソフトをつぎ込んで、廃墟でもって、そこをもういっぺん再生していって、それを再生することによって、地域の活性化になり、そこに新たな観光資源として作り出していこうということが、うちのNPO法人としては、今いちばん力を入れているプロジェクトのひとつです。
現在僕らが今やろうとしているのは、ただ単に建物をいじるだけではなく、風化された記憶や震災、津波とか火災、あと市町村で合併で名前がなくなった町とか村とかを抽象的なイメージで表現しています。歴史とか伝承みたいなものを、ただ単に伝承的に見せるんじゃなしに、もうちょっと裏のあるというか、今まで人間が生きてきたいろんな歴史をアートというソフトでどういう風に表現していくかをやりたいと考えています。
NPO法人国際芸術文化センターの活動に興味を持たれた方、ホームページをご覧ください。関本さんの百八煩悩の写真なんかもこちらで見ることができます。
検索サイトで、『国際芸術文化センター』と出していただければ、すぐ出てきます。 |
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NPO法人
「国際芸術文化センター」
代表理事
関本徹生さん |
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作業場風景
作業場には、108の煩悩で表現され、命を吹き込まれたマネキンたちの姿。 |
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NPO法人
「国際芸術文化センター」入口
入口にも、特徴的なアートで表現されている。 |
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建物階段
階段にもカラフルなペインティング。 |
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オブジェ1
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奇抜な色、すべて顔も表情も違い、ここはまるで異空間!
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岡本さん自身が手がけた「楽園計画」ポスター
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