最近、手話を活用したイベントやドラマなどがあり、いろいろなところで手話を目にする機会が増えています。それだけいろいろな方に注目されている手話ですが、今回は、鶴見区で手話を使った活動をされている『鶴見区手話通訳研究会』の活動をご紹介します。会長の西田豊子(にしだ とよこ)さんにお話を伺います。
松本:『鶴見区手話通訳研究会』ができたのは、何年前ですか。 西田さん(以下、西田・敬称略):できたのは、10年ぐらい前です。 松本:西田さんはそれよりずっと前から手話を ・ ・ ・。 西田:はい。30年ぐらい前になりますね、聴覚障害者の方と交流がありましてね。 松本:どんなことがきっかけでその交流が始まったのですか? 西田:私の場合は、近所に聴覚障害者の方が住んでいらっしゃって、その子どもさんが、私の子どもと同級生でした。その方が学校行事に参加しないので、おかしいなと思って尋ねてみたら子どもさんが、学校の行事などの資料や通知をもらってきても、それを親に渡していないということがありました。30年前のことですので、当時はまだまだ障害のある方を世間から隠そうという風潮があって、子どもが自分の母親を学校に連れ出したがらなかったんです。それを見て、この方たちと会話をするのは、どういう方法かな。ジェスチャーではないし、これは手話が必要だと思って、そこで朝日カルチャーの手話教室に行って勉強を始めたんです。 松本:朝日カルチャーセンター、“朝カル族”なんていう言葉が流行語になりましたけど、西田さんは、いわばその元祖と言ってもいいわけですよね。 西田:そうですね。その時に、新聞にも大きく載せてもらったので、引くに引けなくなって(笑) 。 松本:西田さんご自身が、新聞に掲載されたことがあるのですか? 西田:今でも大切に持っているんですけど、まだ若くて奇麗だったんですよ(笑) 。 松本:朝日カルチャーセンターを終了されてからは、どんなことをされていたのですか? 西田:鶴見区福祉協会の主催で第1回の講習会があったんです。その時に、私も参加して、習いました。 松本:『鶴見区手話通訳研究会』を作られたのは、どういう経緯からですか? 西田:鶴見区社会福祉協議会の会長、田中富一(たなか とみかず)さんから、「鶴見区にはやっぱり手話通訳が必要、障害者と共に社会の声になってくれないか」という依頼を受けてできたんです。 松本:それが何年前ですか? 西田:これが10年程前です。 松本:その時のメンバーは、何人ぐらいいらっしゃるんですか。 西田:メンバーとしては20人程でしたが、やはり技術も伴いますし、正確な情報も持てる人でないといけませんので、私たちが作っているサークルの中でも5年以上を経験した人しか、条件としては認めてなかったんです。 松本:単なる親睦団体じゃないですからね。 西田:そうです。 松本:5年経験すると、手話で技術を正しく伝えられるということですか? 西田:いいえ、まだまだです。まだまだですけれども、一応単語などは覚えられます。 松本:メンバーになるには、やはり最低5年ぐらいはないと、という感じだったんですね。 西田:はい。 松本:最近は、手話を勉強したい方、また興味のある方が増えているような気がするんですが、その辺はどうですか? 西田:確かに、増えています。 松本:その理由は? 西田:テレビなどで放送され、多くの人たちが見慣れてきたのではと思います。そして、また社会参加されるでしょ。だから、手を使っての動き、これがまた日本語とは違う、“目で見る言葉”というのか、そんな魅力をみんな感じていらっしゃると思うんですけど。 松本:確かに見慣れてきたっていうのはありますよね。西田さんが手話を始めた30年ぐらい前でしたら、手話自体が何をしているのか分からないっていう方もたくさんいらっしゃったと思うんですけどね。 西田:手を使ったら格好悪いという、時代の風潮でしたね。そういう時代でしたから仕方がないですね。 松本:今は手話を通じたコミュニケーションというのは、かなり認知されていますからね。 西田:そうなんです。 松本:『鶴見区手話通訳研究会』の活動内容を教えていただけますか。 西田:鶴見区の中ですが、区が開催する公共のイベント、講習会や区民まつりなどの行事に出て行って、その場で手話通訳をします。また、小学校や女性会、中学校、PTAからの依頼を受けて、手話通訳の講師を務めることも多いです。
松本:学校などで手話を使ったイベントをされて、結構好評なんだそうですね。 西田:好評です。主に各小学校から来てほしいという依頼があって行くんですけど、小学校では、『手や指で話そう交流会』という手話で親子のキャッチ学習を行うんです。これが大変好評なんです。例えば、「おはようございます」とか「お母さん、行ってきます」「ただいま」「おかえり」といった一日のあいさつの手話、これを親子でできる。子どもたちにとっても、手話がお母さんと通じた!とか、そうしたやりとりが新鮮な感じになるのでしょうね。 松本:子どもたちにとっては、手話も一つの、自分たちのコミュニケーションの手段という感じで普通に受け入れているわけですね。 西田:そうですね。また、そうなってほしいなと思います。教科書に載っていないことを自分がする。先生や学校の授業で習っていないことも僕はできる。これを親の前でするから、ちょっと誇らしいみたいなんです(笑) 。学校の先生からも「子どもたちがウキウキしてますよ。ハイになってますわ」と言われます。 松本:子どもたちは、「僕にもこんなことができるんや」っていう喜びを一つもらえるわけですね。 西田:そうですね。 松本:手話を通して、いろんな方と交流をされている西田さん、これからもお元気に活躍していただきたいと思います。 西田:ありがとうございます 。 松本:今日は、お忙しいところ本当にありがとうございました。 西田:こちらこそ、ありがとうございました。 藤原:『鶴見区手話通訳研究会』について、詳しくは、鶴見区コミュニティ協会にお問い合わせください。