飛鳥川(奈良県橿原市)

住民の協力でよみがえった
飛鳥川沿いの散歩道
〜飛鳥川散策シリーズpartU〜
2009年3月21日放送

飛鳥川散策シリーズ、今回は奈良県橿原市に来ています。奈良の飛鳥川は、高取町や明日香村、ここ橿原市や田原本町などを流れ、川西町で大和川に注いでいます。目の前を流れる飛鳥川は、幅が6mぐらいで、流れはとても穏やか。奇麗に清掃された堤防では、数人が自主的に花の手入れやごみ拾いをしています。ここをこれから、「万葉飛鳥川長寿散歩道の会」事務局長の畑修次さんの案内で散策します。

手作業で始めた散歩道の再生


万葉飛鳥川長寿散歩道

 近鉄八木西口駅から国道24号を南へ。飛鳥川の堤防に上がり、さらに100mほど上流方向に来ています。
 ここから上流方向に660m、南八木町と小房町の右岸堤防上の道を、「万葉飛鳥川長寿散歩道」と名付けています。これから、道の両側にナナヨウザクラが連なって咲きますが、満開の桜の枝が飛鳥川に斜めに垂れ下がっている光景は見事です。

 この道は以前荒れていて、それを見た畑さんが立ち上がったとのこと。
 背丈以上の雑草が生い茂り、まともに歩ける状態ではなく、犬の糞に虫が付き、入っていけませんでした。定年間近の8年前、奈良や社会にお返ししたいと思って町おこしの勉強を始めると、ここがひどい状態になっていることに気づき、活動を決意しました。そして、南八木町と小房町の掲示板にポスターを張って呼びかけるなどした結果、64名がカマなどの道具を持って集まってくれ、手作業で草刈りを始めました。2年がかりで奇麗にした後、オシロイバナやコスモス、ヒマワリなどの種を集め、植栽に入りました。

 花を植えたのには理由があります。
 花が育つと、雑草に栄養が行かなくなるからです。今は、スイセン2500球とチューリップ200球の他、150種類以上の花が咲き乱れます。近所の人がペットボトルで水やりをしてくれるなど、大変に熱心な人が多くて助かっています。入会希望者も増え、一時は会員が80名を超えましたが、ボランティア保険に入る予算が限られ、今は30人に絞らせてもらっています。非常に申し訳ないことです。

 「奈良県ボランティア・リバー・サポート」の看板があります。清掃活動もしているようです。
 奈良県と協定を結んで行っています。月に1度の清掃活動が条件ですが、距離が長くて花壇も多いため、月1回の作業ではとても追いつかず、それ以上の活動をしていると思っております。

 活動開始時に比べ、水も奇麗になったとのこと。
 先月の水質調査時にペットボトルに水を入れ、何回も測定しましたが、(見た目は)自動販売機で買ったような水が収まっておりました。蛍も復活し、一昨年は2〜3匹、昨年にはたくさん飛んでくれました。

 

命の水を大切に

 8分ほど上流方面に散策。スイセンが甘く香ります。
 この堤防から見る桜は有名で、橿原市立八木中学校の校歌にも歌われております。群れになったスイセンも、もう春だぞと言わんばかりに奇麗に咲き、実にいい香りがします。

 畑さんが万葉集のこんな歌を紹介してくれました。
   命を幸(さき)く 良けむと 石(いわ)走る
   垂水の水を 結びて飲みつ
 私の人生が幸せになるよう、滝の水を両手でしっかりくんで飲みます、という歌です。川の水がいかに大切か。地球上には11億人もの水に困っている人がいる一方で、小さな日本の国には地球を11周もする長さの川が流れています。国民がもっと川に心を寄せ、水質はもちろん、景観の向上にも力注いで、地球上の生きとし生けるものに感謝を込めて、次世代に引き継ぐことを願っております。

 散歩道の会には、三つの活動目的があるそうです。
 一つめは、水を奇麗にして万葉の清流を取り戻すこと。二つめは、この道を市民の健康増進の道にすること。ここでベンチに座り、花を見て、心も健康になってもらいたい。そして、三つめは、観光の道。この道は、小房観音、藤原京、明日香、山辺の道へとつながっております。昔を学び、今を知って、未来に夢を持つための道にしたい。

 畑さんは、この飛鳥川で遊んだ経験があるそうです。
畑 子供のころはよく遊びました。みんな黒いふんどしをし、顔も焼けていたので、「黒猫」と呼ばれていました。子供たちは大事です。蛍や鳥がより下流の方へ飛んでいくよう、これからもきちっと活動をして、橿原市民としての義務を果たしたいと思っています。

 

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畑さんと

飛鳥川沿いを歩き、スイセンやツバキなど色とりどりの花を楽しみました。万葉飛鳥川長寿散歩道の桜や花々を見て、皆さんに元気になってほしいと、畑さん。桜はまだでしたが、皆さんが活動されている姿を直接見て、私は本当に感動しました。そして、その気持ちが植物に伝わっているのだとも感じました。