花井さんと大和川をバックに

大和川を奇麗にする
たった三つの心掛け
大和川流域生活排水対策社会実験
2009年2月14日放送

まだまだ寒い日が続きますが、立春が過ぎて、大和川は冬から目覚めて眠い目をこすっている状態かもしれません。そんな大和川で今日からスタートしたのが、「大和川流域生活排水対策社会実験」です。この番組でも、何度か皆さんにご協力を呼びかけてきましたが、今回はその内容や行われる理由などについて、詳しく取材することにしました。モデル地区になっている川にも出掛けるつもりです。

ほんの1滴が大和川を汚す

 まずは、国土交通省大和川河川事務所河川環境課の花井敦志さんに社会実験の概要を伺いました。
花井 約215万人の大和川流域住民に、1週間集中して、大和川や支流に台所からの汚れた生活排水を流さないようにしていただくもので、今回で6回目となります。大和川の場合、汚れの原因の80%以上が生活排水といわれているため、これを減らすことが水質を奇麗にすることにつながります。 社会実験では、一人一人が汚れた生活排水を減らすことで、実際に大和川が奇麗になることを実感できます。また、各家庭で汚れた生活排水を流さないようにする工夫をし、体験していただくことが大変重要です。

 過去の社会実験では、どんな結果が出たのでしょう。
花井 昨年2月の実験では、汚濁負荷量が測定した9カ所の内、7カ所で減少しました。例えば、奈良市の秋篠川では実験前には1日あたり74kgだったのが、実験中には43kgに減っています。また、アンケートによると、流域全体で19・2%、重点的に広報を行った5カ所のモデル地区では最高で74.3%の世帯が、社会実験に参加しました。

 参加するには、どうしたらいいのでしょう。
花井 食事は食べる分量だけ作って「残さない」。食器等の汚れは洗う前に古い布で「ふき取る」。食べ残しは三角コーナー等を利用し、汁物は新聞紙等にしみ込ませてごみとして捨て、「流さない」。この三つをお願いしています。

 花井さんが、COD(化学的酸素要求量)のパックテストをしてくれました。
花井  パックテストの試薬で水道水を検査するとピンク色に変わり、汚れの具合を表すCODが0を示しましたが、同じ水にしょうゆを1滴垂らしてから検査をすると緑色になり、CODが20であることが分かります。川にビールをコップ1杯流すだけで、魚がすめる程度の水質に戻すためには、お風呂約8杯分(約2400リットル)の水が必要になります


モデル地区・橿原市の取り組み


加藤さんと

 今回の社会実験でモデル地区の一つになっているのが、奈良県橿原市域の飛鳥川。今度は橿原市役所で、環境対策課の加藤智治さんにお話を伺いました。
加藤 橿原市では、「広報かしはら」にチラシを折り込むとともに、飛鳥川流域の6小学校で児童全員にチラシを配布して、社会実験への参加を呼びかけています。また、市内最上流域にある橿原市立畝傍中学校は、科学部が普段から河川での活動をしていますが、社会実験ではチラシ配布のほか、飛鳥川の採水もお願いしています。

 

 民間団体の協力も得ているようです。
加藤 「万葉飛鳥長寿散歩道の会」は、普段から飛鳥川沿いの道に花壇を造り、清掃活動もひんぱんに行っている団体で、今回の社会実験では、採水とアンケートの配布を快く引き受けてくださいました。

 社会実験に合わせ、イベントも行われています。
加藤 かしはら万葉ホール他で「環境パネル展」を開催し、川の水質汚濁や地球温暖化に関するパネル展示、啓発ポスターや標語等の入選作品を展示しています。

 橿原市は飛鳥川流域の他の自治体と一緒に、日ごろから取り組みを行っているそうです。
加藤 川西町、三宅町、田原本町、明日香村と「飛鳥流域生活排水対策推進会議」を作って取り組んでいます。その一つに使用済み食用油の回収があり、回収油でリサイクル石けんを作って、油を持ってきたくれた市民にお渡ししています。

 橿原市単独でも取り組みをしているそうです。
加藤 話し上手な環境対策課の若手職員が市内の希望する小学校に出掛け、4年生を対象に出前授業をしています。少量でも油やしょうゆ等を直接流すと川が汚れることを子供たちが学び、それを親に伝えることで、家庭での実践につながるし、小さい時に学んだことは大人になっても意識の片隅に残るだろうと期待しています。また、NPOや企業等が集って自らの環境活動を紹介するイベントを、今年も秋に予定しています。

 

 

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飛鳥川

橿原市役所の加藤さんは、生活排水に取り組むことで、万葉集にも詠まれてきた由緒ある飛鳥川に清流が復活し、子供たちが水遊びする川になればいいとおっしゃっていました。日ごろから、「残さない」「ふき取る」「流さない」の三つを心掛ければ、皆さんの身近な川にも必ずその成果は出ることでしょう。