三代川

三代川を一緒に守る
農家と地域住民たち
〜「三代川愛護会」の活動〜
2009年2月7日放送

三代(みよ)川は、奈良県斑鳩町内で始まり斑鳩町内で大和川に合流する短い川。足元を穏やかに流れる川筋は幅10mほどで、亀やコイがたくさんすんでいます。一帯の風景からは、一面に広がる農地がJR法隆寺駅方面から徐々に宅地化していった様子が読み取れます。この三代川は自然が造り上げたものではなく、人の手により出来上がった川だとのこと。そこには、どんな歴史があるのでしょうか。

受け継がれる「つゆ張り」の心


目安・融念寺にある
助宗を祭る「断恨碑」

 「三代川愛護会」会長で、65年にわたって農業をされている上田喜通(よしゆき)さんを訪ね、三代川の歴史や三代川愛護会の活動について伺いました。
上田 三代川は地域の水田の排水を良くするために農家が掘った川です。300年ほど前の亨保年間に大雨で大和川が決壊し、三代川の排水ができず、ここ目安をはじめとした五カ村が大水害に見舞われました。そこで、目安の庄屋だった助宗(すけそう)が、私財をなげうって大和川との合流点を掘削したと記録されています。上流部分は各農家が掘って出来ていったと思われますが、はっきりとは分かっていません。

 三代川愛護会はどのようにスタートしたのでしょう。
上田 目安、服部、小吉田、稲葉、五百井(いおい)の5カ村が米の出来高に応じて費用を割り振って三代川を管理する「五カ村のつゆ張り」が、200年間ほど脈々と受け継がれてきました。大和の方言で水路を「つゆ」、修理や清掃をしてうまく機能させることを「張る」と言います。しかし、昭和41年、農家だけでは難しくなった管理を地域住民と一緒にしていこうという機運が高まり、三代川愛護会が発足しました。農家以外の、地域の新しい住民への加入呼びかけは、当初なかなか理解されませんでしたが、現在はそうした人たちにも積極的に草刈りなどのボランティア活動に参加していただいています。

 どんな活動から始めたのでしょう。
上田 三代川の維持管理は、草刈りが第一の大きな仕事でした。カマを使って手作業で刈って水路の流れをよくしていましたが、段々と富栄養化で草が大きくなり、また、質も変わってカマでは刈れなくなりました。そのため除草剤に切り換えましたが、青々とした草が1週間もすると真っ赤に枯れてしまう様子が、自然に対して悪いことをしているようなイメージを与えたため、現在は使っていません。今年からは、防草シートで草を抑えた上、ツツジを植えようと計画しております。川の汚れは家庭排水が一番の原因です。水を流すことについて個々に考えてもらうため、皆さんに川をじっくり見てもらう機会を作ろうと、花の咲いている川を目指して頑張っているところです。

 清掃活動もされているとのこと。
上田 「大和川清流復活大作戦」の一環として、斑鳩町も三代川や大和川周辺の清掃活動を6月と11月にしていて、愛護会もそれに参加しているほか、その間の期間にも独自に清掃活動を行っております。

川遊びや洪水の思い出

 昔の大和川や三代川について伺いました。
上田 昭和20年前後までは大和川にアユもおり、小学校時分は夏休みになると毎日遊びに行きました。時には水死事故があり、遊びに行くのはいいけれど気をつけろと常に親から言われていましたが、川遊びは楽しい思い出の場所です。大和川の清流が復活し、三代川のような小さな河川もそうなるようにという思いで、愛護会の活動をしています。

 昭和57年の洪水は最前線で体験されたとのこと。
上田 7月末から8月初頭にかけて集中豪雨があり、斑鳩町に大きな被害が出た。大和川上流にもなりの降水量があり、高水位になった大和川の水が入ってこないように樋門を閉めました。これは適切でしたが、一方で三代川の水が大和川に出なくなったため、斑鳩町に降った雨水が三代川の下流域全体にたまり、水田はすべて水没して湖のようになりました。しかし、人家への水害はほとんどなく、また、時期的にまだ水稲に差し障りが出なかったことが一番の幸いでした。

 最後に、これからの活動の意気込みを伺いました。
上田 現在、大和川にはカモなどの水鳥がかなりすんでおります。餌になる川魚がだいぶ復活してきたのでしょう。三代川も中をのぞくと、びっくりするぐらいのコイがいる。3年後ぐらいには、ツツジやコイを見ながら三代川周辺を散策してもらい、斑鳩町の川の姿が段々と変わってきたなあと実感していただけるよう、頑張って活動していきたいと考えています。

 

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上田さんと

三代川愛護会の活動について伺いました。今回、最も心に残ったのは、水が出るところはみんな目にするのに、水がどこに流れていくかはあんまり知らないという言葉でした。まず川に出向いて、自分の目で確かめてほしいとのこと。百聞は一見にしかずと言います。皆さんも、ぜひ大和川に出掛けてみてください。