「蛍のおじさん」として有名に
松村さん |
松村さんの活動は、高安西地区が大阪府と八尾市から「生活排水対策実践活動モデル地区」に指定された平成3年に始まったとのこと。
松村 町会の代表をしていたため、行政のお助けとして環境を良くする活動に関わりました。炊事や洗濯をはじめとした生活排水を奇麗にする。野菜を炊いた残りの汁は別に処理して流さない。ごみをちゃんと処分する。そんなことを約2500所帯が一斉にしました。水質は、2年ぐらいで20%改善しました。
恩智川での清掃活動や魚の放流も行ったそうです。
松村 コイの稚魚を大和郡山市で買ってきて放流しました。多い時は550人ほどに参加してもらい、3回ぐらい放流したかな。それが大きくなって、今では1mぐらいの大きさのものがおります。
うちわに絵を描いてもらうコンテストも主催。これは全国的にも珍しい試みだったそうです。
松村 魚や鳥、蛍がいる恩智川の姿を、子供が想像してうちわに描きました。白い無地のうちわを1本80円で仕入れ、高安西小学校を中心に八尾市内の学校に100本ずつぐらい配り、作品を募集したのです。
自治会活動からスタートし、平成6年には任意団体「八尾の川を考える会」を設立。それと前後して、恩智川支流の郡川で蛍を育てる活動も始めました。
松村 間伐材で作った木炭を買ってきて、郡川の底に設置して水を浄化すると、蛍が飛んでくるようになりました。去年は50〜70匹ぐらい飛んでいるのが見えたな。いつの間にか「蛍のおじさん」として有名になり、一度、藤井寺市の小学校の先生が訪ねてきたこともありました。学校で蛍を養育したいとのことだったので、私がその小学校に4〜5回行ってアドバイスなどをしたんです。また、環境庁(現・環境省)の「こどもエコクラブ」で、「やおホタルキッズ」という会をこの校区に作り、約600人の子供を入会させました。人数が多すぎると言われ、仕方なく450人ほどに減らしましたが、それでも日本最大のクラブでした。
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大切なのは一人一人の意識
松村さんたちの活動は注目され、人前で成功談が発表される機会もあったようです。
松村 平成7年の「水環境フォーラム」が滋賀県で開催され、パネルディスカッションにパネリストとして参加して、私が説明しました。
平成13年にはNPO法人化し、16年には大阪府と「アドプト・リバー」の協定を締結しています。
松村 アドプトとは養子縁組のことです。私たちが川の掃除をするために養子縁組したわけです。川の掃除はあんたがやりなさい、その代わり費用は私が持ちますよ、と言われているわけです。掃除道具は府が貸してくれ、廃棄物の撤去費用も府が出してくれる。掃除は年に1度は行い、今年も3月の「大和川・石川クリーン作戦」に参加します。
絵が並びベンチがある
恩智川 |
恩智川を歩いていたら絵が並んでいて、「リバー・ギャラリーたかやすにし」と書いてありました。
松村 それはね、高安西小学校の生徒が描きました。卒業する生徒の代表が描くんです。そして、大阪府八尾土木事務所の許可をもらって並べています。
活動を始めたころと比べて、恩智川は変わったのでしょうか。
松村 ちょっと変わりましたな、良くなってきています。知識が広まって、みんなが川を大切にするという意識に目覚めたわけですね。
今は直接つながっていない大和川も奇麗になっています。大和川への思いは、どのようなものでしょう。
松村 大和川ね。範囲が広いさかいな。できるだけ生活排水を流さないようにしてもらわなあかんわね。八尾市でも大阪府でも、全員がそういう気持ちにならなあかんわな。汚さないことが大切やと言うといて、陰で捨てる人がいる。車からポーンと放る人がおるんだもの。恩智川なんか特にそう。夜なんか放ってしまったら分からへん。そういうことを一人一人に考えてもらわないと。何年かかってもよろしいから、できるだけ早い時期に意識を変えてもらわなあかん
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松村さんの話を伺って、生き物がたくさんすめる奇麗な川がどれほど魅力的かを知りました。蛍やトンボ、そして魚が気持ち良く共存できている恩智川は、とても素敵でした。いつか、蛍が飛び交う大和川も見てみたいもの。そうなった時の姿を想像をしながら、大和川を歩いてみるのもいいのではないでしょうか。 |