里親制度で桜を育てる
会の活動報告から始まった「秋篠川植樹10周年の集い」。他団体からの応援メッセージ発表や記念講演へと催しが進行する中、会場で秋篠川源流を愛し育てる会の事務局長、橋本哲夫さんにお話を伺いました。
橋本 桜の植樹は1.3kmの間に8m間隔で行ってきて、2〜3日前に156本目を植えたところです。川にかぶさるよう両岸に植えたかったのですが、道路側は交通の邪魔になるため遊歩道側にしか許可が出ませんでした。今は月1回の秋篠川清掃と桜並木の世話を主な活動としています。
桜の横には名札のようなものがあります。
橋本 最初に植えた時、桜はみんなで育てようと里親を募集し、名札には、なっていただいた家族や団体などの名前を示しています。里親には、夏場の下草刈りなどを通じて担当する木の成長を見守っていただき、年2回開催する「桜の集い」では、里親同士で交流もしていだいています。
清掃活動はどれぐらいしているのでしょう。
橋本 毎月第3土曜日の朝8時半から1時間しています。当初は2時間ぐらいしていましたが、ごみが減ったので1時間で1.3kmがほぼ奇麗になります。20人ぐらいが散るとあっという間に奇麗になり、最近は非常に小さなごみまで取っています。最初のころは、小さなごみだと思って水から引っ張り上げたら、自転車が出てきたこともありました。
桜の季節の秋篠川は、どんな様子なのでしょう。
橋本 桜はわずかな間だけ咲いて散ってしまうところが、日本人の心に通じるのかも知れません。毎年4月最初の週末を中心に、桜が満開になるころを見計らって「夜桜まつり」を行っていますが、天気やちょうど満開になってくれるか、その時期になると大変心配です。奈良公園一帯にロウソクを立てる「燈花会」で使った筒を払い下げてもらい、当日に500個ぐらいを桜並木の下に並べます。年々人が増え、今年は2千人ぐらいの方が通りました。
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地道な活動を大切に
「10周年の集い」を祝う
アフリカ民俗楽器の演奏 |
会の活動は、どのように始まったのでしょう。
橋本 同じ幼稚園に通う園児の父親たちが30年以上前にランニングクラブを作り、その練習コースである秋篠川に桜並木があったらええやろうな、とつぶやいてた12年前、奈良市制百周年でアイデア募集があり、応募したところ入選しました。そのお金で桜の植樹をしたのが始まりです。「元祖・おやじクラブ」を自称していて、長年の活動を通じ今ではメンバーのほとんどが家族ぐるみの付き合い。もう孫も同じ幼稚園を出ているのに、我々だけはまだ“卒園”していません。
この30年で秋篠川はどう変わったのでしょう。
橋本 清掃活動で奇麗になり、桜も大きくなって、憩いの場としては良くなってきたと思います。ただ、水質をどんどん良くするような取り組みは、まだできていません。地道な活動をしていれば、蛍や魚が増えるかなと思っております。地元でもご存じない方が多いのですが、今でも夏に目をこらして歩いていると、草むらの中で点滅するヘイケボタルが見えます。これを人工的に増やすことはせず、蛍のすめる環境にしていくよう、息の長い活動をしていきます。
子供たちが川で遊ぶ姿をよみがえらせたいようです。
橋本 自然の中で遊ぶ機会がないため、ヘビや虫を恐れて川に近寄らない子供が多いのですが、私たちが川遊び大会を仕掛けると、子供たちは本当に楽しそうに遊びます。そういうきっかけだけでも、作ることができればと思っております。
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桜の里親の一人、淡路美鈴さんにお話を伺いました。
淡路 家族で里親になっていて、東京の方に住む息子夫婦のところの孫の名前を取り、「遙斗(はると)さくら」と名付けて世話をしています。夏の日照りの時にペットボトルで水をやったり、草を抜いたり、毛虫を払ったりしていますが、桜にとって一番の肥料は、毎日通るたびに「遙君元気?大きくなったね、奇麗になったね」と声をかけることだと思っています。
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橋本さんと
会場の登美ヶ丘中学校にて
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11月16日に開催された「秋篠川植樹10周年の集い」を訪ねました。川や桜などの自然を通して地域の方々が交流を深めていることは素晴らしく、また、メンバーの方々が実に生き生きとしているのを感じました。里親が桜を育てるアイデアは他の地域でも生かせそうですし、秋篠川に春が来るのも待ち遠しい限りです。 |