安村さん(左から2人目)から
話を聞くキッズリポーターたち

華やかさの裏に苦労も
隋の高官を迎えた大和川
〜1400年前、裴世清が見たもの〜
2008年8月16日放送

そろそろ夏休みの宿題が気になってくるころ。そこで今回は、自由研究の参考になる展示を見ることにしました。キッズリポーターの永井ひかる(中1)さん、永井あすか(小6)さん、太宰優華(中1)さんとJR大和路線を高井田駅で下車し、大和川を眺めてから柏原市立歴史資料館まで歩きました。今、ここでは夏季企画展「裴世清(はいせいせい)の見た風景〜1400年前の大和川」が開催中です。

難波津で出迎えた「飾り船」

 展示コーナーには、裴世清がたどったルートにあわせて当時の土器や模型などが並んでいます。キッズたちは裴世清は知らないものの、遣隋使と小野妹子は習って知っているようです。詳しいお話を柏原市立歴史資料館学芸員の安村俊史さんに伺いました。
安村 小さな国々が対立していた中国に隋という大きな国が出来、進んだ政治や文化、学問などを教えてもらおうと日本から遣隋使が行きましたが、小野妹子はその隊長みたいな人でした。最初は600年に行っているようですが、日本に記録が残っているのは607年に小野妹子たちを派遣した時からで、それが帰ってくる時に裴世清が日本にやって来ました。隋の皇帝から、日本はどんな国か見てこいと命令されたからです。

太宰 どういうところを通って来たんですか。
安村 船で、まず筑紫(つくし)、今の福岡県辺りに、その後、難波津(なにわづ)に着いたという記録があります。津は港のことで、難波津は大阪の港です。そして、今の東大阪辺りに広がっていた湖を下り、付け替え以前の元の大和川を通って奈良まで入ったようです。大和川は底の浅い小さな川舟に乗り換えてさかのぼってきたようですが、小さな舟なりに色々と飾りを付け、きらびやかにしていたと思います。

 それは裴世清が乗っていたからなのでしょうか。
安村 そうですね。そのころ中国からそういう人が来ることはとんでもないことで、今のアメリカ大統領来日どころじゃなかったと思います。例えば、難波津に入る時、飾り船30艘(そう)で出迎えたと書いてあります。旗を立てたり、奇麗な布を掛けたり、たぶん船上では音楽や踊りもして迎えたのでしょう。

 裴世清は満足したのでしょうか。
安村 どうでしょう。中国には、海では飾った船、陸では飾った馬で出迎えるという正式な規定があり、それを知って日本側も行ったのですが、初めてのことでとんでもない間違いをしていたりして、裴世清は「こいつら何しとんねん」と思ったかもしれません。

「亀の瀬」が最大の問題

ひかる 一度も事故はなかったんですか。
安村 事故の記録はありませんが、奈良と大阪の境目にある「亀の瀬」は、岩がごつごつして大和川の幅も狭く、昔は滝のようになっていたという記録もあり、船では上れないため、手前で一度陸に上がり、馬か輿(こし)というかごのようなものに乗って山を越え、大和国に入ってからまた船に乗ったと思われます。それも少し不細工だっただろうなあと思います。

 前からルートなどは決めていなかったのでしょうか。
安村 4月に筑紫に着き、慌てて馬を走らせたりして都に連絡したと思います。難波津に着いてから飛鳥に入るまで2ヵ月かかっていますが、船に乗る時間は2〜3日のはずなので、どこを通らせ、どこで出迎えるかといった準備で2ヵ月近くもかかったのでしょう。その時の大きな問題の一つが、亀の瀬をどう渡すかということだったと思います。準備中、裴世清は難波津に新築した迎賓館のような所に滞在しました。大和川から上陸したのは、今も桜井市に地名が残る海柘榴市(つばいち)で、「飾り馬」75匹に迎えられ、飛鳥の小墾田宮(おはりだのみや)へと向かいました。

 小墾田宮では何をしたのでしょう。
安村 宮殿の広場に入り、隋の皇帝から預かってきたお土産を差し上げ、文書を読み上げて、お互いにうまくやっていきましょうと確認しあいました。

 ところで、企画展の展示物にキッズたちは興味津々。どうやら自由研究の題材になりそうです。
あすか 土器がいっぱいあってすごい。
ひかる ピアスみたいな感じのものがあって、誰が着けたのかなと思いました。
太宰 古い土器とかも、ちゃんと形になって残っていてすごいなあと思いました。
安村 裴世清が使ったわけではないんですけど、裴世清が来たころに使っていた土器を並べています。ピアスは当時の古墳から出てたもので、耳の位置にありました。ピアスをつけたまま死者を埋葬したんですね。

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展示室に並んだ土器

柏原市立歴史資料館を訪ね、1400年前に裴世清が大和川で見た風景について、色々とお話を伺いました。そんな昔にも海外との交流があり、影響を与えあって、今につながっています。歴史の話は知れば知るほど興味がわきます。皆さんも大和川にお出かけになり、その歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。