大和川(手前)に合流する寺川

河川愛護モニターとして見直す
思い出の大和川
〜7月は河川愛護月間〜
2008年7月12日放送

奈良県川西町。大和川と佐保川の合流地点に架かる板屋ケ瀬橋からは、自然の風景が残る穏やかな大和川が見えます。ここから1km半ほど下流では、川西町の中央部を流れる寺川も合流しています。ところで、7月は河川愛護月間。国土交通省では、これにちなんだ色々な取り組みをしていて、その一つに河川愛護モニター制度があります。今回は、昨年7月から大和川でモニターを務める片山侑吉さんを訪ねました。

おいしかった大和川のウナギ

 生まれも育ちも川西町の片山さんは、川にたくさんの思い出がありそうです。
片山 子供の時、よく遊びました。主に住まいに近い寺川、時々は大和川で。今と違って他に遊ぶことがありませんし、学校にプールもありませんから。一番泳いだのは小中学校時代の夏休みで、まだ寒い春は魚釣り、秋にはシジミ取りをしました。モニターには、汚れている大和川の役に立てればと思ってなりました。

 遊んでいたころ、大和川は奇麗だったのでしょうか。
片山 見た目では分かりませんが、水の臭さがありませんでした。今は水に入ると皮膚にあくのようなものが付きますが、当時はあまり付かなかった。魚は、フナ、シロエビ、モロコ、腹の方が赤いアカモチ、砂に入り込むカジリなどの小さいものがたくさんいました。今はコイぐらいしかいません。また、魚ににおいがなかった。今は油のにおいがありますね。

 取った魚は食べたのでしょうか。
片山 食べるのが目的で取ったのではありませんが、取ったら持って帰って食べました。おいしくて、特にウナギを焼いて食べた味は、今でも記憶にあります。ドジョウや大きなミミズを餌に千本針を夜に仕掛けておくと、朝、ウナギが4〜5匹は取れていました。

 川の汚れを感じたのは、いつごろからでしょう。
片山 昭和35〜36年あたりからですかね。釣った魚ににおいがして食べられなくなった。それから、確かに川全体が変わってきましたね。ひどい時は、工場排水で泡がぶくぶく立っていました。

子供のころからの意識が大切

 河川愛護モニターは、どんなことをするのでしょう。
片山 川に異常がないか見て、月に2回報告します。誰かが砂を取っている、大きなごみを捨てている、魚が死んでいる、堤防で物を燃やしている等です。ただ、私の区域は自動車が多く、いい意味で監視されていますから、そういうことはできません。また、稲作の時期だけ吉野川から水を頂いているので、水が枯れることも酸素欠乏になることもほとんどなくなりました。ところが、家庭ごみがほかしてあったり、コンビニ等で買った物の食べかすを自動車の窓からほかしているのでは、ということが時々あります。

 

 子供のころに遊んだ川をモニターとして再び見る立場になり、まず感じたことは何でしょう。
片山 ビニールやプラスチック系のごみの多さにはびっくりしました。生き物が減っているのは、川の汚れと農薬の関係でしょう。弱いエビやモロコ、餌のカワドジョウがいなくなったウナギが減りました。それから、取ったウナギを料理する時、以前は胃の中にヒルがいましたが、それももうほとんど見ません。

 鳥には、変化が感じられるのでしょうか。
片山 サギ類のような大きな鳥は子供のころにいなかったのですが、最近はたくさんいます。そのかわり、奇麗な水を好む小さいカワセミが全然いません。大げさかも知れませんが、生態系は完全に変化しています。

 水の量については、どうなのでしょう。
片山 吉野川分水のお陰で、大和川は夏場でも枯れることがなくなった。稲作には非常に結構なことです。大和平野(大和盆地)は干ばつが多くて稲作が大変だったので、江戸時代はもちろん、明治中期あたりまで綿を栽培していました。川西町にも、綿問屋という株仲間が江戸時代にはありました。

 最後に、大和川をもっと奇麗にするためは、どうしたらいいかを伺いました。
片山 昭和初期、少なくとも戦前ぐらいの状態に戻したい。そのためには、みんなの意識を高めてもらい根気よくやることです。もう一つは、小学生に意識を持ってもらうため、奉仕活動としてごみ拾い等をしてもらうこと。小さい時に持った意識はなかなかなくならないし、遠いように見えて一番手っ取り早い道かなと思います。大人になると、そう簡単に意識は変わりません。あとは、下水の完備です。奇麗になり、アユが遡上(そじょう)してくれたらありがたい。

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お話を伺った片山さん

片山さんは川のことだけでなく、川西町周辺の歴史についても詳しく、色々なお話を聞かせてくれました。片山さんの他にも、大和川のいろんな場所で、日々、さまざまな変化を感じながら川を見守り続けてくれる河川愛護モニターの方がいます。私たちにとって、とても貴重な存在であることを実感しました。